仮想通貨市場
今週の仮想通貨市場時価総額は、週末(19日、20日)に目立った動きがあったものの、週明け21日からは1176億ドル(週安値)と1211億ドルの狭いレンジで推移しています。
【第1図:仮想通貨市場時価総額】
出所:coinmarketcapより作成
今週の注目ニュース
国際決済銀行:PoWに否定的なレポートを発行
世界中の「中央銀行の銀行」とも称される国際決済銀行(BIS)は21日、仮想通貨のコンセンサスアルゴリズム「Proof-of-Work(PoW)」に否定的なレポートを発行し、ビットコインなどの仮想通貨が存続するには「PoWとの決別」が唯一の根本的な改善策だと説きました。
レポートでは、PoWには主に2つの大きな経済的欠点があるとしています。
1つ目は、ブロックチェーンを改ざんすることの収益性です。
2008年にサトシ・ナカモトの名の下で発表された論文では、ネットワーク上の特定のマイナーが51%以上のハッシュレートを掌握しない限り、ブロックチェーンは改ざんされないという運営上の確率論的な不可逆性が記されています。
これに対しレポートでは、PoWのブロックチェーンを改ざんすることには、「誠実なマイナーより多くの利益を得られる」という大きな経済的インセンティブがあることを指摘しています。
2つ目は、マイナーが取引手数料だけでは十分な利益を上げられなくなる可能性があることです。
ブロック報酬(新規発行)がなくなり、マイナーの報酬が取引手数料だけになると、ユーザーは他の取引の手数料にフリーライド(タダ乗り)することが懸念され、そうなればマイナーの報酬は減額します。
マイナーの経済的インセンティブが低下すれば取引の承認スピードおよび流動性の低下にも繋がると考えられます。
こうした課題を解決するために、現在はPoS(Proof-of-Stake)アルゴリズムやライトニングネットワークといったセカンドレイヤーソリューションがありますが、レポートではこれらのソリューションにも問題があるとしています。
PoSでは、1つのネットワーク上に複数のチェーンが生まれた際、マイナーがどれを真のチェーンとするかの明確な判断基準がなく、ライトニング・ネットワークにはスケーラビリティーとネットワークの分散性に課題があるとしています。
全体的に現状存在するテクノロジーの限界を指摘していますが、結論では分散型テクノロジーの進むべき今後の方向や有用性についても言及しています。
ビットコインや多くの仮想通貨が誕生した背景には、「法定通貨や既存金融システムを代替する」といった理念がありますが、その理念を既存の通貨・金融システムでいかに「補完」、「改良」できるかにシフトするべきとしています。
CBOEがビットコインETF上場申請を撤回:市場は反応薄
米証券取引委員会(SEC)は24日、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が昨年6月に申請していたVanEck社・SolideX社のビットコイン上場投資信託(ETF)上場の申請を撤回したことを発表しました。
SECの発表した文書をみると、CBOEからの申請撤回は22日時点でされていたことがわかりますが、その理由についての明記はありませんでした。
しかし、VanEck社CEOのJan van Eck氏はCNBCのETF Edgeでのインタビューで「米政府機関の一部閉鎖の影響でSECとのカストディーや市場操作対策についてのディスカッションが滞っている」と発言。
一時的に申請を取り下げると共に政府機関の閉鎖が解けたら再度申請すると話しました。
VanEck社・SolidX社の手がけるビットコインETFは、現物拠出型のETFとなり市場でも上場を期待する声が多く確認されていましたが、市場への影響は限定的でした。
というのも、SECで仮想通貨推進派のへスター・ピアース氏が昨年12月の段階でビットコインETFの承認には相応の時間を要すると発言していたため、市場は何らかのネガティブな動きが起きることを織り込んでいた可能性が指摘されます。
また、承認可否の最終判断日となる2月27日までにSECから何の発表もなかった場合、自動的に承認という形になってしまうため、それまでにSECが否決判断を出す可能性もありました。
逆に、SECが政府機関の一部閉鎖の影響を受けるなか、十分な協議もしないまま上場となれば、ローンチ後にSECから運営体制を批判されることも考えられるので、自主的に申請を取り下げた方が対外的にもクリーンな運営を志していることを示せます。
さらに、政府機関の一部閉鎖が解けた後にもう一度申請を出せば、新たに最大240日の判断期間が設けられます。
今年6月から9月の間には金融活動作業部会(FATF)主導で国際的な仮想通貨市場の規制調整や連携が進む見通しです。
ビットコインETF承認に必要な規制基準の明確化なども期待され、このタイミングで時間的猶予を与えられるのはVanEck社・SolidX社にとってアドバンテージになるでしょう。
サマリー
ビットコインETFの他に注目されていたインターコンチネンタル取引所傘下のBakktも、24日がローンチ予定日でしたが、現時点で動きは確認されていません。
やはり、米商品先物取引委員会(CFCT)も政府機関の一部閉鎖の影響を受け審査のプロセスが滞っていると考えられます。
ビットコインETFもBakktも大きな期待がされていた分、市場の反応の薄さに驚かれた方も少なくなかったと思われます。
米政府機関再開のめどは依然たっておらず、この先も先行きの読めないビットコインETFとBakktの承認を巡る動向ですが、決して可能性がゼロになった訳ではないので、過剰に失望する必要はないでしょう。
テクニカル分析
ビットコイン(BTC)の対ドル相場は、週明け21日よりジリ上げ相場となっていますが、足もと13日移動平均線付近で上値を抑えられています(第2図)。
23日には、21日移動平均線が55日移動平均線を割り込みデッドクロスを示現しています。
【第2図:BTC対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのBTC/USDチャートより作成
リップル(XRP)の対ドル相場は、21日に21日移動平均線が55日移動平均線を割り込みデッドクロスを示現しています(第3図)。
相場は週明け21日より0.32ドル台前半で推移しおおむね横ばいとなっています。
【第3図:XRP対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのXRP/USDチャートより作成
イーサリアム(ETH)の対ドル相場は、13日移動平均線と21日移動平均線が、それぞれ19日と23日に55日移動平均線を割り込みデッドクロスを示現しています(第4図)。
相場は20日に55日移動平均線を割り込んだ後、118ドル周辺で底堅く推移しています。
【第4図:ETH対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのETH/USDチャートより作成
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