ブロックチェーンを活用したスマートロック開発企業のブロックチェーンロックが2019年4月にスマートロックデバイスと、関連するスマートロック管理サービス『KEYVOX(キーボックス)』を発表しました。

シェアハウスの管理や、民泊物件の管理といったいわゆるシェアリングエコノミーに特化したユースケースを想定しているようです。

スマートロックのホームページではこのプロダクトを「人類史上最初の鍵の発明から4,000年の時を超えて鍵を再発明」と表現しており、同社の本気度と画期的なユーザー体験が期待できます。

キーボックスの戦略を読み解くことで、未来の鍵がどう進化していくのか解説していきます。

そもそも「スマートロック」とは

スマートロックとは、物理的な鍵を持たなくてもスマートフォンなどのデバイスのアプリケーションから自宅などの鍵を解錠・施錠できるサービスのことです。

メリットとして、鍵を持ち歩く必要がないこと、ID/パスワードさえあれば利用できること、他人に鍵を受け渡すことが容易なことなどがあります。

現在の主なユースケースとしては、民泊物件の鍵の受け渡しや、シェアオフィスの入退場などに利用されることが多くなっています。

逆にデメリットは、オンラインであるがゆえにハッキングやシステム障害が発生する可能性があることです。

この分野をリードするプロダクトは『Qrio Smart Lock (キュリオスマートロック)』『Remote Lock(リモートロック)』『Akerun(アケルン)』などがあります。これらのプロダクトはいずれもブロックチェーンは利用しておらず、サーバ/クライアント型となっています。

KEYVOX(キーボックス)スマートロックデバイスの特徴

冒頭にも述べたように、KEYVOX(キーボックス)の利用を想定しているユースケースは民泊の鍵の受け渡しやシェアオフィスの鍵の管理で、すでに同様のサービスが存在しています。

それでは、他社と比べた時にどのような差別化ポイントがあるのでしょうか。

KEYVOX(キーボックス)は日本の物件に最適化

KEYVOX(キーボックス)のハードウェア「BCL-XP1(54,800円税抜)」は日本の物件に最適化されている点において差別化されています。

日本は賃貸の物件だと鍵の取り付けのために壁に穴を開けることができません。そのため、KEYVOX(キーボックス)は壁に穴を開けることなく工事できる仕様になっています。

工事不要で貼り付けるだけで利用開始できるハードウェア「​BCL-XE1/MBJ(19,500円税抜)」もあります。

そのほかの特徴については公式ホームページでは「高信頼」「多機能」と書かれていますが、このあたりは実際にユーザーが利用して評価されていくはずです。

ブロックチェーンハブ「BCL-BCC」

2019年8月に販売開始予定のブロックチェーンハブコンピューター「BCL-BCC(オープン価格)」は、シェア空間をブロックチェーンで管理するデバイスです。

シェア空間でのキー利用の際にスマートコントラクトを発行して、カギと利用者を突き合わせ、契約の内容に合わせたサービスを自動で提供できます。

後述する将来的なユースケースの実現に向けて、KEYVOXになくてはならない重要なデバイスとなる商品です。

正式販売は準備中

KEYVOXはまだ正式に発売開始していません。

予約はAmazonで受け付けています。発売日予定日は2019年8月1日となっています。

また、正規販売代理店を募集しているので、KEYVOXを販売したい店舗は応募することができます。

ふたつのKEYVOX(キーボックス)管理サービス

キーボックスを利用するためには、まずデバイスを購入してから管理サービスのプランを選びます。プランは「KEYVOX Pro」と「KEYVOX Lite」の2種類があり、用途に応じて選択できます。

