今月14日にビットコイン(BTC)マイニングのディフィカルティー(採掘難度)が調整され、5.61T(テラ)から5.88Tに引き上げとなりました。
ネットワーク全体のハッシュレートが上昇した結果の上方調整となりましたが、マイニングの損益分岐点も同時に引き上げとなり、相場も不振なことから、14日以降はハッシュレートが下落基調となっていました。
これにより、ハッシュレートのディフィカルティーからの乖離率(※1)は下方に広がり、危険シグナルとなる-5%を一時割り込みました(第1図)。
乖離率が-5%を割り込んだ状態が継続すると、ディフィカルティーの下方調整を持ってしてもマイナーが十分な利益を確保できなくなっていることが指摘され、それらのマイナーがその時点までに採掘したBTCを次々と売り、相場を急落させるといったリスクが生じます。
しかし幸いなことに、BTCの相場が19日に一時的に上昇したタイミングでハッシュレートも反発し、現在は乖離率も-5%を上回っています。
【第1図:ハッシュレート(14日移動平均)のディフィカルティーからの乖離率】
出所:blockchain.comより作成
※1 ハッシュレートの14日移動平均とディフィカルティーを、2016年12月31日時点を100とし指数化。
それらのデータを基にハッシュレート(HR)のディフィカルティー(Diff.)からの乖離率を算出しています((HR -Diff.)/Diff.)。
752個のサンプルの内、乖離率が-5%<n<5%である日が76%あることから、同水準ではディフィカルティーの調整が、ハッシュレートの推移に対し正常に機能していると定義しています。
また、BitcoinWisdomによると、1月23日時点での次回(28日)推定調整後ディフィカルティーは、現在の5.88Tから5.66Tに引き下げ(-3.83%)となる見通しです(第2図)(※2)。
このため、次回ディフィカルティー調整後は損益分岐点も引き下げとなり、ハッシュレートがさらに上昇することも予想されます。
※2あくまで現時点での推定値であり、実際に調整が行われるまでのハッシュレートの推移である程度変動すると考えられます。
【第2図:ビットコインネットワークのハッシュレート(7日移動平均)&ディフィカルティーチャート(点線部は1月23日時点での推定値)】
出所:blockchain.comとBitcoinWisdomより作成
しかし、注意しなければいけないのは、これはあくまでハッシュレートやディフィカルティーの推移といったネットワーク動向のみの分析となります。
昨年11月には、新型マイニング機材の台頭と市場の混乱加速が重なり、BTC相場がそれまでの損益分岐点を割り込み暴落しました。
その際、ハッシュレートも勢いよく下落するといった現象も確認されたため、現在の相場と損益分岐点がどこにあるか把握することは大変重要となります(第1表)。
現在の5.88TディフィカルティーでのAntminer S9とS15の推定損益分岐点は、0.05usd/kWhで運用した場合、それぞれ2700ドルと1700ドルとなります。
本日のBTCの対ドル相場はおよそ3580ドル周辺で推移しているため、0.05usd/kWhではS9、S15の両方で利益を上げることができそうです。
一方、電気代が0.1usd/kWhの場合、S15はギリギリ利益を上げられる3300ドルの損益分岐点となりますが、S9の損益分岐点は5300ドルと現在のBTC価格を大幅に上回ってしまいます。
そして、電気代が0.15usd/kWh以上になると、S9でもS15でも利益を上げられなくなります。
この構図は、ディフィカルティーが5.66Tに下方調整されても同様で、電気代0.15usd/kWh以上では両機とも損益分岐点が現在の価格水準を上回り、0.1usd/kWhではS15だけが利益を上げられます。
【第1表:ビットコインマイニング推定損益分岐点(調整前&調整後)】
出所:CoinWarzより作成
第1表を見る限り、調整後の推定損益分岐点の下げ幅はそれほど大きくなく、S9に関しては電気代0.05usd/kWhで運用した場合の損益分岐点は据え置きとなる見通しです。
現在の推定限界安値は1700ドルとなりますが、調整後は100ドル安の1600ドルとなりそうです。
年初には4000ドル周辺で推移していた相場ですが、10日からは一段安となり現在まで3500〜3700ドル台の間で推移しています。
来週以降さらに安値を広げれば、まずは3100ドルの損益分岐点が重要なサポートラインとなりそうです。
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