人民元建てのビットコイン(BTC)取引は全盛期には全取引の9割以上といわれることもあったが、17年9月に当局がICO(新規暗号資産 [仮想通貨] 公開)の禁止令を出し、大手取引所が相次いで閉鎖へと追い込まれてからは、人民元建ての取引量は決して大きくはない。

オフショア人民元(CNH)はオンショア人民元(CNY)よりも海外からの人民元の評価が反映しやすい。両者はそれほど乖離しているわけではないが、15年8月-10月、17年1月-6月、18年1月-2月、19年8月-9月、19年5月、20年3月にはやや乖離が大きくなった。CNHとCNYが乖離する時を中国への資金流出入の期待感が強まる時と捉えて、その前後においてビットコイン(BTC)価格はどのように推移したかを振り返ってみた。

17年1月から6月は、CNHからCNYを引いた差額がマイナスの期間が長期化した。海外からは人民元高期待が強く、中国への資金流入期待が強い状態が継続していた。17年7月以降にこの乖離はプラスに転じ、18年1月頃まで人民元安期待が強く、中国からの資金流出期待の方が強い状況が継続した。同期間のBTC価格は2,000ドル台から過去最高値の19,114ドルへと高騰した。20年1月以降のCNH-CNYはプラスの場合が多く、中国からの資金流出期待の方が強い状態にあると見られるが、BTC価格にはまだ影響は見られない。

CNHからCNYを引いた差額の乖離が拡大した時に、短期的にBTC価格に影響が見られたケースを紹介しよう。 19年5/9-5/16の期間には、乖離が0.01から0.04に広がる中で、BTC価格は5/15に33%上昇した(5/9比)。また、20年3/12-3/19の期間には乖離が-0.001から0.05に広がり、3/25にBTC価格は34%上昇した(3/12比)。これらの期間には中国からの資金流出期待が強まってから数日後にBTC価格が上昇したと見ることもできる。

19年12/5-12/12の期間には乖離が−0.004から−0.06へ拡大した後、12/17にBTC価格は11%下落した(12/5比)。この時には、中国への資金流入期待が強まりを見せた数日後にBTC価格が下落したと見ることもできる。

もっとも、オフショア人民元とオンショア人民元との乖離がすべてBTC価格に影響しているとは言いづらい。例えば18年2月初旬には一時プラスの乖離が大きくなったがBTCは下落を続けていたように、例外も多く存在する。ただし、定期的にオフショア人民元とオンショア人民元の値動きをBTCとともにチェックすることが市場を読むヒントになる場合もありそうだ。

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