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S&P500 月例レポート ― ハリケーン、地震、政局と混乱続くも最高値更新 (1) ―

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●S&P500:2017年9月:先進国中心に世界株式市場は概ね好調推移

 母なる自然がまたもやその力を示し、人間がどれだけ優位性を示そうとも(愚かな人間ども)、世の中を支配しているのは自然なのだということを改めて思い知らされた1ヵ月でした。気象予報では今年のハリケーンシーズンは慌ただしくなると予想されていましたが、自然の脅威は予想をはるかに上回っていました。

 米国に上陸したハリケーン「ハービー(5段階で上から2番目のカテゴリー4)」はヒューストンを含むテキサス州各地で猛威を振るい、製油所は閉鎖され、地域の被害により生産設備やパイプラインが停止した影響で、国内のガソリン価格は2年半ぶりの高値に急騰しました。次に本土を襲来したハリケーン「イルマ」はカテゴリー5まで発達し、フロリダ州では停電の被害が740万人に及びました(被害総額は数十億ドル)。ハリケーン「マリア」は米自治領プエルトリコを直撃して甚大な被害をもたらし(一時はカテゴリー5まで発達しましたが、上陸時はカテゴリー4)、全土が停電しました。

 現地調査が行われ、復興計画(建て直し、あるいは今後の被害に備えた改良を伴う建て直し)をめぐる議論が進むにつれて、ハリケーンによる被害総額が徐々に明らかになってきました。「ハービー」の被害総額は700億ドルから最大で1900億ドル(ほとんどがヒューストン地域)、「イルマ」の被害総額は750億~1120億ドル、「マリア」の被害総額は最低でも850億ドル以上(ほとんどがプエルトリコで、現地では今も電力が復旧していません)と試算されています。

 ハリケーンに関連してホームセンター銘柄の株価が上昇し、Home Depot(HD)は9月に9.1%、Lowe’s(LOW)は8.2%上昇しました。一方で再保険会社は下落し、Everest Re Group(RE)は9.5%下落しました。また、バイオテクノロジー会社、Exelixis(EXEL)も17.1%下落しました。

 地震に関しては、メキシコでマグニチュード8.1の地震(メキシコでは少なくとも過去100年間で最大規模)が発生し、死者は300人以上に上りました。

 世の中を揺るがした人為的な出来事もありました。市場でほとんど揺れは感じられませんでしたが(株価はわずかに上振れ)、税制改革に向けた第一歩となる改革案が発表されました。現行の法人税率は35%で、現在S&P500指数構成企業に適用されている実効税率は平均25.6%です(大きなばらつきがありますが)。共和党が発表した改革案の概要(9ページに上る)では、所得税率の引き下げが示されました(法人税率は現行の35%から20%に、個人所得税は10%~39.6%の範囲で7段階に分かれている現行の税率区分から、12%、25%、35%の3段階に)。個人に適用されていた税控除はほとんどが廃止され、その代わりに代替ミニマム税と相続税も廃止されます。

 しかし、現在の暫定予算が12月に期限を迎えるため、議会は税制改革をまとめる前に予算を決議しなければなりません。そうすれば、上院は通常の60票ではなく、財政調整法を活用して51票で税制改革を通過させることが可能になります(上院の定数は100で、賛否同数の場合は副大統領が投票)。法人税率が20%になれば(海外からの利益還流やその他の細かい改革は除く)、
S&P500指数構成企業の利益は6%増加する可能性があります。

 北朝鮮をめぐっては、国連は北朝鮮への追加制裁決議を採択しましたが、中国とロシアの支持を取り付けるために米国が譲歩し、制裁内容はやや緩められた形となりました。その翌週、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を再び実施しました。これを受けてトランプ大統領は就任後初の国連演説で北朝鮮を激しく非難し、北朝鮮が米国や他の同盟国を脅かすならば、米国は北朝鮮を「完全に破壊する」と発言するなど、トランプ大統領と北朝鮮の最高指導者である金正恩氏との直接的な非難合戦が繰り広げられています。トランプ大統領はさらに、中国が北朝鮮との金融取引の制限に消極的なことから、北朝鮮と取引のある金融機関に対する追加制裁を決めました。

 ドイツで9月24日に行われた総選挙では、メルケル首相率いる中道右派政党が戦後最低となる得票率の33%で第一党となり、極右政党で反移民を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が13%を獲得しました。今回の勝利によりメルケル首相の4期目(1期4年)は確実と思われますが、連立交渉次第です。

