仮想通貨時代の象徴の一つである、資金調達の新たな形態として議論となっているのは、新規仮想通貨公開(ICO)である。

ICOとは、ごく簡単に言えば、企業が独自の暗号トークンを発行して資金を調達することを指す。

2017年のICOによる調達額は60億ドルを超え、ブロックチェーンスタートアップがICOで調達した資金は、エクイティファイナンスによる調達額の5倍に達した。

Elementusが作成したコンテンツは、2014年から2017年にかけてのICO活動の急増ぶりをビジュアルで表現している。

 

しかし、2018年には、本稿に掲載したチャートが示すとおり、ICO活動は鈍化してきたようにみえる。

これはicodata.ioのデータをLONGHASHが、ICOの開始日に基づいて各月に振り分けてチャート化したものだが、このデータによると、ICOによる調達額は2月から4月までの間にほぼ13億ドルから5億6100万ドルに落ち込み、その後、5月に8億6800万ドルまで持ち直している。

 

この落ち込みの原因は何だろうか。ひとつの単純な答えとしては、4月にイーサ(Ether)の価格が比較的低水準であったこと、そしてICOを行う多くのスタートアップが自社のトークンと引き換えにイーサを受け取っていることがあげられる。

「仮想通貨の時価総額が全般的に落ち込んだことが、ICOの鈍化をもたらしている最大の要因の1つと考えられます。それが発行済みの仮想通貨についても将来のICOについても、実現(および未実現)市場リターンに影響を与えているのです」と、金融サービスコンサルティング会社、Kapronasiaの創業者であるゼノン・カプロン氏は説明している。

 

このチャートには、よく知られたいくつかの資金調達活動が反映されていない。例えば、Telegramによるものだ。メッセージングサービスを提供するこの会社は、個人投資家から17億ドルを調達した後、予定していたパブリックICOの実施を見送ることにした。

Telegramは単に、トークンのクラウドセールに手間をかけるまでもないと判断したのかもしれないが、このような動きはこの会社だけにとどまらない。

カプロン氏は、「多くのICOもまた、プレセールやプライベートセールで資金調達を済ませ、パブリックICOの実施を見送っています」と説明し、「そうすれば、(非適格)投資家への対処やパブリックICOの仕組み作りなど、ICOにおいて取り組む必要があると考えられるさまざまな難題が片付きます」としている。

 

世界中の規制当局が一斉にICO活動の規制に動く中で、潜在的な悩みの種は増している。ICOがなぜ有効で民主的な資金調達形態と考えられるのか、そして、なぜ実のところブロックチェーン経済の中核であるのかについては肯定論がある。

しかし、詐欺まがいのICOが後を絶たないことも事実だ。The Wall Street Journalが1500件近くのICOを調査したところ、「盗用、個人情報の詐取、あり得ないようなリターンの保証が横行」していることがわかった。

米国の証券取引委員会(SEC)は、投資家をいかに簡単にだませるかを示すことだけを目的に、自ら偽のICOまで実施しているのだ。

昨年秋、中国はICOを全面的に禁止した。一般市民の貯蓄が詐欺の被害に遭いかねないという懸念がその背景のひとつだ。米国でも、ICOの過熱に歯止めをかけようとする兆しがみられる。

今年2月末のThe New York Timesの報道によると、SECはICOに関わりの深い多数の関係者や企業に召喚状を送っている。

また、ICOの聖域という評判を得てきたシンガポールでも、ICOやトークン、その中でも特に証券のように取引されるものに対して規制を強化した。

 

カプロン氏は、こうした規制の動きがICOに萎縮効果をもたらしていると指摘し、「2018年はICOに対する監視強化の始まりの年となりました。いまや世界中の規制当局が、いかにICOを規制し監督すべきかを検討しています」と、述べている。

「現在、ICOを実施した何人かの創業者が法的問題に直面しており、懲役が課される可能性もあります。そうした中、発表されているいくつかの規制を考慮し、少なくとも可能な限り規制への適合性を確保しようと、計画していたICOを手控える動きが出ています」

 

上記のチャートにおいて、資金調達活動の全体像を示すものではないという点には注意すべきであるが、LONGHASHが作成したチャートにも、調達額が100万ドルに満たないICOは含まれていない。

Elementusの共同創業者であるマックス・ガルカ氏も、このデータにはいずれも2月または3月に1億ドルを超える資金を調達した、Huobi、Bankera、tZero、Fusion、Andraのセールが含まれていないと指摘している。

このチャートには、最近行われたEOSによる資金調達も含まれていない。

「ICOの一覧を掲載している大部分のサイトでは、データ収集の遅れがよく目に付きます」と、ガルカ氏は述べている。「直近の数カ月については過少に計上されるのが普通です」

とはいえ、これらチャートの全般的なトレンドは見た目のとおりで、「実際にそれほど落ち込んだのなら、規制がその原因であると考えるのが当然です」と、ガルカ氏は付け加えている。

英語記事:Are ICOs Shrinking?

 

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