S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●3月中・下旬が試金石に

 調整局面から市場は冷静さを取り戻したようです。買いも入り、下げ幅も限定的となりました。とはいえ、取引時間中に最高値と最安値の差が4%開いたことが4回あり、これは5年ぶりのことです(2008年には49回)。市場は反発を見せて値下がり分の約半分を取り戻しました(1月26日の最高値から2月8日にかけての下落率は10.16%でしたが、現在は5.54%まで縮小)。ファンドマネージャーが以前のポジションを再構築するよりも、ポジションの調整に動いているため、マッチドトレーディング的な動きからレンジ相場入りしたようです。膠着状態がこのまま続くようであれば、この水準でのレンジ固めとなる可能性もあります。

 良好な業績見通し(企業が引き上げ、それにアナリストが追随しており、2018年の営業利益の予想は年初来で7.1%増、米国の一般会計原則(GAAP)に基づく公表利益は6.2%増)にとっての最初の試金石は、3月中旬から下旬にかけて決算期のずれる企業の業績発表期間に到来し、その頃には法人税減税の影響を算出することも可能となるでしょう。手取りの給与増額が消費行動にもたらす効果を定量的に把握するには、5月の小売セクターの決算発表を待つ必要があり(源泉課税の変更は2月15日から実施)、業績内容を注視していくつもりです。一方、月間の小売売上高(2月分は3月14日に公表)は示唆に富む指標となるでしょう。とはいえ、こうした指標を福音として捉えない方が良いと考えています(誰からも、このようなことは望まれていません)。

●2月のまとめ

○2月のS&P500指数は2713.83で取引を終え、1月末の2823.81から3.89%下落し(配当込みのトータルリターンはマイナス3.69%)、2016年1月(5.07%の下落)以来最低のパフォーマンスを記録しました(2月の値上がり銘柄数は88、値下がり銘柄数は417)。上昇率は、2018年1月が5.62%(配当込みのトータルリターンは5.73%)、年初来が1.50%(同1.833%)、過去3ヵ月が2.50%(同2.96%)、過去1年が14.82%(同17.10%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2139.56)からは26.84%(同30.24%)となっています。

 S&P500指数は2月中に最高値を更新することはありませんでしたが、年初来では終値での最高値を14回更新しました(直近の高値更新は2018年1月26日で2872.87)。最高値の更新は2017年に62回あり(1995年の77回に次ぐ過去2番目の更新回数)、大統領選挙以降で84回となりました。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均は2万5029.20ドルで取引を終え、1月の2万6149.39ドルから4.28%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス3.96%)。2017年12月末の2万4719.22ドルからは1.25%の上昇となりました(同1.69%)。ダウ・ジョーンズ工業株価平均も2月中に最高値を更新することはありませんでした(年初来では終値で最高値を11回更新しました。直近の高値更新は2018年1月26日で2万6616.71ドル)。最高値の更新は2017年に71回と過去最高を記録し(1896年以降。1995年は69回)、大統領選以降で99回となっています。

○S&P500指数の時価総額は2月に9360億ドル減少し、世界の株式市場の時価総額は2兆4760億ドル減少しました(このうち1兆1420億ドルが米国市場の減少分)。S&P500指数の時価総額は2016年11月8日の大統領選以降では4兆6860億ドル増加し、世界の株式市場の時価総額は11兆3050億ドル増加しました(このうち5兆5220億ドルは米国市場の増加分)。

○原油価格は1月末の1バレル=64.85ドル(2017年12月末は60.09ドル、2016年12月末は53.89ドル)から5.1%下落して61.53ドルで取引を終えました。

○米国10年国債の利回りは2.86%と、1月末の2.72%から上昇して月を終えました(同2.41%、同2.45%)。

○金価格は1月末の1トロイオンス=1348.70ドルから2.2%下落して1318.90ドルで取引を終えました(同1305.00ドル、同1152.00ドル)。

○英ポンドは1月末の1ポンド=1.4191ドルから1.3769ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは1月末の1ユーロ=1.2412ドルから1.2202ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は1月末の1ドル=109.20円から106.71円に上昇しました(同112.68円、同117.00円)。

○VIX恐怖指数は1月末の13.54から19.85に上昇して月を終えました(同11.04、同14.04)。月中の最高は50.30、最低は12.50でした。

○ビットコインは1月末の1万0058ドルから上昇して1万0670ドルで取引を終えました(同1万3850ドル、同968ドル)。月中の最高値は1万1802ドル、最安値は5968ドルでした。

○ボトムアップベースで算出したS&P500指数の1年後の目標値は3006(現在から10.8%上昇)、またダウ・ジョーンズ工業株価平均は2万7611ドル同10.3%)となっています。

※「レンジ相場入り、下値は限定的か (2)」へ続く。

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