シェアオフィス、民泊など事業目的の「KEYVOX Pro」

「KEYVOX Pro」は民泊物件やシェアオフィスなどの事業者向けのプロユース用管理サービスです。

KEYVOX(キーボックス)がシェアリングエコノミーに特化したプロダクトなので、このサービスが主力となります。

不動産が利用されていない時間をマネタイズするための選択肢として売り出していて、「取り付けるだけで収益化」というポイントをプッシュしています。

オーナーが利用を開始するための手順は簡単で、申し込みをして、デバイスを設置し、最後に管理用アプリをダウンロードするだけで利用開始できます。

逆に、ユーザー側も簡単に利用できます。アプリをダウンロードして、予約や支払いをアプリで済ませたら、あとはアプリを利用して解錠・施錠するだけです。

「KEYVOX Pro」の利用料金は月額1500円〜で、管理する鍵の数に応じて利用料金が変動していきます。

自社オフィス管理などに「KEYVOX Lite」

「KEYVOX Lite」は自社オフィスの管理に利用できるサービスです。サービス利用料は月額500円。もちろん自宅の鍵にもなります。

社員に解錠・施錠権限を付与して利用できる他、簡易的な入退場履歴の閲覧もアプリ上で確認できます。

「KEYVOX Pro」の導入を検討しているが、まずはお試しで利用したい場合にも適しています。

将来的なユースケース

KEYVOX(キーボックス)は将来的に、ブロックチェーン技術ならではのプロダクトに進化していくようです。Cnetの取材によると、独自の電子マネーを用いたQR決済を準備しているとのこと。

この機能が実装されれば、民泊の予約・鍵の管理はもちろんのこと、ユーザーが民泊物件の鍵を解錠すると同時に決済が完了するような、ブロックチェーンを用いた細かい管理システムにも応用できます。

また、野村総合研究所と共同で新コンセプトのロッカーも開発していると言います。KEYVOX(キーボックス)の知見とあわせて、ロッカー検索、予約、空き状況管理、などが一元管理できるメリットを生み出すことができます。

Blockchain Lockの展開する事業

運営会社のブロックチェーンロックはスマートロック事業だけでなく、ブロックチェーン基盤の提供やLoT分野、シェアリングエコノミーなどの事業も展開しています。

トレンドとなっているいくつかの技術を、すでに商業化している先進企業です。

パブリックチェーンソリューション事業

ブロックチェーンロックはもともとパブリックブロックチェーン基盤を開発しているベンダーです。

この技術が基礎となってKEYVOX(キーボックス)をはじめ、この後に紹介するようなtoBビジネスを展開するコアになっています。

この領域で展開している事業はいくつかあります。

  • デジタルアセット事業向けソリューション
  • デジタルアセット管理ウォレット
  • ブロックチェーン生成レポートツール

これらのBlockchain as a Service(BaaS)がブロックチェーンロックの屋台骨と言えるでしょう。

小売事業向けIoT事業

中小規模の小売店に向けたIoT管理サービスです。オンラインストアとオフラインストアの管理をアプリで一元化することで、データ分析や適切な値段設定が可能になります。

ビッグデータによって算出された商品の価格は、デジタルディスプレイ化された『eラベル』に反映されるので、人的工数を省きながらデータに基づいた小売管理ができるサービスです。

IoT駐車場システム事業

空き地のオーナーが駐車場を運用してマネタイズするケースがありますが、大規模な工事が必要なことや、空き状況を管理できないことなど、課題は山積しています。

ブロックチェーンロックのIoT駐車場システム事業は、KEYVOX(キーボックス)と同様に、デバイスを購入して設置する最小限のコストで駐車場の運営を開始することができます。さらに、空き状況や予約などのサービスもアプリで一元管理することで、データに基づいた運用で効率良く空き地をマネタイズできます。

ブロックチェーンで人的リソースを省略

ブロックチェーンロックはブロックチェーン開発を基礎にしながら、着実にニーズのあるユースケースを創出している堅実さが感じられます。

もともと、ブロックチェーンの特徴は「仲介を省く」ことですから、オフィスや宿泊施設の鍵管理といった、これまで煩雑なオペレーションが課題となっていた領域に参入していくのは納得感があります。

創設者は楽天ブラジルのCEOを務めた経験もある岡本健氏でもあることから、先見を持った事業展開がされていくことでしょう。

The post シェアエコ特化型スマートロック『KEYVOX』のブロックチェーン活用とは appeared first on Coin7 仮想通貨ニュースメディア.