ブロックチェーンの特徴と言えば、多くの方は、ブロックチェーンの持つ透明性や情報改ざんに対する耐性を思い浮かべるでしょう。

「仮想通貨の技術」というイメージが広く浸透しているブロックチェーンですが、このような特性を活かし、世の中にはたくさんのブロックチェーン活用サービスが誕生しています。なかでも親和性が高いと注目されているのが、今回紹介する『投票』の分野。この記事では、『ブロックチェーン×投票』にフォーカスし、VOTE FORという投票プラットフォームの取り組みと、実験がおこなわれている事例の紹介、メリット、課題について解説します。

ブロックチェーン×選挙。VOTE FORの取り組みとは?

株式会社VOTE FORは、ブロックチェーン活用の投票プラットフォーム『VOTE FOR』を運用する日本の企業です。『政治とITは、もっと仲良くなれる』をスローガンに、政治・選挙を身近に感じ、誰もが主体的に参画できる環境を目指してきました。

2019年4月現在、VOTE FORでは、誰でも基本利用料無料でブロックチェーン活用の投票システムを利用できます。ユーザーが自由に投票プロジェクトを作成し、投票することが可能。VOTE FORは、『ブロックチェーン×投票』をわかりやすく体現するプラットフォームだと言えるでしょう。

政党内選挙やマンション・学校での投票、パーソナルな多数決の場面など、社会においてわたしたちが『投票』という仕組みに触れる機会は少なくありません。近い将来、ネット投票が当たり前になる世の中において、貴重な体験を提供するプラットフォームがVOTE FORなのです。

VOTE FORと協力し、日本初のブロックチェーン選挙を実験。つくば市の事例

ブロックチェーン活用の選挙は、実用化へ向けて大きく動き出しています。

2018年8月、茨城県つくば市では、ブロックチェーン選挙の実証実験がおこなわれました。これは市のプロジェクトである「平成30年度つくば Society 5.0 社会実装トライアル支援事業」のコンテスト最終審査において、VOTE FORが提供するブロックチェーン投票システムが試験的に運用されたもの。有権者情報とマイナンバーカードを紐づけ、コンテストの投票がおこなわれました。

タブレット端末に表示された投票先選択画面

投票の流れはこうです。

  1. 投票所に設置されたカードリーダーにマイナンバーカードをセット
  2. 認証画面に進み、電子証明書の署名用パスワードを入力して本人確認を行う
  3. 投票画面に進み、事業提案を選択して投票(一人一票、1回のみ投票)

VOTE FORは、この実証実験について、2つの狙いがあったと話しています。マイナンバーカードを用いた本人認証によって投票の正当性を担保できること、ブロックチェーンによる秘密投票と非改ざん性によって投票における最重要事項が守られることです。実際にこの投票ではシステム管理者でも投票者情報と投票内容を紐付けられませんでした。

もともとつくば市は、学園・研究都市として日本中に知られています。このブロックチェーン投票の実証実験は、先端技術の社会実装へ向けた価値ある取り組みとなりました。

ブロックチェーン活用の投票システム。そのメリットは?

古くから選挙においては、多くの不正がおこなわれてきました。選挙において選挙管理委員が置かれることからは、その負の歴史の一端を垣間見ることもできます。これまでにも書いたとおり、ブロックチェーンには透明性や非改ざん性があります。これら2つの要素は選挙と相性がよく、ブロックチェーン活用の投票システムのメリットだと考えられるでしょう。

ブロックチェーンによる選挙が一般的になれば、選挙管理委員の必要性も低くなると考えられます。選挙管理委員の人選については、天下りの温床になっているとの指摘もあり、「必要な人数を必要なだけ」という人選が進めば、より金銭的にも透明性のある選挙が実現できることになります。

さらに通常の選挙には、開票作業のためのリソースも必要です。ブロックチェーンによる選挙では、これも必要ありません。システムが自動的に開票作業をおこなってくれるためです。

解散総選挙などが行なわれるたびに選挙にかかる費用が話題となりますが、その大部分は選挙執行管理費と呼ばれる事務費用です。それもわずかな額ではありません。衆院選を例に取ると、1度の選挙で必要な事務費用はなんと500億円ほど。選挙のたびにこれだけの税金が事務費用に投じられているのです。

ブロックチェーンによる選挙には、政治的・経済的の2つの面からメリットがあると言えます。

ブロックチェーン活用の投票システムの課題

とはいえ、ブロックチェーン活用の投票システムは手放しで喜べるもの、と言い切れないのも現状です。やはり課題も少なくありません。それは良くも悪くもブロックチェーンの信頼性に依存してしまう点です。

ブロックチェーンはまだ先端技術のひとつと考えられている技術。理想的だとされている現在の状況は、まだすべてが見えていないだけとも考えられます。透明性や非改ざん性についても、まだ開発途上だから危険にさらされていない部分が少なからずあるでしょう。今後、ブロックチェーンが広く浸透してこそ、その真価が問われていくはずです。

また、ブロックチェーンがおもに使われている仮想通貨の分野においても、ブロックチェーンが持つ51%攻撃のリスクについては完全に解決しているとは言えません。台帳の整理をどのような仕組みで運用していくのか。このことは大規模な選挙となればなるほど、大きな課題としてのしかかってきます。

ブロックチェーン投票システムを運用する会社が社内で処理するのか、それともマイニングなどの手段を使い効率的に処理していくのか。どちらの方法になるにしてもまだまだ問題は山積されている現状でしょう。
1億人の有権者が動く可能性を持つ国政の選挙となれば、社内で処理することにも限界があります。かと言ってその処理をアウトソースし、51%攻撃のリスクにさらされては、元も子もありません。

選挙は失敗が許されない分野。「投票システムを運用してみたものの、うまくいかなかった」では済まされません。本当にブロックチェーンは信頼できる技術なのか。そして規模が大きくなったとき、どのように運用していくのか。その確度がブロックチェーン投票システムの可能性や信頼性につながっていくと言えるでしょう。

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