
現在の世界経済は「関税」というキーワードに揺れています。
かつてない形で政府間の対立が市場の不安定さを煽り、その影響は株式市場だけでなく仮想通貨市場にも色濃く表れています。
関税が引き起こす市場の動揺
Flowdesk社の共同創業者兼CEOであるギョーム・ショーモン氏は「仮想通貨がもはや独自の世界に生きているわけではない」と指摘します。株式市場の動向や金利環境といったマクロ経済要因と仮想通貨は強く連動しているのが現状です。
特に現在の市場の不安定さの根源となっている関税問題について、同氏は「政府が危機に対して協力するのではなく、むしろ危機の触媒となっている、私が目にする初めての危機です」と述べ、これまでの金融危機とは異なる様相を呈していることに警鐘を鳴らします。
米国の主要企業であるAppleやTeslaのような企業の純利益が関税によって「2分の1、3分の1、4分の1になる可能性がある」とショーモン氏は分析。高PER(株価収益率)で取引されてきた株式市場が利益減少と適正なPERへの回帰という二重の圧力にさらされれば「株式市場は史上最高値から80%下落する可能性がある」とさえ同氏は指摘します。
仮想通貨市場特有の動きとボラティリティ
現在の市場環境下では、仮想通貨は他の市場以上に価格変動(ボラティリティ)が高まる傾向にあります。ショーモン氏は「特に週末の動きが最近非常に活発になっている」点に言及します。伝統的な市場が閉まっている週末に仮想通貨が先行して下落し、週明けにさらに下落するという価格下落が増幅されるような現象も見られます。
同氏は現在の市場心理について「弱気相場では市場は下落する理由を探そうとします。ポジティブなニュースが出てもほとんど動かず、ネガティブなニュースが出ると壊滅的な打撃を受けるのです。買いのフローが入ってこないため、市場は下がる理由を見つけようとしているのだと思います」と分析。
実際に仮想通貨の短期的なボラティリティは高水準となっており、株式市場の恐怖指数とされるVIX指数と比較しても高いとショーモン氏は指摘します。昨今のアルトコインの下落は深刻で時価総額TOP10に入る銘柄であっても直近90日間で50%を超える下落を見せている事例もあります。
機関投資家の参入とビットコインへの影響
一方でショーモン氏は今回の市場サイクルが過去と異なる点も強調します。それは、長年期待されてきた「機関投資家」が本格的に市場に参入してきたことです。
「大手機関がビットコインを購入する際、例えばブラックロックの商品を通じて購入する場合、彼らは1年や2年の強気相場を狙っているわけではありません。彼らはただ購入し、非常に長期間保有する可能性が高いのです」とショーモン氏は述べます。これは、金(ゴールド)への投資に似た、数十年単位の長期的な資産配分戦略であると同氏は見ています。
この機関投資家による長期保有を目的とした買い支えが市場からビットコインの供給量を継続的に吸収しているとの考えです。そのため、ショーモン氏は「過去に見てきたような(ビットコインの)大幅な下落は予想していません」としながらもアルトコインについては、過去と同様の状況になる可能性が非常に高いとし、ビットコインとアルトコインで見通しが異なる可能性を示唆しました。
さらに将来的には、仮想通貨と株式市場の「デカップリング(相関性の低下)」が起こる可能性も指摘します。「明日、株式市場で企業収益が大幅に減少したとしても、それは仮想通貨とは何の関係もありません。今年後半のある時点で仮想通貨と株式市場のデカップリングが見られるかもしれません」と語りました。
「トークン化」が示す仮想通貨の未来
ショーモン氏は、現在の市場が投機的なユーティリティトークンから、より実体経済に根ざしたトークンへと移行する過渡期にあると見ています。
「ミームコインは純粋な投機トークンへの投資の頂点だった」としつつも、今後は配当を生むセキュリティトークンや実質的な価値を持つガバナンストークンなど、ファンダメンタルズに基づいた資産への関心が高まると予測します。
その中心となるのが「現実世界の資産(RWA:Real World Asset)」のトークン化の流れです。「仮想通貨は純粋な資産クラスとして存在するわけではなく、既存の資産を持ち込むためのレイヤー(基盤)なのです」とショーモン氏は語り、株式、債券、不動産といった現実世界の資産がブロックチェーン上でトークンとして発行・取引される未来を強調します。
実際にブラックロックが提供するトークン化された米国債ファンド「BUILD」のTVL(預かり資産)は「天井知らずで伸びている」と指摘し「市場全体のセンチメントとは無関係にトークン化された証券のTVLが成長しても驚かない。なぜなら、それは単に人々が資産をオンチェーンに移動させているだけだからです」と述べ、トークン化の流れが市場環境に左右されにくい本質的な動きであるとの見解を示しました。
まとめ
関税問題に端を発する現在の市場の混乱は、仮想通貨にも大きな影響を与えています。短期的にはマクロ経済との連動性が高まり、ボラティリティの高い状況が続く可能性があります。しかし、機関投資家の長期的な買い支えはビットコインの下値を支える要因となり、将来的には「トークン化」という大きなトレンドが仮想通貨の新たな価値を創造していく可能性があります。
市場参加者は、短期的な変動に一喜一憂するだけでなく、こうした長期的な視点を持つことが重要と言えるでしょう。
記事ソース:The Block
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