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Vol.1 仮想通貨の利益は雑所得。税金の計算方法と確定申告

筆者: 岡本 信吾

1. どんな時に税金って払わないといけないの?

「どんなときに税金を払わないといけないの?」
 
簡単そうにみえて、実は果てしなく広い質問だったりします。
 
この質問に真面目に回答するとかなり大変です。
 
買い物をすれば消費税、車を買ったら自動車税、持ち家があれば固定資産税、ゴルフをしてもゴルフ場利用税がかかります。はては温泉に入っても入湯税を取られています。

よくtwitterでも以下のような日本の税金を揶揄したような発言を見かけますが、税理士の立場から見ても非常に的を得ているな、と感じてしまいます(笑)
 

引用:https://twitter.com/NzKengo324

 

ここまでいくとかなり極端だなって思ってしまいますが(笑)

でも、いまの日本ってほんと税金だらけなんですね。

 

ただ、この記事をお読みの方が知りたいのはそんなことではありませんよね。
 
興味があるのは「ビットコインで儲けたら、何をいつまでに払わなければいけないのか?」だと思います。
 
ザックリ言いますね。

個人で儲けたら「所得税」と「住民税
 
法人で儲けたら「法人税」と「住民税」と「事業税がかかります。
 
で、個人にしろ法人にしろ3年目以降は上記の3つに「消費税」が加わる可能性あり
 
タダでビットコインをあげたりもらったりしたら「贈与税
 
以上です。このあたりかなりザックリ言っています。
 
細かい内容はのちほどお伝えしますが、まずはこの基本を押さえてください。
 
でも税金と言ってもそんな難しい内容を知る必要はありません。
 
稼いだら税理士に任せればいいだけなので(笑)

税金の種類や計算方法の考え方を押さえておけばまずはOKです。
 

それよりもここで言いたいことは「税金を計算に入れた仮想通貨戦略をたてる」こと。
 
かっこいい言葉で言えば、「タックスプランニング」。
 

税金を知って事業を行うのと、知らずに行うのでは残るお金が大きく変わりますからね。


仮想通貨界隈で感じるのは、稼げる人は多いけれど、守れる人はほとんどいないな、という印象です。
 
税金は事業を行うのであれば避けては通れないもの。
 
この記事をお読みいただいて税金に対する苦手意識がなくなったら幸いに思います!

 

2. 確定申告をしなければいけない人は?


「アルトコインのトレードをしたらたまたまうまくいって、3万円儲けてしまいました。税金がかかるのでしょうか?」
 
こんなご相談をいただくことがあります。

逆に、「ビットコインFXで100万円儲けたんですけれど、趣味だからいいですよね?」
 
というようなご相談も頂きます。

 
「税金を申告しないといけないかどうか」という意識についてはどうやらかなり個人差があるようです。
 
もちろん税法ではその「ライン引き」がしっかり決められています。
 
まず“なりわい”として仮想通貨のトレードやFXをしている人については、儲けた金額に関係なく申告しなければいけません
 
とはいえ「“なりわい”とは何か」はなかなか難しい話です。
 
実務上もよく問題になるのですが、サラリーマンの月収くらいの金額を連続して利益を出していたり、副業でなく専業で仮想通貨ビジネスとしてやっていると“なりわい”となるとお考え下さい。

