仮想通貨の取引は「投資」か「投機」どちらなのか?

仮想通貨取引は投資か投機どちらなのか

老後2000万円問題や人生100年時代と言われ、資産形成についての関心が一般の方々の中でも高まっています。2017年の後半に価格が急上昇し、一気に世間に浸透した仮想通貨(暗号資産)ですが、果たして投資と呼べるのでしょうか?

株式などの取引を日常的に行なっている方々なら必ず聞いたことのある、「投資」と「投機」という言葉。まずはその違いについて説明しながら、仮想通貨はどちらに分類されるのか、筆者なりの考えを書いていきたいと思います。

目次

投資と投機の違い

投資:成長を見越して長期的に資産にお金を投じること
投機:タイミングを狙て短期的に資金を投入すること

「投資」は数年から数十年のスパンで緩やかな値上がりや会社の成長を見越した「価値のあるモノ=資産」にお金を投じる行為となります。仮想通貨の場合はさらなる普及や発展に期待するということになります。

それに対して「投機」は、数日から数週間、長くても数カ月の単位で、短期的な値上がりのタイミングを狙って資金を投入することを言います。また、買いだけでなく空売りを行い値下がりによる利益を得ることも特徴です。一般的にはギャンブル的要素が高いことに加え、リスクが高く、価値の低い商品であっても、その値動きを追うことで利益を狙った行為が「投機」と呼ばれ、手堅く、リスクが低いモノが「投資」という認識ではないでしょうか。

似ているようでかなり異なる「投資」と「投機」ですが、筆者は、資産価値、成長見込みがあるモノに資金を投じる行為が投資。価値があってもなくても、利ザヤを取りにいく行為が投機だと考えています。

では、仮想通貨はどちらに分類されるのでしょうか?

価格変動幅の大きさについて

仮想通貨を詳しく知らない人々でも、2017年〜2018年の価格の急上昇、いわゆる仮想通貨バブルというものについては聞いたことがあるのではないでしょうか。

2017年の初めにはビットコインの値段は約10万円でしたが、年末には約230万円まで上昇し、価格が23倍になるという凄まじい上昇を見せました。しかし、その後は価格が安定することはなく、2018年の12月にかけて、30万円台までの下落となりました。2020年に入ってからは、年初から70万円台から110万円まで上昇した後に、コロナショックにより40万円台まで急落。
コロナショック後は下落から急反発した株式とともに大きく価格を上昇させ、現在では300万円付近での値動きとなっています。

▼ビットコイン(BTC/JPY)月足チャート

ビットコイン月足チャート

1日で価格変動が10%以上動くということも1カ月の間に時折ありますし、年単位で見ると、半値になったかと思えば、2カ月後には元に戻るといったまさにジェットコースターのような値動きをしていると言えます。また、リップルやエイダはビットコインの比ではなく、ピーク時には100倍から600倍程度に上昇しました。

株価の急騰と急落のあったITバブルを振り返ると、ソフトバンクや光通信などのIT銘柄とされた株式は、約1年で20~50倍以上に急騰。その後、数年間で急落し元の価格に戻ってしまいました。

▼ソフトバンクグループの月足チャート

ソフトバンク月足チャート

出所:株探

これらをみると、やはり仮想通貨の価格変動率の高さは突出しているといえるでしょう。

しかしITバブルなどの値動きを見たうえで考えてみると、同じ商品でも、投資にも投機にもなり得る、とも言えそうです。割安な株式を見つけることは投資でも、割高でも目先の価格の上昇を追いかける行為は、同じ株式銘柄でも投機ではないでしょうか。

さて、仮想通貨は値動きだけで見た場合、全くと言っていいほど「投資」的な資産であるとは言えないでしょう。どちらかと言えばかなり「投機」的なものであると言えます。

仮想通貨の技術によるメリットと問題点について

メリット:インフレ時の影響減
問題点:価格変動率が大きい

メリット:インフレ対策にもなる

仮想通貨が注目を集めた理由として、ブロックチェーンという技術により、取引の信頼性が担保され、これまでは国家や法律によって信頼性が担保されていたモノが大きく変わっていく可能性が見えたということでした。それに加えて、国際間で大きな金額の送金もすぐに可能ですし、法定通貨で急激なインフレーションが発生してしまった場合にもビットコインで資産を持っていれば影響を軽減できます。

大きな国家であっても、通貨価値が急落してしまう可能性は十分あります。例えば、アベノミクスにより日本円の価値は対ドルで半減、英国のEU離脱を決める投票が行われた年には、英ポンドは60%以上も下落しました。それに対してビットコインは、発行枚数が制限されているため、希少性は担保されています。

※2022年12月時点においてイーサリアムの発行上限は決まっていません。

これらが仮想通貨のメリットになりますが、問題点も多数挙げられます。

問題点1:技術の進歩によって仮想通貨が必要なくなる懸念

第1に、今後の技術の進歩によって仮想通貨が必要無くなってしまう可能性もあるということです。フェイスブックが主導してつくっている「リブラ」は米ドルや円などの複数の法定通貨によって価値が裏付けられる予定となっています。そのため、需給によって価格が決定される他の仮想通貨と比べると、価格がかなり安定する仕組みが採用されています。

また「量子コンピューター」出現の問題もあります。量子コンピューターは、最先端のスーパーコンピューターで約1万年かかる計算を3分20秒で解いてしまいました。仮想通貨は暗号通貨とも呼ばれており、複雑な暗号技術によって成り立っています。ですが、この量子コンピューターを使えば一瞬で承認作業(マイニング)やウォレットのハッキングが簡単にできるようになってしまいます。

もちろん、そうなった場合は仮想通貨ではなく、全てのネットワークに接続されている資産が危険に晒されるわけですが、これから先に技術が進歩していった場合、仮想通貨の価値は保たれるかと言われると疑問も浮かぶところです。

問題点2:価格変動率が大きい点

第2に、やはり価格変動率の大きさです。1日で価格が約10万円以上動くということもあるため、今のところ決済手段として安定的に使うことは難しいでしょう。安定した資産の保有目的としても金や銀などの方が価格は安定しています。

とはいえ、ビットコインの年間の変動率は徐々に収まってきており、2018年は600%程度だったものの、2019年には3.5倍程度になっています。今後、数年間で年間の変動率が50%以下になると、決済手段としての有効性も高まるのではないでしょうか。

いまは仮想通貨は投資というよりも投機

仮想通貨は投資というよりも投機

結論として、筆者は仮想通貨を投資的な視点で取引するべきではないと思います。上記で述べたとおり、ビットコインなどの主要な仮想通貨はともかくとして、誕生から間もないアルトコインなどはいつ価値がなくなってしまってもおかしくない可能性があります。そのため、資産の多くを仮想通貨に変えてしまうのはオススメできません。

しかし、価格変動率が高いことは投機的な視点で見た場合、大きな利益を生む可能性もあると言えるため、レバレッジをかけて短期での取引をしたり、現物で保有し数カ月単位で保有するという取引にはかなり向いていると言えるでしょう。数カ月単位というのは、2018年以降のビットコインの上昇トレンドは長くて半年程度だからです。

仮想通貨の未来に期待し、長期的な投資を考えている方でも、資産の10%程度を目安にするのが良いのではないでしょうか。

※本記事の意見や予測は、筆者の個人的な見解であり、金融商品の売買を推奨するものではありません。

投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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