2018年8月31日、LINE株式会社は「LINE Token Economy」の構想を公式ホームページで発表しました。独自開発したブロックチェーンである「LINK Chain」をベースとしたエコシステムは、複数のdApps(分散型アプリケーション)と2種類のトークンによって構成されており、ヴァーチャル世界の新たな経済圏の誕生を感じさせてくれます。
今回の記事では、プロジェクトの狙いや、そこから見えてくる仮想通貨の新たな役割を紹介していきたいと思います。
「LINE Token Economy」の仕組みと目的
「LINE Token Economy」では、海外向けの「LINK」と国内向けの「LINK Point」の2種類のトークンが発行されています。海外向けの「LINK」は市場での取引価格に基づいてレートが変動しますが、「LINK Point」は日本円とのペッグ通貨となっており、1トークンあたり500LINEポイント(1ポイント=1円)で交換することができます。トークンはエコシステム内のdAppsを通して、ユーザーの評価やコミュニティに対する貢献度に応じて、報酬として支払われる仕組みです。
たとえば、現在稼働している「Wizball」というdAppsは、ユーザーがグルメやITなどさまざまな分野の質問を投稿し、ほかのユーザーがそれに回答することで、疑問を解決できるというサービスです。同種のサービスでは、「Yahoo!知恵袋」や「食べログ」などがありますが、決定的な違いは報酬としてトークンが支払われる点にあります。この仕組みの背景には、テクノロジーの発達によって誰もがコンテンツを作る時代になったが、それに対する正当な報酬が支払われていないという、LINE側の思いがあります。
「Wizball」には2019年2月時点で、6万件近くの質問が投稿されており、それに対して47万件以上の回答が寄せられています。また、貢献したユーザーに対しての報酬も実際にトークンで支払われており、その金額はすでに800万円以上に登っています。
プロジェクトのもう1つの狙いは「決済市場のシェア獲得」
LINEのプロジェクトを詳しく調べていくと、その先には「決済市場のシェア獲得」というもう1つの狙いが見えてきます。先ほども解説しましたが、報酬で支払われる国内向けトークンはLINEポイントとの交換になります。LINEポイントは自社のモバイル決済サービスである「LINE Pay」を使って、加盟店での支払いなどに利用できます。こうしたモバイル端末を使った決済サービスは、大規模な還元施策で話題となったソフトバンクの「PayPay」や、2019年4月から稼働予定であるKDDIの「au PAY」など、大手企業各社が注力している分野の1つです。
クレジットカード決済が主流のアメリカや、すでにモバイル端末での決済が普及している中国などと比較すると、日本はキャッシュレス化において圧倒的に出遅れています。しかし、企業側の視点で考えると、国内の決済市場を獲得できるチャンスです。さらに、2019年は日本政府による消費税増税の補填策として、キャッシュレス支払いに対する還元施策も予定されており、企業を後押しする追い風が吹いています。
こうした状況を踏まえると、今年は日本国内でのキャッシュレス化が大幅に進むことが予想でき、それと同時に決済市場を狙う企業にとっても重要な1年となるはずです。「LINE Pay」は現実世界のリアルな経済圏と、仮想世界のヴァーチャルな経済圏を結び付ける役割を担っています。dAppsユーザーには「LINE Pay」を使うインセンティブがあり、トークンエコノミーが成長すればするほど、結果としてLINEの決済市場におけるシェアの獲得にも繋がる、好循環が作り出されているのです。
仮想通貨はヴァーチャル世界における個人の「価値」を示す指標となる
現在、私たちは日本銀行が発行した硬貨や紙幣を使って、さまざまなモノやサービスに対して、その価値に見合った支払いを行っています。しかし、モノやサービスそのものに価値はあっても、硬貨や紙幣は国がその価値を保証しているに過ぎず、本来価値はありません。
いっぽうで、仮想通貨はどうでしょうか。仮想通貨はコンピュータープログラムであり、私たちにはその姿形も見えません。価格が下落し、価値がほとんどなくなった仮想通貨は、「電子クズ」と揶揄(やゆ)されることもあります。つまり、硬貨や紙幣と同じく仮想通貨そのものには、本来価値はないのです。
日本円のような法定通貨の本質的な役割は、対象となるモノやサービスにどれくらいの価値があるのかを示すことであり、「現実世界」ではその指標として使われています。これを仮想通貨に置き換えて考えると、「仮想世界」での価値の指標となることが、仮想通貨が持つ本来の役割です。
多少価格が高くても、CMなどで名前の聞いたことのある、大手企業の商品を購入した経験はないでしょうか。私たちは知らないうちに、企業が培ってきた評価や信頼を「価値」と捉え、お金を払っています。しかし、現実世界においては、まったく知らない個人の「価値」を見極めることは、長い付き合いでもない限り非常に難しいでしょう。
これに対して、仮想世界では個人の「価値」がネットワーク上で可視化されています。たとえば、「Yahoo!オークション」では出品者や落札者の評価が蓄積されており、誰もが一目でわかります。「LINE Token Economy」では、こうした個人の評価を、トークンを使うことでダイレクトに「価値」へと変換しているのです。
仮想世界で価値化できるものは、個人の評価だけにとどまらないでしょう。将来的には、感動、思いやり、悲しみ、喜び、そのすべてが価値化できるかもしれません。そして、仮想通貨は仮想世界における「価値」への橋渡しを行う、重要な役割を担っていくはずです。
みなさんも、今後の動向にぜひ注目してみてください。
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