これは、アルトコイントレードやビットコインFXでも同じです。
 
また、法人は当然儲けた金額に関係なく申告が必要になります。
 
で、“なりわい”ではなく“趣味”、すなわちサラリーマンの副業程度で儲けた場合ですが、
この場合に申告が必要になるのが、「利益が20万円以上出た場合」です。
 

ちなみに、利益というのは「もらった金額が20万円」ではありません。
 
「儲けが20万円」です。
 
つまり、「もらったお金」から「かかった経費」を引いたあとの金額ということです。
 
例えば30万円で買った腕時計を40万円で友達に売ったら利益は10万円です。
 
この場合は申告が必要ないということになるのです。

注意が必要なのは「趣味だから申告しなくて良い」ということではないのです。
 
趣味であろうが本業であろうが儲けが20万円以上でたら申告しないといけないのです
 
サラリーマンも主婦も学生も、どんな人でも儲けたら申告が必要です。
 
未成年だって、儲けが出たら申告しないといけません。
 
「でも友達はビットコインFXで100万円儲けたけれど申告してないっていってたよ?」

と言う方がおられるかもしれません。
 
それは「まだ税務調査が来ていない」だけです。
 
税務署は確定申告書を出したらすぐ調査に来るのではないのです。
 
税務署に確定申告書を提出してその場でとがめられなかったからセーフということは全くありません。
 
だいたい数年間は泳がされます。
 
泳がされて追徴額が大きくなったときにまとめて「ガツン」と取りにきます。
 
それが「税務調査」です。
 
「オレは申告しなかったけれど、何もこなかったよ」と自慢している人が周りにいたら、まだ来てないだけだよって教えてあげてください(笑)。
 
税務署が来てから相談に来られても後の祭りです。
 
何も助けてあげることはできません。
 
もう手遅れなのです。
 
さらに、税務調査でやられた人はそのことを表立ってはなかなか言いません。

だから「うまくいった」という噂ばかりが飛び交びかうのです。
  
しかし実際はかなりの人が税務署に入られています。
 
日本の税務署は優秀で厳しい役所ですからね。
「自分は大丈夫だろう」という根拠のない思い込みは危険です。
 
誰しも税金は支払いたくないものですが、「払うべきとき」に「払うべき額」を納めていないと、あとから本来払うべき税金以上の額を持っていかれます。
 
20万円以上の儲けが出た場合はしっかり納税をするようにしましょうね。
 

 

3. 確定申告しないとどうなるの?

仮想通貨についてはまだまだ制度も整っていないし、国も把握をまだできていないから

「確定申告なんかしなくてもばれないだろう」と思っている方。結構いるかもしれませんね。
 
最近の税務署は効率を重視して稼いでいる人のところに重点的に行くようになってきています。

  • 稼いでいるサロンメンバーの方
  • twitterで爆益報告している方

など・・・

正直、ちょっと大丈夫か心配になっています(笑)

国税庁内にサイバーチームというのもがあって、インターネットにかなり詳しい調査官がネット上の取引も監視しています。

税務署の魔の手はすぐそこまで迫ってきています。

現場の税務調査を経験している私がそう感じているのですから、間違いありません。

現に、2017年に仮想通貨でガッツリ稼いだ人に、税務署から「調査に入りたい」と連絡が先日来てますからね。

 じゃあ、ちゃんと申告しない場合はどんなことになるのか?
 
ここでは罰金の種類をご紹介しましょう。
 
税務調査のときにかかってくる代表的な罰金には、3つの種類があります。
厳密にはリンク先も参照してみてください。
 

1.過少申告加算税 (税額の5%~15%)

 
確定申告は期限内にしたけれど、申告した利益が実際の利益より少なかったときにかかります。

ポイントとしては、「意図的でなく」払う金額が結果的に少なくなってしまった、という場合にかかってくるところですね。

間違いに気づいたら自分で行う、間違いの金額が少ない、など「ちゃんとやってる」ほど罰則の税率は小さくなってきます。当たり前かもしれませんが(笑)。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.html

2.無申告加算税 (税額の5%~20%)

確定申告の期限を守らなかったときにかかります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm


税金は、期限内に申告して当然のもの。

遅れてしまっても罰則が何もないのであれば、制度としての意味がありません。

なので、申告が一日でも遅れてしまった場合には、ペナルティとして重い罰金がかかるようにしてあります。

一方で、自分で申告したほうが罰金が軽くなるようにして、自分で納税してくるように促しているんですね。

納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は税額の20%となります。

なお、税務署に指摘されるのではなく、自分で期限後にキッチリ申告をした場合には、税額の5%に軽減されます。 

3.重加算税 (税額の35%)

図的に税金を払わなかったと税務署にみなされたときにかかります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2026.htm

 
重加算税に関していえば1,000万円の所得の人が申告しなかった場合、所得税の罰金だけで80万円以上とられます。

さらに非常に悪質だとみなされた場合は、「刑事訴訟」という話になってしまいます。

本当にバカらしいですね。

ちゃんと申告していれば、それだけでこんな罰則は防げます。

みなさんはぜひ、賢く申告しましょう。

 

4. 所得税ってなに?


