カナダの暗号資産取引所QuadrigaCXで、創設者Gerald Cotten氏の失踪とともに顧客資産約1億9千万米ドルが消失した問題で、同氏による顧客資産の不正利用ずさんな運営体制が指定監査機関の調査から明らかになりました。

カナダ最高裁から任命されたErnst & Youngが今月19日に発表した第5回目の調査報告書では、QuadrigaCXの不正な顧客資産管理および運営体制の存在を認める決定的な証拠が浮き彫りとなりました。

報告によれば、QuadrigaCXはあるべき企業構造が一切存在せず、実質Cotten氏ひとりによる運営がほとんどであったといいます。会計記録も全くなく、企業と顧客の資産は一括で管理されていたといいます。

Cotten氏は、多量の偽アカウント上で法定通貨や暗号資産を偽造し、顧客と取引させ、収益統計なども捏造した上で、得た実在資産をQuadrigaCXから外に流し出していたといいます。

法定通貨の多くがQuadrigaCXからCotten氏自身と「寡婦」のJennifer Robertson氏へと送金されていたことも明らかとなり、両氏の不動産物件やプライベートジェット、ヨット、高級車、貴金属などが顧客への資産返還のために差し押さえられました。

さらに、Cotten氏は顧客の暗号資産を担保に別の取引所で証拠金取引を行い、その多くを損失したこともわかっています。また、その資産の一部は現在未特定のウォレットへも送金されていたといいます。

差し押さえられたCotten氏・Robertson氏の資産と、調査の上で回復された顧客資産を合わせても、顧客への償還額は未だ1億3千万米ドルほど残っているとされています。

QuadrigaCX事件のこれまで

Gerald Cotten氏

事の発端は今年1月、QuadrigaCXが「Cotten氏がインドで孤児院設立活動中に持病で死去した」とする声明を発表したことから始まりました。

同社は2月に入り、1億5千万ドル相当の顧客資産が保管されたコールドウォレットのパスワードを知るスタッフはCotten氏自身のみであるとし、その資産が事実上引き出し不可となったと発表しました。

多額の顧客資産を取り扱う取引所では複数名の合意の上で資産移動が行える「マルチシグ技術」を採用したウォレットを利用するのが標準的な中、Cotten氏のみがパスワードを握るQuadrigaCX運営体制に不可解さが募りました。

さらに、「決済プロバイダ側の問題」を理由に約4000万ドル相当の法定通貨も返還不可状態にあるとされ、世間では持ち逃げ詐欺を疑う声が多数挙がりました。

その後案の定、問題のコールドウォレット6つのうち5つが昨年4月から空のままであったことが、カナダ最高裁から指定監査機関に任命されたErnst & Young社が3月に発表した調査から明らかになりました。

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