仮想通貨(暗号資産)のマイニングによって大量の電力が消費され、それが環境負荷を高めている・・・という論調が世界を駆け巡りましたが、今ではそういった話がそれほどクローズアップされなくなっているように感じます。

その逆に、マイニングが環境保護に貢献しているとするニュースが多く報じられるようになり、仮想通貨と環境との関係も大きく様変わりしました。

今回も、マイニングが環境保護に貢献している話題として、アルゼンチンから届いたニュースを紹介したいと思います。

アルゼンチンの石油会社が余剰ガスをマイニングに有効利用

南米アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスにあるテクペトロールという石油会社は、同社が稼働させている石油採掘施設で余剰ガスを使ったマイニング事業をすると発表しました。具体的には石油採掘時に発生する余剰ガスを燃料として活用し、そこで生まれた電力でビットコインのマイニング事業をするとしています。

これによって同社は石油だけでなく余剰ガスも有効利用をして「一石二鳥」の利益が得られることになります。

そもそも余剰ガスってなに?

ここで登場した「余剰ガス」という言葉について、初めて見たという人もいると思います。この余剰ガスとは、石油や天然ガスを採掘する現場で排出される「廃ガス」のことで、これまではそのまま廃棄されていました。

廃棄といっても気体なので特にゴミが発生するわけではなく、そのまま大気中に排出されます。しかし、この余剰ガスには可燃性があるため、そのまま大気中に放出すると引火してガス爆発を起こす危険があります。

また、硫化水素ガスなど余剰ガスの成分によっては人体に猛毒となる可能性もあるため、今では余剰ガスを大気中に廃棄しないよう義務付けられています。油田の映像で、煙突などの先端で炎が燃えている様子を見たことはないでしょうか。これは余剰ガスを大気中に排出しないために燃やしているもので、近年の油田ではこうした風景が当たり前になっています。

しかし、これだと単に環境負荷を低減したり毒性を和らげているだけに過ぎません。可燃性ガスなのですから、燃やせば燃料になります。そこに目をつけたのが、アルゼンチンのマイニング事例というわけです。

ビットコインのマイニングがメタンガス排出を削減している

IRMという研究所のレポートによると、同様の取り組みは世界各地で行われており、それによってメタンガスなど大気中に排出する有害なガスを燃料とすることで排出削減が実現しているそうです。

実はメタンガスは温室効果ガスの一種で、二酸化炭素よりも温室効果が高いことで知られています。石油採掘の現場などから大量のメタンガスが排出されると、二酸化炭素以上に地球を熱くしてしまいます。

そこで余剰ガスであるメタンガスを燃料として活用し、ビットコインのマイニングで消費することで最大8%の排出削減になるのだとか。環境負荷の高い悪の元凶のように見られてきた暗号資産のマイニングは、今や環境保護に貢献する優等生として活躍の場を広げているのです。


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