個人で仮想通貨の取引を行った場合にかかる税金は「所得税」と「住民税」と説明しましたね。(これとは別に「事業税」がかかる場合がありますが、後述します。)今回は、まずは所得税です。 これはみんな知っている「確定申告」をしたときに払う税金ですね。
 
確定申告というのは、自分が1年間に稼いだ収入や経費を自分で集計して、翌年の3月15日までお国に報告することです。
 
所得税はこの確定申告をするのと同時に払う税金なのです。
 
例えば平成30年1月1日~12月31日までに稼いだお金に対する所得税は、平成31年の3月15日までに払わないといけません。 所得税はどこに対して払うかというと、国です。
 この税金がくせものなのは、稼いだ金額によって税率が変わってくるという点です。稼いだ金額が少ない間は低い税率、多くなってくると税率はどんどん上昇します。 これを「累進課税」といいます。
 
現在の税率は所得(収入から経費を引いた稼ぎ額)が、

  • 195万円までは5%
  • 330万円までは10%
  • 695万円までは20%
  • 900万までは23%
  • 1800万円までは33%
  • 4000万円までは40%
  • それを超えると45%

と7段階になっています。

 

それぞれの税率には「控除額」というのがあるので、実際の計算はこんな風になります。 

【課税所得が600万円の方の所得税】(600万円20%)-42.75万円=77.25万円
【課税所得が2,000万円の方の所得税】(2,000万円40%)-279.6万円=520.4万円

税率と控除の一覧表を載せておきますので、参考にしてみてください。

以下
課税される所得金額税率控除額
1955%0
19533010%97,500
33069520%427,500
69590023%636,000
9001,80033%1,536,000
1,8004,00040%2,796,000
4,00045%4,796,000

(万円)


となっています。ややこしいですが、ここはしっかり理解しておきましょう。なお、仮想通貨については、翌年に納税額を事前に納税する「予定納税」という制度はありません。

これが仮想通貨ではなく普通の事業収入であれば予定納税がかかってくる場合もあるので、頭の片隅に入れておいてもらえるといいかなと思います。

5. 住民税ってなに?

次に住民税の説明をします。

これは国ではなく、自分が住んでいる都道府県・市区町村に払う税金です。
 
所得税は自分で確定申告をして納税するのですが、住民税はその申告を受けて役所が勝手に計算して納付書を送りつけてきます(笑)
 
住民税の曲者ぶりはその納付書が送られてくる時期です。
 
だいたい5月末ごろに自宅へ届きます。そして6月・8月・10月・1月の年4回に分けて支払うことになっています。
 
稼いだ年の翌年に払う税金なので、知っておかないとナニ?となってしまいます。
 
一発屋のお笑い芸人さんが昔ネタにしていました。
 
その年爆発的に人気が出て、収入が億を超えた芸人さんは、うかれまくってその年にお金をほとんど使いきったそうです。
 
で、3月になんとか所得税までは払えたけれど、住民税があるとは知らなかったと。
 
住民税を払うために借金をして何とか払ったそうです。
 
「収入から直接天引きでもしてくれれば使わなかったのに」って言ってましたが、これなんか住民税の特徴をよく表した話ですね。
 
住民税の金額は課税所得の10%となります。

【課税所得が600万円の方の住民税】600万円10%=60万円
【課税所得が2,000万円の方の住民税】2,000万円10%=200万円

 
住民税もバカにならない金額になりますから、計算方法だけでも頭に入れておいてくださいね。

課税所得、ザックリいえば稼いだあとの手残りの10%となります。

6. 事業税ってなに?

最後に一応、事業税についても簡単に説明します。

これってあまりなじみがない税金ですよね?

仮想通貨に関して言うと、雑所得として申告している方には関係がなく、事業所得として申告している人だけに関係する税金となります。

なので、ほとんどの人には関係がないかと思います。

ただ、事業として仮想通貨ビジネスをしている人には、意外とボディブローのように効いてくる税金となっております(笑)。
 
税率は、業種業態によってことなりますが、ほとんどのサービス業は「利益の5%」です。

個人事業税も住民税と同じで役所から納付書が送られてきます。時期は8月上旬くらいでしょうか。
 
それを年2回、8月末と11月末に2回にわけて払うことになっています。

【所得が600万円の方の事業税】(600万円-290万円)5%=15.5万円
【所得が2,000万円の方の事業税】2,000万円-290万円)5%=85.5万円


ここまで、「所得税」「住民税」「事業税」について話しました。

自分に該当する税金については、しっかりとおさえてくださいね。290万円引いているのは「控除額」です。所得から290万円引いた金額に税額をかけるというルールになっています。
 
はいはいって払える金額ではないので、該当する人は事前に知っておいた方がいい税金です。

7. どのくらい税金用にお金を置いておけばいいの?


