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Vol.8 仮想通貨の税金応用編

筆者: 岡本 信吾

1. 取引手数料がマイナスの取引所を使っていた場合の取扱い

取引所によっては、より多くの顧客を呼び込みビットコインの流動性を高める目的で、手数料を取るのではなく、取引すると手数料をあげる、いわゆるマイナス手数料の制度を取っている取引所があります。

日本でいうと代表的な取引所は「Zaif」などですね。
取引するとお金がもらえてしまうわけですから、当然に税務申告が必要になります。

さて、 この場合の会計処理はどのようにしたらよいでしょうか?結論から言うと、もらえた金額はビットコインのその他の所得と通算してしまって構いません。

すなわち、「雑所得」ですね。もしビットコイン取引で利益が出ていたら、その利益と合わせて申告すれば大丈夫ですし、損失が出ていれば、その損失と相殺(内部通算)して申告することができます。

2. 仮想通貨が消滅(GOX)した場合

自分が持っている仮想通貨が消えてしまった。これを、仮想通貨界隈では「GOXした」などと言います。

名前の由来については仮想通貨の不正アクセスがあったかつての大手取引所、 「Mt.Gox(マウントゴックス)」から来ています。おそらく、仮想通貨の業歴が長い方は、多かれ少なかれ1度は経験したことがあるのではないでしょうか。

  • ビットコインの盗難にあった
  • ビットコインを間違えてビットコインキャッシュアドレスに送金し復元不可能になった
  • 詐欺まがいのICOトークンを購入してしまい、運営が逃亡してしまった

等々、取引所のセキュリティ不備を突かれ仮想通貨を損失したケースもあれば、自分の操作が不十分で自ら仮想通貨を失ってしまう「セルフGOX」など、さまざまなケースが考えられます。

仮想通貨は手元に戻ってこないケースがほとんどなので、できれば損金として落として税金をその分減らしたいところだと思います。

では、この場合の会計税務上の取扱いは、どのようにしたらよいでしょうか。

まず、現在のところ仮想通貨がGOXしたケースの取扱いは法律や通達などで個別に決まっていません。

ですので、現在は仮想通貨がGOXした場合に経費で落とすことは通常できないという結論になります。

それでは、すべての仮想通貨の損失は損金として計上することができないのでしょうか

個人的な見解ですが、仮想通貨が「取引所の問題で」戻ってこないことになった場合は、損金として処理できる可能性があります

すなわち税務上「貸倒損失として処理できる場合」に 該当する場合は損金にできる可能性は残されていると考えます。このあたりは非常に判断が難しいことに加え、税務調査があった場合に非常に突っつかれやすい部分になります。

税理士の方に相談されることを強くお勧めします。なお、自分の不注意で仮想通貨を紛失してしまう、いわゆる「セルフGOX」の場合は基本的に損金にはならないと考えられます。

それを言い出すと、勝手に損金を作ることもできてしまいます。

また、詐欺ICOに投資してしまった場合も同様に投資金は損金になりません。これは結果的に詐欺に遭ってしまった場合でも、同様です。

投資は自己責任が前提。怪しいICOに投資してしまった自分の責任もある、と税金計算上 はみなされてしまうのです。仮想通貨のGOX問題。難しいですが、理解しておいてください。

3. 仮想通貨の節税方法

さて、これからは仮想通貨の利益の節税方法について解説していこうと思います。

仮想通貨事業は基本的にかかる経費がないので、他の事業の利益に比べて交際費を計上したり、消耗品を計上したり、などいわゆる領収証をあつめて税金対策、というのがしづらいかと思います。

もちろん、まったく不可能というわけではありませんが、比較的に、ということですね。

今回は節税対策として以下のような方法を提案しますので、参考にしてください。

① 電気代や通信費、商材(Note等)代金、サロン代金などの購入費用を漏れなく計上する

電気代や通信費など仮想通貨のトレードに必要な支出トレードを勉強するために本を購入して勉強した、FXの勉強のためスクールに加入した、などは必要経費になりますので、もれなく集計し仮想通貨の収入から差し引くことで、利益を減らす(=税金を減らす)ことが出来ます。
また、もちろんですが取引所の手数料なども経費になりますのでこちらも忘れずに。

② 含み損の現物やポジションをいったん利確する

「仮想通貨は値上がりなどの含み損益については確定申告をする必要がない」 裏を返せば、「仮想通貨の含み損については、確定するまで経費として認められない」 ということになります。
なので、12月になって「利益が出てしまった」となった時には、含み損を抱えている仮想通貨を売却したり、他のアルトコインに変えたりして、損失を確定させてしまうことで、支払う税金の額を減らすことが出来ます。

③ 他の雑所得・事業所得の赤字とぶつける

仮想通貨の利益は原則として「雑所得」(いわゆるどの所得区分にも該当しない区分)というくくりになります。


この「雑所得」がけっこうクセモノでして、簡単にいうと、赤字が出たとしても、他の事業の黒字と相殺することが出来ないのです。

例えば仮想通貨で損失が30万円出て、他の事業で100万円利益が出たとしても、 利益は70万円でなく、「100万円」として計算されてしまいます。
なんだか納得がいきませんが、しょうがないですよね。

ただし、雑所得の中でも、相殺できる場合があります。 具体的には、

  1. 1.雑所得どうしの相殺
  2. 2.雑所得が黒字で他の事業所得が赤字

の場合です。 それぞれ見ていきましょう。

まずは「1.雑所得どうしの相殺」です。
これは例えば、趣味でやっているメルカリ転売で利益が出たが、仮想通貨で損失が出てしまった場合です。この場合、メルカリ利益と仮想通貨の損失を相殺することが出来るので節税になります。

次に「2.雑所得が黒字で他の事業所得が赤字」のケースです。
これは、例えば個人事業主の方が本業のほうで赤字を出してしまったが、仮想通貨のほうは利益が出てしまったケースです。この場合は相殺して、税金を減らすことが出来ます。念のためですが、本業が「黒字」で仮想通貨が赤字の場合は相殺不可ですので注意を。

4. 事業所得と雑所得どちらがいいの?

仮想通貨よる利益は基本的に雑所得となりますが、
あきらかに仮想通貨のみで生計をたてていることが明らかな場合であって、開業届を出しておくなどの一定の条件を満たしている場合は事業所得として計算できることとされています。

それでは、事業所得と雑所得だと、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

上記を見て頂くとわかる通り、事業所得のほうが基本的に有利になります。特に青色申告関係の特典や、損失を繰延出来る制度などは大きなメリットですね。

【事業所得と雑所得の違い】

項目 事業所得 雑所得
給与所得との損益通算 ×
純損失の3年繰越し・繰戻し ×
青色深刻特別控除(100千円 又は 650万円) ×
青色事業専従者給与の適用 ×
設備投資減税等の優遇税制の適用 ×

上記を見て頂くとわかる通り、事業所得のほうが基本的に有利になります。特に青色申告関係の特典や、損失を繰延出来る制度などは大きなメリットですね。

ただし、事業所得として区分してしまうと事業税がかかってきてしまう可能性が高くなるため、注意が必要になります。

 

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岡本 信吾

岡本 信吾

公認会計士・税理士、仮想通貨投資家。税理士法人小山・ミカタパートナーズ 代表社員。 仮想通貨税務に強い税理士として、個人事業主から法人まで広く税務知識の普及を行っている。

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