今月23日時点でのビットコイン・ネットワークの調整後推定ディフィカルティーは5.66T(テラ)となっていましたが、調整日の28日までにネットワークのハッシュレートが上昇したことで、結果的に5.88Tから5.81Tへと微減しました。
今回の調整によるビットコイン・マイニングの損益分岐点は、28日以降若干下がりつつもほぼ据え置きとなっています。
そのなかで注目したいのは、ビットコイン価格とネットワーク・ハッシュレートの相関関係です。
日時のデータを参照すると、上下変動の激しいハッシュレートがノイズとなってしまい、一見相関がないように見えますが、週次の値を中期的に区切ると興味深いデータが出てきます。
2018年6月〜9月のビットコイン価格とハッシュレート(7日移動平均)の週次データに相関関係はありません(相関係数:0.26、決定係数:0.07)。
一方、2018年10月からのビットコイン価格とハッシュレート(7日移動平均)の週次データには強い相関関係が確認されます(相関係数:0.94、決定係数:0.88)。
価格とハッシュレートのチャートを見てもこの違いが確認でき、2018年9月〜6月のハッシュレートは上昇一色なのに対し、ビットコイン価格は大きく上下しながら保ち合い相場となっていました(第1図)。
2018年10月からのチャートを見ると、価格もハッシュレートも同じような動きをしていることがわかります(第2図)。
【第1図:BTC対ドルチャート&ハッシュレート(7日移動平均)チャート(2018年6月〜9月)】
出所:coinmarketcap、blockchain.comより作成
【第2図:BTC対ドルチャート&ハッシュレート(7日移動平均)チャート(2018年10月〜現在)】
出所:coinmarketcap、blockchain.comより作成
10月と言えば、それまでAntminer S9の損益分岐点と想定されていた6000ドル周辺でビットコイン相場が横ばいになり始めた時期で、こうした分析結果を考慮すると、やはり現在はマイナーが相場と損益分岐点を意識して敏感に反応していることがわかります。
この状況を脱するには、①ビットコイン相場が何らかのきっかけで上昇する、②あるいはネットワーク・ハッシュレートの水準が低下する必要があるといえます。
言い換えれば、相場が上がるかディフィカルティーが下がるかのどちらかということになります。
しかし、相場が上がれば、利益を追求するマイナーがマイニングに参加しネットワーク・ハッシュレートを引き上げるといった現象が起こります。
そうなれば、自ずとディフィカルティーも上方に調整されていき、マイニングの損益分岐点も引き上がっていきます。
市況及びネットワーク動向次第でもありますが、現状でそのような相場の上昇がおきれば、すぐさまマイナーによる利益確定売りが入ることも十分に考えられます。
逆に、ディフィカルティーが著しく下がれば(=ハッシュレートが著しく下がれば)、新規発行ビットコインをマイニングできる確率が上がるため、ある意味で「押し目」を狙って参加するマイナーが再びハッシュレートを引き上げるということが考えられます。
また、この際ネットワーク・ハッシュレートの低下を懸念する嫌気売りが優勢となれば、相場がすぐに損益分岐点付近まで下落することも想定されます。
これらの要因から、相場はネットワーク動向に大きく左右されながら軟調地合いが続くことが予想できます。
現在、ビットコイン・ネットワークのマイニング・ディフィカルティーは5.81T(テラ)となっており、Antminer S9では電気代が0.05usd/kWhの水準でないと利益を上げられなくなっています。
最新型のAntminer S15の場合、電気代0.1usd/kWhで運用した際の損益分岐点は推定で3200ドルとなります(第1表)。
【第1表:ビットコイン・マイニング推定損益分岐点】
出所:CoinWarzより作成
上記の前提を考慮すると、ビットコイン相場は3380ドル周辺と、危険な水準で推移しています。
幸い、ネットワーク・ハッシュレートは足もとで頭打ちとなっているようですが、次回ディフィカルティー調整までに一段とレートが上げれば、その時点の相場によってはさらなる苦境を迎える可能性もあり、引き続き警戒を要します(第3図)。
【第3図:ビットコイン・ネットワークのハッシュレート(7日移動平均)&ディフィカルティーチャート】
出所:blockchain.com、BitcoinWisdomより作成
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