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Vol.5 仮想通貨の貸付け(レンディング)編

筆者: 岡本 信吾

1. レンディング(貸仮想通貨)を行った場合

仮想通貨のレンディングについて話していきたいと思います。

仮想通貨で稼ぐ方法として、仮想通貨の値上がりを目的として保有する方法、FXを使って稼ぐ方法などを紹介し、ここまで会計処理について説明してきました。

そのほかに、自分が持っている仮想通貨を誰かに貸し出しして、利息を得るという方法があります。

これを「レンディング」と言います。

たとえば、あなたが日本円で100万円持っていたとします。それを誰かに貸すことになりました。

親しい友達や親族に貸す場合はともかくとして、普通は年利3%など、利息を付けて貸し出すと思います。1年後に103万円にして返してもらうことで、利益が得られます。

銀行と同じで、お金に利子をつけて貸し出すことで利益を得ています。

これとまったく同じことをビットコインやアルトコインでもできます。

上記の例で言うと、1BTC=100万円のときに1BTCを持っているものとして、年利3%でBTCを貸し出す、などがそうです。

なお、ここで貸し出した仮想通貨は、誰かの証拠金取引(FX)の原資として使われたり、取引所が仮想通貨を運用して利益を出したりするのに使われます。

仮想通貨の貸出しなので、貸出 相手の資産がなくなったり、取引所が破綻したりしない限りは、満期になったら返済されます。

なので、トレードやFXに比べて比較的低いリスクで運用することができるというメリットがあります。

一方で、先述のとおり、貸出相手や取引所の状況によってはGOX(仮想通貨が回収不可能 になってしまうこと)してしまう可能性もあります。

また、貸し出している期間は保有している仮想通貨を売却できません。

そのため、貸出期間 中に仮想通貨が暴落してしまった場合は、得られる利息以上に仮想通貨の値下がりしてしまい、 トータル損をしてしまう可能性もあります。

そのあたりのリスクに十分注意しながら、あまり長い期間貸したままにせず、こまめに回収 するなどの工夫が必要になります。

なお次の章でまとめて確認しますが、レンディングは貸出しを行った時点では損益を認識しません。
ひと言で言うと貸出しを行った時点では利息収入も確定していないし、元本はそのま ま返ってくるだけだからです。

レンディングを行い、手元からいったんビットコインが離れたからといって、すぐに経費に計上したりしないように気をつけてください。

2. レンディングした仮想通貨が満期となり返還された場合

次に、レンディングの会計処理について考えてみます。まずは、レンディングで貸し出していた仮想通貨が満期になり、返済された場合の会計処理を説明していきます。

 

【ケーススタディ】
2017年10月1日に保有している仮想通貨1BTCを1年、年利 2・0%でレンディングした。
2018年9月30日にレンディングしていた1BTCが金利と合わ せて1・ BTC返済された。
なお、2017年10月1日のBTC価格を100万円、2018年 9月30日のBTC価格を120万円とする。

 

【仕訳】
10月1日(レンディング開始)
貸付仮想通貨 1,000,000/仮想通貨(BTC) 1,000,000
9月30日(満期返済時点)
仮想通貨(BTC) 1,000,000/貸付仮想通貨 1,000,000
普通預金 24,000/仮想通貨利息 24,000
※120万円 × 2.0% = 24,000円

 

【損益】

ビットコインの貸出し 損益に影響はありません
ビットコインの返済 損益に影響はありません
利息の受取り 受け取った金額を利益として認識します

 

現在の会計・税務基準では、お金の貸付や借入に関しては損益を認識しません。

なぜなら、そのお金は利益とは言えず、貸したお金 がそのまま返済されるだけだから、プラスマイナスゼロ、という考え方なのですね。

ですが、利息に関してはお金が実際に増えることになりますので、利息部分についてだけ利益を認識するのです。

レンディングについては利息部分だけ利益を認識する」ここの結論だけ覚えておいてください。

 

3. レンディングした仮想通貨が戻ってこなく なってしまった場合

さて、不幸にもレンディングした仮想通貨が戻ってこないことが確定してしまった場合はどう処理したらよいのでしょうか?

レンディングした仮想通貨を取引所が元本保証してくれれば問題ありません。

しかし取引所も 保証してくれない場合は、実際のところ泣き寝入りするしかないというのが現状のところです。

この場合、会計処理はどのようにしたらよいでしょうか? 具体例を挙げて検討してみましょう。

 

【ケーススタディ】
2017年10月1日に保有している仮想通貨1BTCを1年、年利2・0%でレンディングした。
2018年9月30日にレンディングしていた1BTCが返ってこない旨、取引所より連絡を受けた。
なお、2017年10月1日のBTC価格を100万円、2018年 9月30日のBTC価格を120万円とする。

 

【仕訳】
10月1日(レンディング開始)
貸付仮想通貨 1,000,000/仮想通貨(BTC) 1,000,000
9月30日(返済不能時点)
貸倒損失 1,000,000/貸付仮想通貨 1,000,000
※貸倒損失の条件を満たす場合のみ、上記の仕訳を計上します。

【損益】

貸倒れとなってしまった仮想通貨 条件を満たす場合のみ損失に計上できる

【解説】
仮想通貨が返済不能になった場合、税金的に言うと「貸倒損失」に該当するかどうかを検討することになります。

貸倒損失」についてわかりやすく言えば、掛けの代金や、貸したり預けたりしたお金が返ってこなくなってしまうことを言います。

もし貸倒損失にすることができれば、この損失を損金にすることができますので、税金をその分低く抑えることができることになります。

ただ、貸倒損失はむやみに計上すると、利益操作が簡単にできてしまうことになりますから、条件がかなり厳しく設定されています。

貸倒損失については、国税庁のホームページに載っていますので、もし心当たりがある方は条件を確認してみてください。

「本当にレンディング資産が返ってくる見込みが0か?」
「全額返ってこないのか?」
「問い合わせを(何度も)して、その過程が記録として残っているか」

税務署が来て調査になった場合は、ほぼ必ず論点になる部分になります。
非常に難しい繊細な問題なので、必ず税理士に相談することをお勧めします。

 

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岡本 信吾

岡本 信吾

公認会計士・税理士、仮想通貨投資家。税理士法人小山・ミカタパートナーズ 代表社員。 仮想通貨税務に強い税理士として、個人事業主から法人まで広く税務知識の普及を行っている。

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