どれくらい稼いだら、いくらぐらいを税金等だと思って置いておかないといけないのか? これを知っているだけでも、生活スタイルが大分変わってきます。


これについては言葉で説明しても難しいので、先ほど説明した「所得税」「住民税」のほか、支払義務のある「健康保険」「国民年金」も含めてわかりやすく6パターン計算してみました。

是非、ご自身の状況とちかいものがあれば参照してみてください。


 【所得が300万円の場合】(基礎控除のみで計算、健康保険は大阪市の場合)

所得税168,000円
個人住民税271,000円
個人事業税5,000円
国民健康保険料394,882円
国民年金187,080円

合計で102万円となります。

なので、使ってもいいお金は200万円ほどとなります。

 

 


【所得が600万円の場合】

所得税711,000円
個人住民税571,000円
個人事業税155,000円
国民健康保険料650,000円
国民年金187,080円

合計で227万円となります。

なので、使ってもいいお金は370万円ほどとなります。

 

 


【所得が1,200万円の場合】

所得税2,347,000円
個人住民税1,171,000円
個人事業税455,000円
国民健康保険料650,000円
国民年金187,080円

合計で481万円となります。

なので、使ってもいいお金は720万円ほどとなります。

 

 


【所得が1,800万円の場合】

所得税4,368,000円
個人住民税1,771,000円
個人事業税755,000円
国民健康保険料650,000円
国民年金187,080円

合計で773万円となります。

なので、使ってもいいお金は1,030万円ほどとなります。

 

 


【所得が3,600万円の場合】

所得税11,692,000円
個人住民税3,571,000円
個人事業税1,655,000円
国民健康保険料650,000円
国民年金187,080円

合計で1775万円となります。

なので、使ってもいいお金は1820万円ほどとなります。

 

 


【所得が6,000万円の場合】

所得税22,496,000円
個人住民税5,971,000円
個人事業税2,855,000円
国民健康保険料650,000円
国民年金187,080円

合計で3215万円となります。

なので、使ってもいいお金は2,785万円ほどとなります。

 


自分の所得と近いところのパターンを見て、イメージはつかめましたか?

これを知っておけば、突然「うわっ、何だこの税金は!?」って驚くことはなくなって、計画的にお金を使えるかと思います。

8. 会社と個人の仮想通貨の税金のちがい

個人で事業をしていて、儲かってくるとほとんどの人は会社にします。
 
なぜだと思いますか?
 
答えは簡単、税金を安くすることが出来る可能性が高いからです。
 
では、会社にしたら、税金に関して、何が変わってくるのでしょうか?
 
まずは、簡単に説明してみましょう。
 
会社にすると、先ほど説明した税金(所得税住民税事業税)の種類が変わってきます。
 
個人事業の場合

などがかかりますね。

会社の場合

となっています。
 
税金の種類が増えたじゃないかと思いますよね。そう、種類自体は増えるのです。
 

それでも税金は安くなる。それを説明していきたいのですが、まず最初に税金の話をする前に、根本的な話として個人事業と法人の違いをお話しておきたいと思います。
 

法人というのは「人間ではないけれど、法律によって人間と認められたもの」です。
 
法人という人格が認められて、契約をするなど権利や義務の主体となることができるということです。
 
眠たくなりました?わかりにくいですよね?
 
意味がよくわからなかった方、ご安心ください。
 
特に理解しなくても大丈夫なところなので、さらっと読んでください。
 
個人事業のときは「自分」という一人称なのが、法人を作ると法人は「別人」になるので、自分と別人の二人称になるのです。
 
つまり、自分と別人(法人)は別のものとして扱われます
 
例えば、個人事業の方が事業のために借入をしたとします。
 
この場合の借金は個人の借金ということになります。

 

事業に失敗したら、自分の資産を投げ打っても借金を返さないといけません。

ところが法人で借入をした場合、あくまでそれは法人の借金であり、個人は関係ありません。

こういう理由から、個人事業は「無限責任法人は「有限責任と言われています。
 
法人の場合は、例え倒産しても借金を返す義務は、その会社が持っている資産の範囲内で収まります。
(借金をするときに代表者が個人保証をしているときには、自分の資産を投げ打って返さないとダメになりますが・・・)
 
個人事業と法人の根本的な違いについて、ざっくり理解していただけたでしょうか?

