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新経済連盟ブロックチェーン・暗号資産担当の坂本瑛子氏にインタビュー

筆者: コイン東京
2019/09/12
2019/09/12

この度は新経済連盟ブロックチェーン・暗号資産担当の坂本瑛子氏にインタビューを行いました。7/30に金融庁ほか関係省庁に提出した「ブロックチェーンと暗号資産に関する要望」の背景、そして今後の展望などについてお話を伺いました。

 

2019年7月30日の提案内容

【ブロックチェーンに関する要望】世界のトップランナーを目指すべく以下を提案

  1. 1.政府は、各行政分野でのブロックチェーン活用の検討を
  2. 2.官民協議会を設置し、国内外の最新動向の共有、政府・自治体・民間のユースケース及び社会実装に向けた課題を洗い出すべき
  3. 3.ブロックチェーンが活用される社会にふさわしい法規制・監督のあり方や、民間発ビジネス創出の後押しをするために必要な支援、関係省庁横断的な機能の設置の検討を

【暗号資産新法に関する要望】

今後府令やガイドライン等の詳細を定める際は、セキュリティトークンやカストディ、ステーブルコインについて、現状の課題を十分に踏まえ、イノベーションを阻害しない規制の内容とすべき

詳しくはこちら

―コイン東京
よろしくお願いいたします。2019年7月30日に、金融庁などに「ブロックチェーンと暗号資産に関する要望」を提案されましたが、新経済連盟としてブロックチェーンにはいつ頃から注目していたのでしょうか。

―坂本氏
新経済連盟としては、暗号資産新法の成立を見据えて、まずは今年2月に「暗号資産の新たな規制に関する要望」を行いました。その後、関連する会員企業10社ほどでワーキンググループを立ち上げ、活動してきました。

議論を深めていくなかで気づいたのは、暗号資産だけを既存の金融制度のなかで議論していては不十分で、中央管理型から分散型への移行というある種大きな構造変化のなかで、ブロックチェーンの活用に向けて制度はどうあるべきか、具体的な施策を提案する必要があると感じ、今回の提言に至りました。

―コイン東京
新経済連盟さんは「世界のトップランナーになる」と掲げていますが、どのような意図がありますか。

―坂本氏
日本を含めて、世界ではまだブロックチェーンの社会実装に向けた議論が十分に行われていません。日本はインターネットで乗り遅れ、いまや時価総額ランキングでも日本企業は上位から消失しました。次はブロックチェーンが世界を変えていくかもしれません。ブロックチェーンをいかに活用できるかが、今後企業の競争力に影響を及ぼすかもしれず、ぜひ日本企業に先頭に立ってほしいと思っています。

―コイン東京
ブロックチェーンは次の大きな産業になるということですね。坂本さんはブロックチェーンの有用性をどんなところに感じますか。

―坂本氏
低コスト、改ざんできない、スマートコントラクト、分散型台帳といったブロックチェーンの特徴は、どんな業種や行政においても活用できる可能性がありますね。ユースケースとしても、少額決済、地域通貨、権利(土地など)、省庁間のデータ連携、サプライチェーン管理、シェアリングエコノミー、M2Mの取引、音楽の権利管理など、色々考えられます。影響を及ぼす市場規模は、グローバルで300兆円とも予測されています。

しかし、現時点でブロックチェーンは、誰でも開発できて使いこなせるほど簡単ではなく、それゆえ暗号資産や一部領域以外は実際のビジネスが出てきにくい状況です。だからといって各企業が散らばって活動している状況のままでは、技術的な問題が解決されたときには日本として出遅れてしまう。官民協議会を設置し、国内外の最新動向の共有、ユースケースや課題を洗い出し、ビジネス創出の後押しをする支援や法制度のあり方を議論していく必要があると思います。

―コイン東京
たしかにブロックチェーンの発展のためには、関係省庁に対等に提案できる組織が必要ですね。

―坂本氏
ブロックチェーンは現在の制度設計の際に前提とされていないので、既存制度がレガシーとなって発展の足かせになってしまう可能性があります。例えば、有価証券の原則は紙ベースで、取引所や振替機関といった中央管理者の存在を前提に取引されていますが、ブロックチェーンは分散型で、デジタルネイティブで、ボーダレスですよね。性質が真逆です。

変革が遅れてしまうと、新興国のようにゼロベースで法整備ができるところに追い抜かれてしまうかもしれません。

―コイン東京
ありがとうございます。暗号資産に関する要望では、STO、カストディ、ステーブルコインなどに焦点をあてていますね。

―坂本氏
はい。STOは既存の金融商品を、低コストかつ技術的に安全に発行することを目的とした新たな資金調達方法として、世界的に注目されています。STOや投資型ICOといったセキュリティトークンは、今回の暗号資産新法で金融商品取引法の適用対象となりましたが、投資家の属性(年収や資産など)に応じた緩和制度がないことや、株式投資型クラウドファンディングの上限額などが足かせになると感じています。

カストディについても、カストディ事業者やコールドウォレットの定義によっては事業者にとって大きな負担になりかねません。

ステーブルコインは、最近Libraでも注目されていますね。ボラティリティの高い通常の暗号資産と異なり、何らかの担保によって価値を安定させるので決済用として普及しやすいかもしれません。しかし、様々なステーブルコインの類型があるなかで法的な位置づけは明確でなく、ビジネスの予見可能性の観点からも、「通貨建資産」なのか否か、法的にどう整理すべきか明確にする必要があると思います。

―コイン東京
ありがとうございます。今回出した提案は、金融庁にどのように処理されていくのでしょうか。例えば判決日・・・みたいなものはあるのですか。

―坂本氏
判決日・・・はありませんが、今後制定される内閣府令やガイドライン、政府の関連戦略に入れこんでいけるよう、金融庁はじめ関係各所と対話をしています。

―コイン東京
最後の質問になりますが、今後の新経済連盟さんのビジョンを教えていただければ幸いです。

―坂本氏
提言を提出したことはあくまでもスタートなので、提案をして終わりにせず、ニューエコノミーを推進する経済団体として、政府に実行してもらえるようなロビー活動を粘り強く行っていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします!

 

 

コイン東京

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