●個別銘柄

 小売り大手のWal-Mart(WMT)は年末商戦に備えて自社サイトを一新したほか、オンラインで購入した食料品の受け取り場所を1000ヵ所増やすことと、総額200億ドルの自社株買いを実施することを発表しました。年末商戦を前にWal-Mart対Amazon(AMZN)の対決の様相がみられ、Wal-Martは33億ドルで買収したJet.comの活用や新店舗方針で対抗姿勢を見せています。小売業界全体としては、両社の攻防も売り上げの伸びにはつながらず、むしろ両社と同じ水準では競争に加われない小規模企業からのシェアの奪い合いになる可能性が懸念されます。

 General Electric(GE)のJohn Flannery新CEO(前CEOはJeff Immelt氏)はビジネスモデルの転換を目指しており、幹部数人を入れ替えました。第3四半期の利益は予想を下回り、利益見通しを下方修正したことに加え、総額200億ドルの資産を売却し、10億ドルのコスト削減を行う意向を明らかにしました。株価は年初来で24.6%下落しています。

 医薬品メーカーのPfizer(PFE)は、2017年11月にコンシューマー・ヘルスケア事業を売りに出す意向を明らかにし、売却額は150億ドル程度になると推定されます。

 銀行大手のCitigroup(C)は、2008年の金融危機に遡る旧Lehman Brothersの資産17億ドルを同社の管財人に返済しました。自動車メーカーのFord(F)のCEOは、総額160億ドルのコスト削減を実施し、今後はトラック、SUV、電気自動車に注力する計画を明らかにしました。ストリーミング配信企業のNetflix(NFLX)は、視聴料を値上げし、複数のプロジェクトの財源として総額16億ドルの社債を発行することを発表しました。

 通信大手Verizon(VZ)傘下のYahooは、2013年の情報流出で、2016年に発表した10億人ではなく、30億人に上る全ユーザーが被害を受けていたことを明らかにしました。

 宅配サービスを手掛けるUPS(UPS)は、年内に宅配料を4.9%値上げすると発表しました。同業のFedEx(FDX)も先月値上げを発表しました。保険会社のAnthem(ANTM)は、2020年に薬剤給付管理部門(IngenioRx)を設立し、Express Scripts Holdings(ESRX)との関係を解消する意向を明らかにしました。

 通信大手のAT&T(T)は、DIRECTVの契約者数が減少しており、有線通信契約からケーブル契約への「無線化」の流れが続いていることを明らかにしました。同社の株価は10月に14.1%下落し、年初来では20.9%の下落となっています。メキシコ料理チェーンのChipotle Mexican Grill(CMG)は、利益が予想を下回り、株価は10月に11.7%下落しました。年初来では27.9%の下落となっています。ヘルスケアサービスを提供するAcadia Healthcare(ACHC)は、利益が予想を下回ったことを受けて株価は10月に34.3%下落し、年初来の上昇分が帳消しになりました(年初来で5.3%の下落)。

●IPO市場

 データセンターサービスを提供するSwitch(SWCH)は、14~16ドルというIPO価格の予想レンジに対して17ドルで上場しました。一時24.90ドルまで上昇しましたが、IPO価格から12.5%高の19.13ドルで10月を終えました(最安値は18.51ドル)。

 IPO銘柄は10月に大きく変動しました。ストリーミングサービスを提供するRoku(ROKU)は、9月にIPO価格14ドルで上場した後、9月最終週には一時29.80ドルまで上昇しましたが、10月は23.2%安の20.38ドルで月の取引を終えました。6月にIPO価格10ドルで上場した(予想レンジの15~17ドルを下回る)食品配送サービスのBlue Apron(APRN)は、約5000人の従業員のうち300人を削減すると発表し、4.77ドルで10月を終えました。月間の下落率は12.5%、IPO価格からは52.3%下落しています。

●その他

 全米小売業協会(NRF)は、今年の年末商戦の小売売上高は前年比3.6~4%増加し(過去5年間の平均は同3.5%増)、同期間中に小売企業各社が雇用する臨時従業員数は前年の57万5000人から減少して50万~55万人になるとの見通しを示しました。

 著名投資家のジョージ・ソロス氏(87歳)は、180億ドルの資産を自身が主催する慈善団体のOpen Society Foundationに移管しました。

 ビットコインは6400ドルを上回り、年初来で500%以上上昇しています。間近に迫る分裂(「ハードフォーク」と呼ばれています)に伴い、新しいコインが誕生する予定です。

 米国の2017会計年度(2016年10月~2017年9月)の財政収支は6660億ドルの赤字(過去6番目の赤字幅)となりました。歳入が3兆3000億ドル、歳出は4兆ドルでした。米国の9月の貯蓄率は3.1%となり、8月の3.6%から低下して10年ぶりの低水準に落ち込みました(2015年は6.3%)。

●利回り、金利、コモディティ

 ECBが量的緩和の縮小(および期間の延長)を決め、米国では12月(12-13日にFOMC開催)の利上げが示唆され、ウォール街(特に為替トレーダー)がトランプ大統領による次期FRB議長の指名を見守る中、米国の金利は10月に上昇しました。米国10年国債の10月末の利回りは2.38%となり、前月末の2.34%から上昇しました。月中には、一時2016年末の2.45%をわずかに上回る場面もありました。米国30年国債の10月末の利回りは2.87%と、前月末の2.86%から上昇しました(2016年末は3.07%)。

 外国為替市場では、ユーロは9月末の1ユーロ=1.1814ドルから1.1651ドルに下落し(同1.0520ドル)、英ポンドは9月末の1ポンド=1.3399ドルから1.3285ドルに下落しました(同1.2345ドル)。円は9月末の1ドル=112.50円から113.70円に下落し(同117.00円)、人民元は9月末の1ドル=6.6366元から6.6355元に上昇しました(同6.9448元)。

 金価格は1トロイオンス1271.80ドルで取引を終え、9月末の1282.50ドルから下落しました(同1152.00ドル)。原油価格はボックス圏で推移しましたが、9月末の1バレル=51.64ドルから54.44ドル(過去1年間の取引レンジは43ドル~58ドル)に上昇して10月を終えました(2016年末は53.89ドル)。米国のガソリン価格(全等級)は、10月末は1ガロン=2.602ドルと、9月末の2.701ドルから下落しました(同2.419 ドル)。

 VIX恐怖指数は月中の最高は13.20、最低は9.11となり、最終的に9月末の9.51から10.15に上昇して月を終えました(同14.04、2016年11月8日の米大統領選直前は23)。

●配当

 10月に支払われた配当総額(落ち日ベース)は前年同月比で10.33%増加し、1-10月累計では前年同期比7.42%増となっています。10月の平均増配率は11.01%で、9月の8.78%から上昇しました。なお、8月は銀行が牽引して13.78%、7月は16.62%でした。1-10月累計の平均増配率は11.64%となり、1-9月累計の11.73%から低下しました(1-8月累計は11.89%)。今年の残り2ヵ月を考えると、2017年の配当総額は2016年を上回って過去最高を更新する見通しで、前年比伸び率も2016年の5.44%増から加速しており、2017年は7%を上回る伸びが見込まれます。

 現時点において、ワシントンの話題の中心は所得税制改革と利益還流であり(同時または個別)、2017年全体(または一部)に遡及的効果をもたらす可能性もありますが、2017年の配当総額に大きな影響が及ぶことはないと思われます。

※「下げ知らずのトランプ大統領、就任後に世界市場は20%上昇 (5) 」へ続く。

株探ニュース