暗号資産(仮想通貨)を担保に法定通貨を貸し出すサービスを提供するBlock Fiという企業は、19年10月に発表したレポートの中で、投資信託の資金のうち少なくとも30~50億ドルが仮想通貨になっている可能性を指摘した。

レポートによれば、Block Fiの顧客である10億ドル以上を保有する伝統的なヘッジファンド運用会社18社の運用資産残高の合計は2,860億ドルとなる。これらのうち1%が暗号資産に投資されているとすれば、ヘッジファンドの運用資金のうち25億ドルほどがすでに暗号資産に投資されていることになる。これに加えて、暗号資産だけの(暗号資産の名前がついている)投資信託の運用資産残高はおよそ25億ドルであり、これらを合わせると、少なく見積もっても30~50億ドルの投資信託の資金が暗号資産になっている可能性があるとレポートは指摘する。

確認できたところでは、海外に存在する暗号資産の投資信託のうち、ビットコイン(BTC)価格のみに連動する投資信託の運用資産は少なくとも22億ドルほどに上る(ビットコインの時価総額は足元で約1,420億ドル)。このうち、2013年9月に登場したGrayscale よるオープンエンド型のビットコイン投資信託「GBTC」の運用資産残高はおよそ21億ドルと最大である。同商品は20年1月に暗号資産関連商品として初めてSECに登録された。

Grayscaleはビットコイン以外にもイーサリアム(ETH)やリップル(XRP)などの単体の暗号資産の価格に連動する投資信託を販売しているが、20年第1四半期(1-3月)の資金流入は5.3億ドルで過去最高となったと報告した。このうち88%が機関投資家の資金だとしている。特にビットコイン投資信託「GBTC」は3.9億ドルで、それ以前のピークであった19年第3四半期の2.5億ドルを大きく上回って過去最高となった。同期間には新型コロナの影響がまだ大きくなかった1月~2月の数字も含まれているものの、機関投資家の関心は継続して高かったようである。

ビットコインのETF(上場投資信託)がSECに承認されるかどうかという話題が注目されがちだが、暗号資産の投資信託が増加した場合にも市場活性化につながる可能性がある。国内では19年9月に金融庁が暗号資産の投資信託について「適切ではない」としているものの、すでにビットコイン投資信託が販売されているアメリカやカナダ、シンガポール、香港などの今後の動向が注目される。

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