投資家や事業家にとって、節税は重要な課題です。もちろん脱税は論外ですが、合法的に税金を抑えられる方法をしっかりと理解し、実践することは長期的に大きな差につながります。

節税にはさまざまなスキームがありますが、基本は経費をどれだけ計上して利益を抑えるか、これに尽きます。そのために不動産を購入することが節税の定番になってきたわけですが、近年になってそのブームが太陽光発電に移り、さらに暗号資産マイニングが注目を集めるようになりました。

しかし、仮想通貨(暗号資産)マイニングの節税については2023年に大きく制度が変わりました。これについて知っておくべきことをまとめました。

節税のポイントは、即時償却

節税のために不動産を購入する人の狙いは、減価償却費です。不動産の建物部分は償却資産といって、毎年少しずつ価値が目減りしていく分を損金として処理できます。しかし、不動産の一部を切り取って売っているわけではないので、キャッシュの流出を伴わない会計上の経費です。このことに魅力を感じて節税のために不動産を購入する人が多いわけですが、これをさらにパワーアップしたような制度があります。

それは、中小企業経営強化税制です。この税制の大きな目玉となっているのが、即時償却です。通常であれば償却資産は法定耐用年数だけの時間を掛けて少しずつ減価償却費を計上していくのですが、即時償却の場合は購入した年に全額を一気に経費計上できます。思わぬ利益が出てしまった年に利益を圧縮できるとして、その対象となっている太陽光発電は大いに注目を集めました。太陽光発電設備を購入して即時償却をすることで節税を実現し、さらに翌年からは売電収入による利益が見込めるというわけです。

仮想通貨マイニングは狙われた?

上記の太陽光発電と同様に、仮想通貨マイニング事業を始めるための経費も即時償却の対象でした。「でした」と過去形にしているのは、当初即時償却が認められていたものが、2023年からは認められなくなったからです。従来の制度であれば、例えばマイニングのために1000万円を揃えた、もしくはマイニング業者に投資をしたとすると、その全額が即時償却の対象でした。太陽光発電よりも大きな利益になる可能性があるとして多くの投資家、事業家からもてはやされ、今後は太陽光発電よりも暗号資産マイニングが節税スキームの主役になるかも?とまで言われました。

しかし、2023年の税制改正によって暗号資産マイニングの機器については、マイニング事業を主な事業とする場合に限られ、また外部の事業者にマシンの管理などを委託する形だと認められないこととなりました。明らかな仮想通貨マイニング節税封じともいえるもので、「節税しながら大きな利益」というモデルは過去のものとなってしまいました。なお、自社内でマイニング機器を運用する場合は、マイニングマシンをパソコンとして経費処理することは可能です。その場合、法定耐用年数は4年なので、4年間にわたって減価償却費を計上できます。


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