9. 会社を設立したらどうして税金が安くなるのか?

それでは次に、会社を設立したら税金がなぜ安くなるのかについて話します。
 
会社を設立した場合、会社に残った利益には法人税等(法人税・法人事業税・法人住民税)がかかります。
 
会社の売上から経費を引いた利益は約35%が法人税等として持っていかれます。
 
ここでポイントは会社の経費の中に「自分の給料=役員報酬」が含まれることです。
 
ということは・・・・
 
自分の給料をいくらにするかによって、会社の利益というのは変わるわけです。
 
そして、自分の給料には当然法人税ではなく、所得税・個人住民税(個人事業税はかかりません)が課税されます。
 
この法人税等と所得税・個人住民税の税率の違いをうまく使うことが法人を設立する場合の最大の節税ポイントとなります。

つまり会社の税金と個人が払う税金と合計して、一番安くなるように自分の給料を設定するのです。

ここまで、理解できましたか?
非常に大切なところなので、次でさらに詳しくご説明します。

適正な役員報酬を設定することで法人化のメリットを最大化する


会社形態にしている方は当然ご存知かと思いますが、役員になれば自分の会社から「役員
報酬」という給料をもらうことになります。
 
役員報酬には「個人所得に対する税金」として「所得税」と「住民税」がかかります。
 
これに対し、法人の利益には「法人所得に対する税金」として「法人税」「法人住民税」「法人事業税」が課税されます。
 
この役員報酬は社長が自由に決めることが出来るのですが、給料ですので法人の経費にな
ります。
 
ということは、「役員報酬」を高くすれば法人の利益が少なくなり、「法人税」「法人住民税」「法人事業税」が安くなることになります。
 
しかしその分、「所得税」と「住民税」は高くなります。
 
つまり「役員報酬の額」と「法人の利益」はトレードオフの関係になっているのです。
 
これをグラフで示すと下のようになります。


  
このシミュレーションは1年間で3,000万円の利益を出した方を例にとっています。
 
説明を簡単にするために...
 
・ 奥さんと2人暮らし
・ 生命保険に入ったり寄付をしたりしていない
 
という状況で試算しています。
 
一番左は役員報酬を1円も取らずに、利益が3,000万円そのまま残って法人税を納めた場合です。
 
この場合は、法人と個人にかかる税金を合計すると1,065万円になります。
 
役員報酬を500万円取れば、法人の利益は2,500万円になりますね。
 
これが左から2つ目です。
 
この場合で、法人と個人にかかる税金の合計額は891万円になります。
このように役員報酬を上げていけばダンダンと税金が安くなり、ある地点で底になります。
 
このシミュレーションの場合は、一番税金が安くなるのが役員報酬が年間2000万円くらいのときです。
 
一番税額が高い「役員報酬が0のとき」と比較すると、1,065万円-747万円=318万円もの税金が安くなります。
 
なぜこのように役員報酬を上げていったほうが納税額が安くなるか。
 
その答えは「税率の差」です。
 
もう少し詳しく説明しますと、法人の税金は利益の金額にかかわらず、約35%が税金として持っていかれます。
 
これに対して個人の役員報酬にかかる税金は年収に応じて税率が異なるのです。
 
例えば、家族構成などにより違いますが、年収が約350万円までなら所得税と住民税を足しても税率は15%ほどです。
 
年収が約500万円くらいまでなら20%、年収が約940万円くらいまでで30%になります。
 
さらに個人の税金の計算には「給与所得控除」と言われる「個人に認められている概算経費」や税率を掛けた後に「控除額」がありますので、単純な税率以上に安くなります。
 
まぁ難しいことは置いておいて、個人の役員報酬としてお金を取るほうが、税率が安いので結果的に税金が安くなるということですね!
 
