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北朝鮮が仮想通貨価格を高騰させる「魔法のテクニック」

筆者: エミリー・パーカー

北朝鮮が、あなたの仮想通貨の価格を吊り上げる!?

狙いは市場の混乱ではなく…

あなたが所有する仮想通貨の価格は、上がっただろうか? もしそうなら、ひょっとしたらあなたは、北朝鮮のリーダーである金正恩・朝鮮労働党委員長に感謝したほうがいいのかもしれない。

その理由は、北朝鮮がビットコインを売り買いしているからではない。我々の分析したデータによれば、北朝鮮のミサイル実験が、世界でもっとも知名度の高いデジタル通貨であるビットコインとイーサ(イーサリアム・ネットワークで使われる仮想通貨)の価格を押し上げたことが示唆されている。

2017年後半を例にとってみよう。北朝鮮は、日本の上空を通過するミサイル発射実験を2回行なった。どちらの実験の際も、ビットコインとイーサの値段は急騰したのだ。8月に行われた実験後、ビットコイン価格は4.5%ほど上がり、イーサでは6.5%以上上昇している。
 

出所:Yahoo! Finance  Coinmarket cap,SP500 Bitcoin price

 

ミサイルが日本を飛び越えた9月半ばの2度目の実験では、価格の急上昇はさらに顕著で、ビットコインの価格は15%以上、イーサはおおよそ17%上昇した。

また同月下旬、北朝鮮が、ドナルド・トランプ米大統領による「北朝鮮を破壊するしかない」との発言を「宣戦布告だ」と非難すると、ビットコインの価格は6.6%、イーサは3.5%ほど高くなった。

ミサイル実験と仮想通貨価格の間の、この明らかな相関性をどう説明すればいいのか? 投資家たちが、北朝鮮との対立激化によって、自国の法定通貨の価値が下がるのを心配した可能性はある。

リスクへの防衛策として金への投資を行う人々がいるように、仮想通貨を購入したのかもしれない。

韓国での影響の大きさが数字に表れる

次のグラフを見ると、さらに興味深い傾向がわかる。グラフにある8つの北朝鮮がらみの出来事が起こった際の平均を取ると、イーサの増加率(4.64%)はビットコインのそれ(3.94%)よりも大きいことに気がつくだろう。

出所:Yahoo! Finance  Coinmarket cap,SP500 Bitcoin price

 

これを説明するために、韓国の投資家の動きを見てみたい。韓国の投資家たちは、北朝鮮との対立激化がウォンに影響するのを恐れて、北朝鮮の脅威が高まるにつれて仮想通貨の購入に魅力を感じるようになっていった可能性がある。

そして実は、韓国人投資家の間では、イーサが好まれることがわかっている。昨年暮れの段階で、韓国はビットコインの取引シェアが世界で3番目に大きく、イーサのシェアでは世界最大で、市場規模は全世界の3割以上になっていた。

韓国でイーサが人気を集める理由はいろいろあるようだが、韓国人投資家らが仮想通貨に参入したのが比較的遅かったため、ビットコインよりもイーサのほうが価格が上昇する余地があったとする見方もある。

また、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンは、韓国の仮想通貨コミュニティと個人的な交流があったともいわれる。

北朝鮮に関するあらゆる出来事と同じように、仮想通貨との関係においても、何が起きているのか明確な答えを出すことはできない。だが北朝鮮自身もデジタル通貨に魅力を感じていることに疑いの余地はない。

昨年、イタリア人起業家フェデリコ・テンガが北朝鮮の平壌科学技術大学を訪問し、ビットコインとブロックチェーンについての講義を行った。このごく小さな出来事は、世界にピョンヤンの北朝鮮指導部が仮想通貨を彼らの「レーダーの圏内」にあるととらえているというメッセージを送るのに十分なものだった。

北朝鮮の狙いは仮想通貨市場の混乱ではない?

北朝鮮が仮想通貨に食指を伸ばす理由はわかりやすい。経済制裁のためにキャッシュが枯渇し、すぐにでも資金を手に入れたいのだ。仮想通貨なら比較的、匿名性を保ったままで資金を得ることができる。

未来予測会社レコーデッド・フューチャーで、戦略的脅威に関する開発部門のディレクターを務めるプリシラ・モリウチは、北朝鮮がある時期、1万1000ビットコインを保有していたと推計している。

どの時点で既存の通貨と交換したかによって変動はあるが、これは1500万ドルから2億ドルの価値になる。

モリウチは、北朝鮮のビットコイン保有量は、ビットコインのマイニングと、韓国の仮想通貨取引所からの窃盗、そして北朝鮮の犯行だと広く認識されている「ワナクライ」(身代金要求型ウイルス)攻撃によって手に入れたものだと考えている。

だが、北朝鮮のビットコインに飽き足らず、より追跡が難しい別の仮想通貨、モネロに絞ってマイニングを行っている可能性も出てきている。

ビットコイン価格を動かす要因は不可解であることが多いが、北朝鮮のような謎に満ちたプレイヤーが、大量のビットコインを取引して価格を操作しているとも推測したくなってくる。

だが、モリウチはインタビューの中で、北朝鮮がそのような形でビットコイン価格に影響を及ぼしている証拠はないと指摘している。

「北朝鮮を研究し、彼らの仮想通貨への広範な工作活動の戦略的動機を読み解くと、つまるところ彼らがキャッシュを欲していることがわかります」と、モリウチは語る。

「経済制裁は、北朝鮮経済、また核・ミサイル開発における部品調達のための支払い能力にも、深刻な悪影響を及ぼし始めているのです」

北朝鮮は必ずしも大量の仮想通貨を保有しているとは限らない、ともモリウチは述べる。彼らはビットコインを入手すると、現金化したり、商品やサービスの購入に使ってしまうからだ。

「彼らが今後、現金化や放出によって、世界の仮想通貨市場に不安定化をもたらそうと画策し、大量の仮想通貨を保有しているとは、私には考えられない」

たしかに過去には不安定化を狙っていた時期もある、とモリウチは付け加える。しかし現在では、北朝鮮の優先事項は強い通貨を獲得して自分たちを支えることであり、ビットコイン市場に混乱を引き起こすことではないのだ、と。

もっとも、これは金正恩が仮想通貨の価格を高騰させることはない、という意味ではない。ミサイルを発射しさえすれば、彼はビットコイン価格は上昇させることができるのだから。
 

翻訳:山田敏弘

出展:LONGHASH x 現代ビジネス

 

<本記事ご協力>

LongHashは、ブロックチェーン技術の開発と理解を促進するためのプラットフォームです。

LONGHASH

エミリー・パーカー

エミリー・パーカー

作家・起業家。LongHash Co-founder。過去にThe Wall Street JournalおよびThe New York Timesでスタッフライター・エディター、またアメリカ国務省でポリシーアドバイザー、Silicon Valley start-up Parlio (現:Quora)でチーフストラテジーオフィサーの経験がある。著書"Now I Know Who My Comrades Are: VoicesFrom the Internet Underground."

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