連日、仮想通貨(暗号資産)相場は厳しい状況にあります。

ひとつは、株式市場で下落相場が継続していること。もうひとつは、ステーブルコインTerraUSD(UST)を巡って混乱が起きていることです。

ビットコインは、年初来安値を更新したことを受け、下落が加速する展開となっています。

材料を振り返っておきましょう。

インフレの高止まり懸念が継続

昨日、米消費者物価指数(CPI)が発表されました。事前予想では、インフレはピークを向かえる数字となっていました。しかし、発表された数字は強い結果となりました。

これを受けて、株式相場は急落。インフレヘッジとして買われる傾向にあるビットコインは、地合いの悪さと株式相場の下落をみてか下落が続く展開となりました。

ドル円は買われましたが、ここ数日間は130円台での利益確定の動きが目立っていたこともあり、数時間で反落。この動きが、さらに対円でのビットコインの下落に拍車をかけることとなりました。

LUNAが1日で30分の1に

仮想通貨相場を暴落に巻き込んでいる材料が、LUNA財団の発行するステーブルコインUSTです。Terraの発行するドルペッグのステーブルコインのため、USTと名付けられています。

通常、ステーブルコインは、担保となる法定通貨などがあることから、その価値と価格が維持されます。しかし、USTはアルゴリズム型のステーブルコインとなっており、発行体が保有するTerra(LUNA)をバーン(焼却)・発行することでドルへの連動を維持するという設計となっていました。

さらに、準備金として約3000億円相当のビットコインを市場で買い付けることを行い、USTの担保としました。しかし、担保金のビットコインが急落すると、USTが1ドルを維持できないのではないかとの投資家心理から、USTが売られドルとの価格連動が崩壊。ビットコインが下落したことにより、LUNAも売られると、この動きが加速。USTはあっという間に0.7ドルに急落し、LUNAも売り込まれるという事態になりました。


この騒動の前に、LUNAの時価総額は5兆円ほどありました。しかし、昨日だけで30分の1にまで急落。1週間の下落率は99.87%という記録的な急落となり、その時価総額は650億円程度にまで低下しています。

●テラ(LUNA)の価格推移

急落の最中に、発行体はOTCマーケットメイカーなどに1000億円相当のビットコインとUSTを貸し付けていくことで、USTの安定化を図りました。しかし、これがUST解体と見えたのか、LUNAの売りがより激しくなる結果となりました。また仮想通貨相場の急落もあり、この防衛策はほぼ意味をなさずに相場は崩壊してしまいました。

LUNAとUSTの創始者であるDo Kwon氏は、近くUSTのリカバリープランを発表するとツイートしています。


今回の暴落は、2018年11月に起きたBCHを巡ってマイナーが2分したハッシュウォーを彷彿とさせます。一時的に、ビットコインのハッシュレートが半減したことで、ネットワークの信認に関わる問題となり、仮想通貨市場の時価総額は約50%となりました。

今回は、仮想通貨市場の時価総額5%以上を占めていたUSTとLUNAが暴落の主役となり、さらにステーブルコインの信頼にも関わる問題であることから、2018年に起きた問題同様にインパクトが大きくなりました。

ステーブルコインは信頼性が重要ですから、元に戻ることはかなり厳しいといえそうです。

ただし長期的に見れば、種類が増え過ぎているステーブルコインから質の悪いモノを淘汰することにもつながることから、仮想通貨業界にとってプラスになるのではないでしょうか。