ただし、いつまでも役員報酬にかかる税金が安いというわけではないのです。
 
年収が上がっていって一番高い税率ゾーンになると、住民税と合わせて55%もの税金を取られます。
 
プロ野球選手や芸能人なんかはこのゾーンの人が多いでしょう。
 
バランスが大事なのです。
法人と個人の合計税金額が一番安くなる「税金の底」がある。
 
そこが「適正な役員報酬」ということになります。
 
「じゃあ、事業年度の最後にいくら法人に利益が出たかを見てから役員報酬を決めれば良
いんだよね」というふうに考えてしまいますよね。
 
残念ながら・・・そうはいかないのです。
 
この「役員報酬をいくらにするか」は、期首から3ヵ月以内に決めなければいけないと税法で決められているのです。
 
ということは、残りの9ヵ月間でいくら利益が出るかをしっかり予想しなければいけないということです。
 
「そんなの無理だ」と言ってはいけません。
 
この節税の仕組みの知識と、緻密なシミュレーションがあれば、場合によっては数百万円もの税金が安くなるのです。
 
この節税は別段お金がかかるものではありません。
 
これを機会に今年1年間の計画を立てて、計画的に儲けていく習慣をつけてみてはいかがでしょうか?
 

業務に従事している役員の数を増やして所得を分散する

前項の話で適正な役員報酬を設定することが節税に役立つということはご理解いただけたかと思います。
 
この延長線上で役員報酬に関する節税をもう一つご紹介します。
 
個人の税金は年収が上がれば上がるほど高くなりました。
 
だから役員報酬をムチャに上げると、法人の利益は減って税金が安くなりますが、その代
わりに個人の税金が高くなるので節税としては×です。

 

では役員報酬を1人ではなく、何人かで取ればどうなるでしょうか。
 
つまり、例えば同じ1,000万円の役員報酬を会社が出すとしても、一人で1,000万円ではなく、一人500万円ずつ二人で1,000万円出すということです。
 
所得税や住民税はあくまで「一個人」に対してかかる税金です。
 
ということは、事業を手伝っている家族に役員に入ってもらって、役員報酬を分散すれば税金が安くなるのです。
 
例えば奥さんが事業を手伝ってくれている方は、奥さんに役員に入ってもらいましょう。
 
またはリタイアしているお父さんやお母さんが手伝っておられるならば、役員に入っても
らいましょう。
 
もちろん名前だけ借りて、登記を済ますだけではダメですよ。
 
何らかの形で会社経営に参加してもらえなければ役員報酬を出すことはできません。
 
経理を手伝ってもらう、商品・製品などで出荷するものがあれば製本や箱詰めをしてもらう。
 
このような形での経営に参加することが必須条件です。
 
ではもう少し具体的に金額を使って考えてみましょう。
 
「適正な役員報酬の額を設定して節税する」で考えた場合と同じく、1年間で 3,000 万円
の利益が出ている会社の場合です。
 
先ほどは 1 人で役員報酬を取る場合のシミュレーションでしたが、今回は2人で役員報酬を分けて取るシミュレーションです。
 
所得3,000万円の会社の役員報酬シミュレーション
 
 
一番左は、役員報酬は 2 人とも取らずに会社に3,000万円の利益がそのまま残った場
合です。
 
そこから順番に、一人250万円ずつ二人で500万円取った場合、一人500万円ずつ
二人で1,000万円取った場合と続きます。
 
前項で使ったデータと同じですが、役員報酬を二人で分けたところだけが変わっています。
 
グラフのカーブを見ていただくと先ほどのグラフとの違いがわかりますでしょうか?
 
一人で取るときよりもカーブの角度が急になっています。
 
つまり、一人のときより二人のときのほうがより効果的に節税が出来ているということですね。
 
金額で見てみましょう。
 
一人で役員報酬2500万円を取ると、法人+個人の税金の合計額は813万円でした。
 
同じ2500万円の役員報酬を法人で経費に計上するとしても、一人1,250万円×2
で2,500万円にすれば合計の税額は511万円。
 
その差は約300万円です。
 
この差は大きいですよね。
 
さらに役員報酬を3人でとる場合も見てみましょう。
 
 
 
条件は今までと同じです。
 
役員報酬2500万円を3人で分けて一人あたり833万円の役員報酬を取る場合は、法
人と個人の合計の税額が375万円になります。
 
一人のときが947万円、二人のときで697万円でしたので、さらに税金が安くなっているというのがわかると思います。
 
このように役員報酬を取るとしても、出来る限り多くの役員で分配して取れば節税の効果
は大きくなっていきます。
 


家族で一緒に経営に参加してくれる人がいれば役員になってもらいましょう。
 
さらにこれから会社を立ち上げようとしている方は最初に家族に役員になってもらうのが
良いでしょう。
 
役員になるには登記が必要ですが、登記をしたからといって絶対に役員報酬を出さなけれ
ばいけないというわけではありません。
 
会社を設立するときは何人役員に登記しても同じ値段でできます。
 
しかし後から追加登記しようとすれば数万円の実費がかかります。
 
まずは了解を得て、役員に入っておいてもらうことをお勧めします。
 

 

