
ビットコインに続く主要な仮想通貨であるイーサリアム (ETH) は、その技術的な基盤が進歩しているにも関わらず昨今、価格が伸び悩んでいます。
このファンダメンタルズと価格の間に生じているギャップについて、イーサリアムコミュニティのメンバーであり投資家でもあるRyan Berckmans氏が自身の考えを語りました。
イーサリアムのスケーリング戦略は成功している?
Berckmans氏はイーサリアムが採用しているスケーリング戦略、すなわちイーサリアム本体であるレイヤー1(L1)を価値の高いユースケースに特化させ、レイヤー2(L2)と呼ばれる補助的なネットワーク群で処理能力を高める「ハブ&スポーク」モデルが非常にうまく機能していると強調します。
同氏は「L2エコシステムを持ち、L1を最高価値のユースケースのみに確保する私達の計画は素晴らしいものでした。それは世界が実際に機能する方法でスケールします。技術的、政治的、そして製品またはビジネスレベルのスケーラビリティを提供します。本当にうまくいっています」とコメント。
この戦略の根幹にあるのは「分散化」の価値で、Berckmans氏は、分散化を単なる理想論ではなく、リスク管理の観点から説明します。「分散化はリスク管理に関するものです。チェーンが最大限に分散化されている場合、それはチェーン上に置いたものを効果的にほぼ完全に所有することを意味します。それは個人の主権的な財産です」と語り、特に将来的に兆ドル規模の資産がブロックチェーン上で扱われるようになる際、このリスク最小化が極めて重要になると指摘しました。
指標が示すイーサリアムの優位性:”アプリケーション資本”
イーサリアムの優位性を示す具体的な指標として、Berckmans氏は「アプリケーション資本(App Capital)」を提唱しています。これは、イーサリアムのネイティブトークンであるETHやそれに類するものを除いたイーサリアム上に存在する全ての顧客資産(ステーブルコイン、現実世界資産トークン(RWA)、L2トークン、ミームコインなど)の総額を指します。
同氏は「資本は偽造するのが非常に難しいです。イーサリアム上の資本の量は他のすべてのチェーンを矮小化(わいしょうか)します。そしてそれがL1の最大の勝利です」と述べ、この指標においてイーサリアムが他の追随を許さない状況にあることを強調しました。
また、L2エコシステムの成功指標としては「一定の基準を満たすL2の数」を挙げています。Arbitrum、Base、Worldchainといった多様なL2がそれぞれのビジネスケースを追求し、DeFi(分散型金融)、ゲーム、本人確認などの分野で成功を収めていることがL1/L2モデルの有効性を証明していると説明しました。
競合との比較と「現実世界での成長」の重要性
イーサリアムとしばしば比較されるソラナについて、Berckmans氏は興味深い分析を示しています。
かつてソラナが持っていた高速・低コストという技術的優位性はイーサリアムのL2技術の進化によって相対的に薄れてきていると指摘します。その上で、現在のソラナの強みは技術そのものよりも「現実世界での成長への取り組みとそれを推進する組織力」にあると分析しました。
そして、この点はイーサリアムにとっての課題でもあると語ります。「イーサリアムが認識する必要があるのは私たちがはるかに優れた技術を持っているということです。しかし、私たちは現実世界での成長があまり得意ではありません。実際、それを私たちの主要な機会として認識すらしていません」と述べ、技術開発だけでなく、現実世界のユーザーや企業をイーサリアムのエコシステムに引き込むための積極的な活動が不足しているとの見方を示しました。
規制環境の変化とRWA(現実世界資産)分野でのリード
過去数年間、特に米国の規制当局は仮想通貨に対して厳しい姿勢を示すことが多く、イーサリアムの発展にとって逆風となっていました。しかしBerckmans氏はその状況が変化し、現在は追い風が吹いていると指摘します。BlackRockのような大手金融機関がイーサリアム上で資産をトークン化する動きはその象徴です。
特にRWA(現実世界資産)やステーブルコインの分野において、イーサリアムはその信頼性やネットワーク効果から主要なプラットフォームとしての地位を確立しつつあります。Berckmans氏は「RWA、ステーブルコイン、決済、レンディングなどはより広範なビジネスコミュニティや政府コミュニティに響いた最初のユースケースの波にすぎません」と述べ、これらが将来的にさらに巨大なオンチェーン経済を形成するための入り口になるとの見解を示しました。不動産や債券などがトークン化され、イーサリアム上で効率的に取引される未来が近づいているのです。
価格が上がらない根本原因と今後の展望
では、なぜこれほど有望なファンダメンタルズを持ちながら、ETHの価格は上昇しないのでしょうか。Berckmans氏は、その根本的な原因は技術やインフラの問題ではなく「イーサリアムコミュニティ内部における戦略への確信の欠如」と「現実世界での成長への注力不足」にあると分析します。
同氏は「私たちの戦略が勝者であることに同意し、そして外に出てイーサリアムに現実世界をもたらす必要があります」と強く主張しました。L1/L2モデルという優れた戦略があるにも関わらず、コミュニティの一部がその有効性を十分に信じきれていない、あるいはインフラ開発に比べて現実世界への普及活動への関心や投資が不足していることが市場の信頼感の醸成を妨げ、結果として価格の停滞を招いているという見方です。
価格上昇のためには、EIP(イーサリアム改善提案)のような技術的なアップデートも重要ですが、それ以上にイーサリアムコミュニティ全体が自らの戦略に自信を持ち、一致団結して現実世界でのユースケースを開拓し、その成功を市場に示すことが不可欠だとBerckmans氏は考えています。「私たちは自分たちのモデルを信じ、構築したこの素晴らしいインフラを使用するのに十分なほど成長できると信じる必要があります」とも語っています。
次の購入者層と市場の信頼回復
今後のETHの主要な購入者層として、Berckmans氏は機関投資家を挙げています。BlackRockのような企業がイーサリアムに関与し始めている流れを加速させることが重要でそのためには、市場全体の信頼感を高める必要があるとしています。
同氏はビットコインにおけるマイケル・セイラー氏(一般公開企業として世界最大のビットコイン保有するStrategy社の創設者)のような存在の重要性にも言及しました。「ETHのためのセイラーが絶対に必要です。セイラーは自信を表し、買い注文を表し、伝統的なメディアに出て物語を語る強い個性を表します」と述べ、イーサリアムの価値を強く発信し、市場の信頼を牽引するリーダーシップの必要性を訴えています。
このような市場の信頼回復は、最終的には現実世界での成長によって達成されるとBerckmans氏は結論付けています。
「現実世界での成長を通じて自信を解決します。インフラを止めるのではなく両方を行う時が来たのです。それが買い注文を修正し、セイラーを引き出し、イーサを人類史上最も重要な経済システムの一つとして、あるべき場所である月(高値圏)へと送るでしょう」と語り、具体的な行動と成果こそが現在の価格の停滞を打破する鍵であると強調しました。
イーサリアムの技術的な基盤とスケーリング戦略は着実に成果を上げています。今後、コミュニティがそのポテンシャルを最大限に引き出し、現実世界での採用を加速させることができれば、市場価格もそのファンダメンタルズを反映する形で上昇していくことが期待されます。
記事ソース:Spotify
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