ブロックチェーン技術の活用事例が相次いでいます。2018年12月、三井住友信託銀行は、不動産事業にブロックチェーン技術を活用する実証実験をはじめました。
この記事では、その実証実験の仕組みや利点、課題について解説します。

三井住友信託銀行がはじめたブロックチェーン活用の実証実験。その仕組みとは?

三井住友信託銀行について

三井住友信託銀行は、住友信託銀行と中央三井トラスト・ホールディングスの経営統合の結果、2012年に発足した銀行です。『三井住友』の名前が冠されてはいますが、三井住友フィナンシャルグループに属する三井住友銀行とは、経営や業務面において深い交わりがありません。三井住友信託銀行は、三井住友トラスト・ホールディングスグループに属する銀行で、銀行の業績ランキングなどでも三井住友銀行とは別のグループとしてカウントされています。

2018年の銀行業総資産ランキングでは、三井住友フィナンシャルグループに次いで5位。売上高や資本合計でもほぼ同じ位置にランクしており、日本におけるメガバンクのひとつと言えるでしょう。信託業務においては国内の銀行業で1位の業績を持っています。

三井住友信託銀行がはじめた実証実験の概要

その三井住友信託銀行が、ブロックチェーン技術を不動産事業に活用する実証実験をはじめました。これは、三井住友信託銀行が持つ不動産ビジネスの知見を活かしたもので、都市部のオフィスビルを中心とした物件の賃料や管理コスト、入退居者情報、空室率などの記録と売買履歴を、ブロックチェーンによって確認できるようにする取り組みです。

 

2018年の不動産業界では、「スルガ銀行」や「TATERU」の問題(詳しくは後述)が世間を騒がせたこともあり、関連事業における透明性は業界全体の課題でした。分散管理システムであるブロックチェーンには、情報をシステム上に公開することで健全性を保とうとする特長があります。この特長によって、不動産における情報管理に透明性を与えようとしたのが今回の実証実験です。

さらにブロックチェーンは情報改ざんに強い特長も持っています。2018年にさまざまな問題を抱えた不動産業界にとって、まさに願ったり叶ったりの技術がブロックチェーンだったと言えるでしょう。三井住友信託銀行は、『不動産取引における情報の透明性を維持・確保し、取引しやすい環境を実現する「信託ならでは」の不動産取引環境整備を目指し、市場の発展に寄与する』ことが狙いにあると発表しました。

『スルガ銀行』『TATERU』の問題について

スルガ銀行の不正融資問題

シェアハウスを展開するスマートデイズとスルガ銀行が結託し、投資家などに不正な融資をおこなっていたとされる問題。
スマートデイズは、サブリース型の契約形態(入居状況にかかわらず賃料を保証する契約)で個人投資家などに不動産投資を煽り、資産不足の投資家にはスルガ銀行で融資を受けることを斡旋していました。やがてサブリース物件への入居率が低迷すると、本来の契約に基づいた賃料が物件オーナー(上述の個人投資家)に支払われず、安定的な家賃収入を当てにしていた物件オーナーはスルガ銀行への返済が滞りはじめます。最終的にスマートデイズは事業破綻。多くの個人投資家に負債が残る結果となりました。融資の過程でスマートデイズが個人投資家の貯蓄や所得を水増ししていたことが発覚。スマートデイズのメーンバンクがスルガ銀行だったこともあり、両者で結託があった可能性が指摘されています。

TATERUの資料改ざん問題

TATERUは不動産に特化したプラットフォームの開発・運用やデザインアパートの企画・運用をおこなっている企業です。2018年8月、顧客の預金通帳の改ざんが指摘され、同日付でTATERU側も認めるリリースを出しました。報告書によると、改ざんをおこなっていたのは、営業部長や部長代理を中心とした31名。資料の改ざんは2010年ごろにはじまったと言われています。

不動産事業におけるブロックチェーン活用の利点

不動産事業にブロックチェーンを活用する最大の利点は、先にも述べたように、透明性が担保されることでしょう。スルガ銀行やTATERUの問題をみても、不透明であるがゆえ起こってしまった側面は拭いきれません。信託業務でトップを走る三井住友信託銀行にとって、不動産投資がグレーなものであるという印象は業績にも大きくかかわってくるでしょう。多くの投資家が安心して投資できる不動産業界になることが、三井住友信託銀行の生命線でもあります。

また、わたしたちにとってみれば、安心して不動産投資ができる世の中に一歩近づいたと捉えることもできます。投資は市場が活性化すればするほど、プラスにはたらきやすいもの。多くの人が当たり前に不動産投資をする社会になれば、より魅力的なサービスが出てくることも考えられます。現在はまだ実証実験ですが、今後実用化に至れば、不動産投資がわたしたちにとってより身近なものとなっていくかもしれません。

不動産事業におけるブロックチェーン活用の課題

まだ実証実験の段階であり、実用化はまだ先になるという点が課題としてまず挙げられます。実用化までにはまだ時間が必要でしょう。しかし、2018年、不動産業界の不透明性が明るみに出たことで、業界への信頼は陰りを見せています。この状況を解決する手段として計算できるレベルにはまだ進んでいないというのが実際のところでしょう。

また、今回の三井住友信託銀行がすべての不動産を管理できるわけではありません。三井住友信託銀行が管理する物件については透明性が担保されるようになりますが、それ以外の物件についてはいまと同じ状況が続きます。ブロックチェーンによる不動産事業の管理が当たり前にならなければ、グレーなものを根絶することはできません。自己申告ではなく制度化されなければ、根本的な解決にはならないと考えることもできるでしょう。

不透明性がフォーカスされているいま、ブロックチェーンによる不動産事業管理の実用化が待たれます。

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