 

役員報酬以外に会社にするメリットはあるのか

 
会社にすることによる税金のメリットは役員報酬に関するものだけではありません。
 
他にもたくさんあるのです。主なものを箇条書きにしてみました。
 

  • 消費税が2年間免除される
  • 経営者の保険料が経費に出来る
  • 旅費規程を作れば日当を経費に出来る
  • 自宅を社宅にすれば家賃の一部が経費に出来る
  • 経営者の退職金を経費に出来る
  • 赤字を9年間繰り越すことが出来る

どうですか?
 
実際にこれらをフルに活用すれば、今よりもはるかに税金は安くなるのです。
 
詳しい方法は、節税の章のところでご確認ください。
 


 
税金以外にも会社にするメリットはあるのか
 
会社にするメリットは税金以外でもあるのです。
 
例えば…
 

  • 社会的信用の増大
  • 銀行の融資が受けやすくなる
  • 助成金を受けやすくなる
  • いい人材を集めやすくなる

 
他にもありますが、主なものはこんなところでしょうか。
 
特に「社会的信用の増大」というのを理由に法人化される方は非常に多いです。
 
例えば、大手企業と取引する場合などは、法人でないと直接契約はしてくれなかったりします。
 
また、楽天やヤフーショップなどのネットショップモールへ出店したい場合も、法人であることが条件だったりします。
 
世間は個人事業主には冷たいのです・・・。
 
他にも銀行からの融資が受けやすくなりますし、助成金をもらえる可能性も高くなります。
 
こうやって見ていくと、法人にするのが絶対有利って感じです。
次はちゃんとデメリットもご説明しますね。
 
 

 

会社にすることによるデメリットはないのか

 
デメリットもあります。世の中いいことばかりではありません。同じように主なものを列挙してみますね。

  • 交際費が全額経費にならない
  • 設立費用がかかる
  • 赤字の場合でも税金(均等割約7万円)がかかる
  • 事務が煩雑になる

まず、交際費ですが、法人にすると全額経費にはならなくなります。
 
じゃあ、どれくらい経費になるかというと、800万円までは経費になります。
 
全額ではないというだけで、かなりの部分は経費になるのです。
 
それから、デメリットというのかどうか微妙ですが、設立費用がかかります。
 
大体実費だけで22万円くらいかかってきます。
 
あと、赤字でも税金がかかってきます。
 
法人の場合は赤字でも存在している限り、毎年最低7万円の税金がかかってきます。

 

これを、法人住民税といいます。

簡単に言うと、国が取っている場所代みたいなものですね。

最後は事務の煩雑化。
 
会社にしたら、経理などをちゃんとしていかないといけませんので、個人のときと比べると面倒かもしれません。
 
そんなときは、経理の人を雇うか、会計事務所に任せましょう。
 
デメリットを見てどう思いましたか?
 
「何だこんなもんか」と思った方、そう、そんなもんなのです。

10. 仮想通貨で法人を設立するタイミング

ここまで読まれて、みなさん気になることはないですか?「会社を作ると税金対策になるのはわかった。

それで、いくら以上稼いだら個人事業よりも、法人にした方が有利になるの?」

 

はい。ちゃんと今から、実際の数字を見てもらいますので、ご安心ください^^それでは、計算結果を見てください。

計算を簡単にするために、その金額を個人事業で自分ひとりの所得とした場合と、同額を奥さんと2人で半分ずつ給与とした場合とで比べています。

 

所得が400万円の人は個人事業と法人にするのとではどれくらい税金が違うのか?

では、まずは400万円の人の例からスタートです。

 

所得が400万円の人ならどうなるのか?

 【個人事業の場合】

(所得税と住民税は2人分)

所得税30万円7万円
個人住民税36万円8万
個人事業税6万円17万円
合計72万円32万円

     
法人設立の方が、約40万円ほど有利!となります。

 

 

所得が600万円の人ならどうなるのか?

