日本音楽著作権協会(JASRAC)がブロックチェーンを本格導入すると浅石道夫理事長が発表した。管理している楽曲の利用と、それに伴う料金の徴収といった著作権利用料のフローの透明性を高めるのが目的だ。2020年までの管理システム移行を目指す。
IBMと実証実験済み
JASRACは2018年10月〜11月にIBMと共同で実証実験を実施しており、楽曲利用とそれに伴う徴収と分配データをブロックチェーンで管理することに成功している。
2019年には実際の業務内容に近いシチュエーションでのテストを予定しており、このテストが成功すれば2020年に実用化する流れだ。
IBMはエンタープライズ向けにHyperledger Fabricを利用したコンソーシアム型のブロックチェーンソリューションを提供しており、食品、貿易、金融、決済などの分野にも展開している。
浅石氏「『JASRACは不要になる』は机上を出ない」
2月4日に開催された2019年新年記者懇談会で、浅石氏はブロックチェーンの導入について言及した。
「ブロックチェーンという技術が語られるとき、“JASRACのような著作権の集中管理団体は不要になる”といった発言や同様の内容が書かれた本が出版されています。その一方で、“テクノロジーで契約交渉ができるわけがない”といった否定的な意見もあります。そのどちらもが机上を出ておらす、具体的な検証がないまま結論を出している。私は双方の意見に対して危惧を抱いています」
同氏の言う通り、ブロックチェーンは中央集権組織や仲介業者をディスラプトする技術であると語られているが、現時点では音楽業界ほどの巨大マーケットを揺るがすようなインパクトは残せていない。
音楽という商材の性質上、著作権の管理は容易ではないが、このチャレンジがゲームチェンジングなものになるのか注目だ。
ライブハウスでの演奏など課題も
楽曲の著作権利用料の問題点として昔から挙げられるのは、ライブハウスなど小規模のホールで演奏された曲の利用料をどのように管理するかだ。
JASRACとしては小規模でも楽曲利用料を徴収したいのが本音。しかし、そのためには規模に関係なく全てのライブハウスの運営者が事前に演奏される曲目をリストアップし、JASRACに申告しなければならない。
ブロックチェーンの導入によって、このような課題を解決できるかと言われれば疑問符がつく。ブロックチェーンでもライブハウスで演奏される曲目までは管理仕切れないからだ。
一方で、JASRACの作品データベースの管理においてはブロックチェーンは改ざん不可能で安全性が担保されているため、ある程度の効果は見込めるイメージはつく。
別の問題として、作品をブロックチェーンで管理するためには、人力でデータをブロックチェーンに入力しなければならない。仮に誤ったデータがブロックチェーンに記録されてしまえば、ブロックチェーンは修正が効かないために誤ったデータが半永久的に出回ってしまう。
今年は実務に基づいた実証実験の運用が開始するので、その結果や動向を注視したい。
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