 英国のメイ首相は、EU離脱に伴う数百億ポンドの支払いを受け入れるとの見方を示しましたが、労働許可、貿易、関税といった大きな問題についての交渉は続いています。

 日本では安倍首相が衆議院を解散し、10月22日に選挙が行われる予定です。このところの北朝鮮との対立で安倍首相の支持率が高まっており、支持率をさらに回復させることが狙いとみられています。

 市場を揺るがすほどではありませんでしたが、S&P Global Ratingsは香港の信用格付けを最上位のAAAから、米国と同じAAプラス(ただし、米国の14州はAAA格付け)に引き下げました。これにより、AAAの格付けを持つ国はオーストラリア、カナダ、デンマーク、ドイツ、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、シンガポール、スウェーデン、スイスの11ヵ国のみとなりました。S&P500指数構成銘柄のうち、AAA格付けを持つのはJohnson & Johnson(JNJ)とMicrosoft(MSFT)の2社しかありません。

 さらに小さな出来事としては、中国は通貨規制の強化を目的に(為替操作とは全く異なります)、ビットコイン取引所の閉鎖に向けて動き出しました。

●9月の重要ポイントは以下の通りです:

 * S&P500指数は今年で39回目となる終値での最高値更新で9月を終えました。39回のうち10回が金曜日でした。1928年以降、四半期の最終日に最高値を更新したのは13回目で、第3四半期最終日の高値更新は4回目です。

 * 9月の月間上昇率は1.93%(配当込みのトータルリターンは2.06%)で、6ヵ月連続のプラスとなりました(2016年11月からの11回のうち月間騰落率がプラスとなったのは10回目です。2017年3月だけが0.4%下落しましたが、配当込みのトータルリターンで見ると0.12%のプラスで、11回中11回がプラスとなります)。月内の最高値更新は9回(8月は1回)で、第3四半期の上昇率は3.96%(トータルリターンは4.48%)、年初来の上昇率は12.53%(同14.24%)、過去1年間の上昇率は16.19%(同18.61%)となっています。

 * 11セクターのうち8セクターで騰落率がプラスとなりました(8月は5セクター)。エネルギーセクターは9月に大幅に反発し、9.77%上昇という最も高い騰落率となりましたが、年初来では8.62%下落しており、引き続き最低のパフォーマンスとなっています。金利の上昇とリスクオンの動きを受け、公益セクターは9月に3.00%下落して月間騰落率が最低となりましたが、年初来では8.97%のプラスを維持しています。

 * S&P500指数は昨年11月8日の大統領選以降で17.75%上昇しており(トータルリターンは19.93%)、終値ベースで最高値を47回更新しています(年初来では39回、2016年は18回、2015年は10回、2014年は52回)。

 * 世界の株式市場を総合すると、9月は好調に推移し、11ヵ月連続で騰落率はプラスとなりました。ただし、先進国市場は概ね上昇しましたが、新興国市場は半分の市場で下落しました。米国市場は平均を上回るパフォーマンスでした。9月のグローバル市場は1.97%上昇し、8月の0.17%上昇を上回るパフォーマンスとなりました。世界47市場のうち31市場が上昇し、8月の30市場を上回りました。

 * S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、S&P500指数構成銘柄について9月に2件の入れ替えを行い、事務用品を販売するStaplesが上場廃止に伴って指数から除外されました(将来的に企業分割される可能性があり、過去の例に倣うと、いずれIPOを通じて再上場される可能性があります)。

 * 過去の実績に基づくと、10月の騰落率は57.3%の確率でプラスとなり、上昇した月の平均上昇率は4.20%、下落した月の平均下落率は4.66%、全体を平均すると平均0.47%の上昇となっています。10月は1987年にブラックマンデーが起きた月でもあり、今年は30周年という「記念」の年です。

 * 今後の連邦公開市場委員会(FOMC)スケジュール:2017年10月31日-11月1日、12月12日-13日*、2018年1月30日-31日、3月20日-21日*、5月1日-2日、6月12日-13日*、7月31日-8月1日、9月25日-26日*、11月7日-8日、12月18日-19日*(*は記者会見が行われる)。

※「ハリケーン、地震、政局と混乱続くも最高値更新 (2) 」へ続く。

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