次は600万円の方の場合です。

 【個人事業の場合】【法人の場合】
所得税69万円7万円
個人住民税56万円15万
個人事業税16万円31万円
合計141万円53万円

 
法人設立の方が、約88万円ほど有利!となります。

 

 

所得が800万円の人ならどうなるのか?

次は800万円の方の場合です。まだまだ続きます。

 【個人事業の場合】【法人の場合】
所得税112万円7万円
個人住民税77万円26万
個人事業税26万円47万円
合計215万円80万円

 
法人設立の方が、約135万円ほど有利!となります。

 

 

所得が1,000万円の人ならどうなるのか?

次は1,000万円の方の場合です。飽きてきましたか?

 【個人事業の場合】【法人の場合】
所得税164万円7万円
個人住民税97万円42万
個人事業税36万円63万円
合計297万円112万円

 
法人設立の方が、約185万円ほど有利!となります。

 

 

■所得が1,400万円の人ならどうなるのか?

次は1,400万円の方の場合です。もう少しです。

 【個人事業の場合】【法人の場合】
所得税296万円7万円
個人住民税137万円103万円
個人事業税56万円94万円
合計489万円204万円


法人設立の方が、約285万円ほど有利!となります。
 

 

■所得が2,000万円の人ならどうなるのか?

次は2,000万円の方の場合です。最後です。

 【個人事業の場合】【法人の場合】
所得税506万円7万円
個人住民税197万円214万円
個人事業税86万円149万円
合計789万円370万円


法人設立の方が、約419万円ほど有利!となります。
ようやく結論です。
 
長々と見てきましたが、結局いくらくらい稼げば法人にした方が有利なのか?それぞれの効果額を再度見てみましょう。
 

  • 400万円の場合 → 40万円有利
  • 600万円の場合 → 88万円有利
  • 800万円の場合 → 135万円有利
  • 1,000万円の場合 → 185万円有利
  • 1,400万円の場合 → 285万円有利
  • 2,000万円の場合 → 419万円有利


今回はこの試算以外の節税は考慮せずにこれぐらい差が出るということなので、

一般的には500万円~600万円くらいの利益が出ていれば、法人にしたら税金メリットが充分あると結論付けておきます

11. 仮想通貨に関する税制

国や各省庁、国税当局の仮想通貨に関わる規制は、かなり後手後手の対応となっている感が否めません。

言い方を換えると、仮想通貨については、この枠で囲われた事項しか、その税務に関わる規定がないことを示していることになります。

 

たとえばICOなどの先進的な取引については、現在の税法においてはカバーする規定がない状態です。

 

国や国税当局は、近頃の仮想通貨市場の盛り上がりを受け、これらに関するさまざまなルールを決めてきています。

当然、諸外国の動きなどにも連動して、これらの規定が整備されていく部分が出てくると容易に想像されますので、日本のみでなく、そういった海外の仮想通貨市場、そして仮想通貨の税務の動向も注視していくべきでしょう。

仮想通貨に関する法令・税制のあゆみ

2016年5月
【資金決済法】
仮想通貨の市民権が得られた。法定通貨ではないことが明示され、通貨に準ずるものと規定された。
2017年4月
【改正資金決済法】
仮想通貨取引所が許認可制になった。金融庁管轄となる。
2017年6月消費税が非課税となる
2017年8月
【タックスアンサー】
「ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係」が公表される。ただし、ビットコインのみを明示したため、仮想通貨=ビットコインのみが課税対象との市場の誤解を招いた。
2017年12月1日
【国税庁 個人課税課情報 第4号】
個人の仮想通貨取引の課税対象とその計算方法が公表された。これにより、ビットコインのみならず、アルトコインとの交換やマイニング等の課税関係について明記されることになった。
2017年12月7日
【資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)】
企業会計基準委員会(ASBJ)より公表。これはあくまで会計基準としての法人(企業)の保有する仮想通貨の期末の時価評価について見解が示された。

など、仮想通貨に関する法整備は着々と進んでいます。

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作者:小山 晃弘

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岡本 信吾

岡本 信吾

公認会計士・税理士、仮想通貨投資家。税理士法人小山・ミカタパートナーズ 代表社員。 仮想通貨税務に強い税理士として、個人事業主から法人まで広く税務知識の普及を行っている。

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