一般消費者からすると、ブロックチェーンや分散型台帳技術が日々の生活を良くする実感は持ちづらいかもしれません。
しかし実は、企業間取引においてはブロックチェーン(分散型台帳技術)の導入が国内外で着実に進んでいます。活用分野は多岐にわたりますが、例としては貿易や海上保険が挙げられるでしょう。
当メディアでも過去に、IBMなどが貿易の効率化に取り組む「TradeLens」をユースケースとして取り上げています。
本記事では、貿易や海上保険といったユースケースをサポートするプラットフォームとして多くの企業に選択されている「Corda」(コルダ)について解説していきます。
分散型台帳プラットフォーム「Corda」(コルダ)とは?
Cordaは、企業が分散型台帳技術を活用するために設計・開発されたプラットフォームです。当初は金融領域での利用が念頭に置かれていましたが、現在では貿易金融や海上保険、ヘルスケア、身分証明など様々な分野で活用されています。
Cordaでは、分散型台帳を構築するための様々なツールが用意されており、それらを組み合わせることで、効率的にCordaベースのプロダクトを開発することが可能です。
企業向けのブロックチェーン(分散型台帳)を開発する意味とは?
ビットコインなどのパブリックなブロックチェーンは、特権的な管理者を必要とせず、価値のやり取りができるまったく新しいシステムを実現しました。しかし、取引データがすべて公開されてしまう上に処理速度が遅いため、企業にとっては使いづらいのが現状です。
パブリックチェーンとは異なり、Cordaは取引データのプライバシーへの配慮や規制への対応、既存のシステムとの統合を前提として設計されているため、企業が導入しやすい設計になっています。
また、Cordaは改ざん耐性やスマートコントラクト、トークンを発行できるなど、ブロックチェーンに見られる特徴を備えているものの、厳密にはブロックチェーンではありません。データ構造が異なるのです。
したがって、Cordaはブロックチェーンではなく、分散型台帳技術(DLT:Distributed Ledger Technology)と呼ばれています。
Cordaを設計・開発する「R3」とCordaの協働コミュニティ
Cordaの設計・開発は、2014年に設立されたブロックチェーン企業「R3」によって主導されています。また、「R3コンソーシアム」という企業連合によって、ノウハウやユースケース、改善点の共有が行われています。Cordaをより効果的に利用するための協働コミュニティだと言えるでしょう。
R3コンソーシアムには、「バンク・オブ・アメリカ」や「みずほ銀行」、「三井住友フィナンシャルグループ」など、300以上の企業が参画しています。
Cordaのユースケース紹介
それでは、Corda上で稼働しているプロジェクトを紹介していきましょう。
貿易金融の電子化プロジェクト「Marco Polo」
Marco Poloは既存の貿易金融のプロセスを電子化し、効率化するプロジェクトです。欧州に拠点を置くブロックチェーン企業「TradeIX」とR3の共同によって2017年にローンチされました。Marco Poloには「バンコク銀行」や「バンク・オブ・アメリカ」、「バークレイズ」、「マスターカード」といった国際的な金融機関、決済サービス事業者が参画しています。
なお、貿易金融とは、輸出・輸入に関わる必要な資金の融通、または信用の供与を指す金融業務のことです。
実は、既存の貿易金融プロセスにおいて必要な書類は、多くが紙ベースのままであり電子化されていません。したがって、当事者間で書類を共有する際にはメールやFAXで内容を共有し、書類の原本性が求められる場合は国際郵便などで原本となる書類を送る必要があるのです。
また、書類の内容は各社が自社システムに手入力しているため、多くの事務コストが発生しています。
このような課題を抱える貿易金融において、データの透明性と改ざん耐性を備えた分散型台帳であるCordaを用いることで、情報の電子化と業務の効率化が可能になるのです。
貿易金融プロセスが効率化すると、貿易全体のコスト削減や貨物の受け渡しの迅速化などが期待できます。
海上保険プラットフォーム「Insurwave」
Insurwaveは、世界4大会計事務所「EY」とブロックチェーン企業「Guardtime」、海運最大手「Maersk」(マースク)、保険業界の主要な企業数社が協力して立ち上げた海上保険向けのプラットフォームです。
貿易金融と同じく、多くの関係者が関わる海上保険の分野は、電子化が進んでおらず情報を素早く共有する体制が整っていません。保険業界もまた、多くの書類が紙ベースであり、情報共有が遅く、手作業による事務コストが膨大だったのです。
Cordaベースの分散ネットワークによって、海上保険に関わる各データが改ざんされていない事が担保され、情報のリアルタイムな共有が可能になります。情報が迅速に共有されると、状況に応じたリスクをより正確に判定できるため、保険料の適正化に繋がるのです。
Insurwaveは2018年6月に商用化されており、実際に運用されています。
Cordaなどの分散型台帳技術による業務効率化は私たちに恩恵を与えるかもしれない
本記事でも紹介したように、国際貿易や海上保険などの分野では、ひとつの取引契約に多くの当事者が関わっています。これらの分野では、未だに紙の書類を用いた取引が行われているため、データが改ざんされていない事を証明できる分散型台帳技術が効果を発揮するのです。今後も企業間取引における分散型台帳技術の活用は進んでいくでしょう。
企業レベルでの業務効率化とそれに伴うコスト削減は、一般消費者の目には見えにくい成果です。しかし、Marco Poloのようなプロジェクトによって、貿易プロセスが効率化されれば、輸入製品価格の低下など、最終的に私たちの暮らしを良い影響をもたらす可能性があります。
ブロックチェーンや分散型台帳技術は、私たちの生活を支えるシステムを、少しずつアップデートしているのです。
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