2024年も日本の夏は記録的な猛暑となり、エアコンなしで過ごせない日が多くありました。しかしこれは日本だけの現象ではなく、海外にも記録的な猛暑となった国や地域はたくさんあります。日本は電力の需給がそれほどひっ迫していないのであまり問題になりませんが、電力が不足しがちの国では仮想通貨(暗号資産)のマイニングによる電力の大量消費が電力のひっ迫を招くとして問題視されることがあります。

今回は、仮想通貨のマイニングビジネスに対して罰則を設けたイランの事例を紹介しましょう。

命に危険が及ぶ猛暑が続くイラン

中東のイランでは近年、記録的な猛暑が続いています。日本から見ると砂漠が多く暑そうな国というイメージがありますが、イランが近年のような猛暑に見舞われるようになったのは最近のことです。古代文明が栄えた地域でもあり、本来は人にとって過ごしやすい気候なのです。

そんなイランでは2024年にも気温が45度を超えるような熱波が襲来し、人命にかかわる事態が続いています。40度に近づいただけでも殺人的といわれる暑さなのに、イランではそれを5度も上回る45度の熱波がやってくるというのですから、いかにその事態が深刻であるかが分かります。

その殺人的な熱波から身を守るにはエアコンが必要になるわけですが、そのエアコンをフル稼働するためにイランでは電力のひっ迫が続いています。産油国だけに石油資源に困ることはないのですが、それを電力に変換する火力発電のインフラが日本ほど整っていないこともあって、夏になると電力不足が深刻化するといったことが恒例のようになっています。

そんな国で大量の電力を消費する仮想通貨(暗号資産)のマイニングをすると、どうなるか。想像に難くないと思います。

違法な暗号資産マイニングに対して褒賞金

電力がひっ迫しがちなイランですが、仮想通貨のマイニングビジネスは存在します。仮想通貨は国境のない通貨であり、西側諸国から経済制裁を受けているイランにとって仮想通貨ビジネスは外貨稼ぎにも好都合であるため、国としても放置してきた部分がありました。

しかし、国の想定を超えるような熱波に襲われ、エアコンが生命線となってくると話は別です。イラン当局は仮想通貨マイニングの摘発に力を入れるようになり、「密告」に報奨金を出すと発表したわけです。

確かに、違法なマイニングビジネスによって電力の需給がひっ迫し、それによって熱中症で倒れる人、亡くなる人が出てきてしまっては本末転倒です。すでに摘発の事例もあるため、一時はブームとなったマイニングだけに今後多くの摘発事例が出てくるかもしれません。

しかしながら、仮想通貨マイニングはイランのような立ち位置の国にとっては外貨獲得手段(違法なものも含めて)として有効なはずです。北朝鮮ですらマイニングで外貨を稼いでいるのですから。夏季だけマイニングの出力を下げるなど、今後はうまく共存していく道を模索するかもしれません。


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