レンディング企業BlockFiが暗号通貨ヘッジファンドThree Arrows Capital (3AC)のポジションの一部を清算したことが分かりました。
(FT) – Three Arrows Capital failed to meet demands from lenders to stump up extra funds after its digital currency bets turned sour, tipping the prominent #crypto hedge fund into a crisis that comes as a credit crunch grips the industry.
@FT https://t.co/GHj1NQ6Khi
— Carl Quintanilla (@carlquintanilla) June 16, 2022
資産総額100億ドル以上とされていたThree Arrows Capitalは、過去にSolana、Avalancheなどへの投資実績もある業界大手のヘッジファンド。
今回の清算を発端として、Three Arrows Capitalの動向が今後の暗号通貨市場に大きな影響を与える可能性があります。
本記事では、注目ヘッジファンドThree Arrows Capitalについて解説していきます。
1 BTC = 20,000 USD を目前とし、激しい値動きが今後も予想される今こそ、話題のトピックはしっかりと抑えておきましょう。
是非最後まで読んでみてください。
Three Arrows Capital (3AC)とは一体どんなファンドなのか
Three Arrows Capitalとはそもそもどんなファンドなのでしょうか。
3ACは、2012年にSu Zhu氏と Kyle Davies氏によって設立されたヘッジファンドで、今年4月にはシンガポールからドバイへの本社移転を実施しました。*現在サイト上ではBVI(イギリス領バージン諸島)の法律に準拠する旨が記されているため、移動した可能性有
創設者のZhu氏はETP(上場取引型金融商品)を扱うFlow Tradersやドイツ銀行に勤務。Davies氏は総資産が7558億スイス・フラン(約103兆円)とされる世界最大手の金融企業Credit Suisseのトレーダーとして働いていた経歴があります。
Bankless:SotN #46 – The ETH Trade with Su Zhu & Kyle Davies of Three Arrows Capital
3ACの主な投資実績としてSolanaやAvalanche、Axieといったプロジェクトが挙げられます。
上記以外にも、AAVEやStarkWare、DROPPといった多分野に対して3ACは投資を行っており、資産は一時100億ドル以上とされていました。
Messariのデータによると、3ACは今年2月時点までに27のプロジェクトへ投資を実施。(未公開分を除外)
現在上記通貨は、平均して直近90日間で7割以上の価格下落を見せています。
これまでの市場の流れ
これまでの市場の流れを時系列順にかんたんに解説します。
現在、暗号通貨市場は全体として価格下落が続いており、stETHの価格乖離やCelsiusの出金停止騒動など、ネガティブな話題が各メディアやSNSで頻繁に取り上げられています。
関連:【約3兆円規模】なぜ今「Celsius」が話題なのか?時系列で解説
上記の流れの中、一部ユーザーが3ACの財務状況について指摘を始めました。
#PeckShieldAlert $stETH down to 0.934 $ETH.
Three Arrows Capital transferred ~22,830 $stETH to $ETH
Here is an example tx: https://t.co/Y0HDukgy9F pic.twitter.com/ijqDISPZeA— PeckShieldAlert (@PeckShieldAlert) June 14, 2022
上記ツイートはその一例で、3ACのウォレットとされるアドレスがstETHをETHに変換していると報告。
stETHは本来、1stETH = 1ETHでペッグされるべき通貨ですが、現在は1stETH = 0.934ETHの状態です。このことから、”3ACは財務状況の悪化によりstETHを割安でETHに変換しているではないか”という推測が広がりました。
We are in the process of communicating with relevant parties and fully committed to working this out
— Zhu Su 🔺 (@zhusu) June 15, 2022
上記のような状況を受けてか、3AC創業者のZhu Su氏が突如「現在、関係各所と連絡を取り合い、解決に向けて全力を尽くしているところです。」とTwitterに投稿。このツイートがきっかけとなり、SNSや海外メディア上で様々な推察や憶測が3ACに対して行なわれました。
1) there’s only 1 wallet which has ever had the 3 Nansen labels in the screenshot you shared – but it’s not the wallet you shared!
2) 3AC would have been the header of the wallet (not “Private Sale Investor”) – we know how our own algos order labels
— Alex Svanevik🐧 (@ASvanevik) June 15, 2022
一例として、ブロックチェーン分析プラットフォーム「Nansen」上で、1 ETH = 1042 USDとなると大規模な清算が発生するポジションを保有しているウォレットに”3AC”のタグが付けられているという情報が流布。その後、Nansen CEOが上記情報は誤りであり、対象ウォレットは3ACのものではないと訂正しました。
.@Nexo has $0 exposure to Three Arrows Capital.
Nexo has always differentiated itself from others as being a very conservative lender with stringent risk management and strict over-collateralization requirements, regardless of borrowers’ reputation. https://t.co/VP37WdEn7j— Nexo (@Nexo) June 15, 2022
また、レンディング企業のNexoは、3ACに対するエクスポージャーは0であるとツイート。
さらに、海外メディアが”3ACは先日大きな価格下落を起こしたLUNAへの投資を行っており、これまでに清算された額は4億ドル(約530億円)以上にのぼる”と報じるなど3ACに対する注目が各方面から集まりました。
ここまでがこれまでの流れとなります。
一部清算が正式に発表
上記の流れの中、レンディング企業BlockFiが3ACのポジションの(少なくとも)一部を清算したことが海外メディアFinancial Timesによって報じられました。
さらに、事前にNansenによって推察されていた3ACの資産額100億ドルは誤りで、実際は40億ドルほどであった可能性が高いと指摘。
上記記事公開後、BlockFi CEOは、”大口顧客に対して最善の経営判断行い、関連するすべての担保を完全に清算またはヘッジした(一部要約)”と、大口顧客 = 3ACとも取れる内容のツイートを投稿しました。
BlockFi can confirm that we exercised our best business judgment recently with a large client that failed to meet its obligations on an overcollateralized margin loan. We fully accelerated the loan and fully liquidated or hedged all the associated collateral.
— Zac Prince (@BlockFiZac) June 16, 2022
同じレンディングサービスを提供するFinbloxや、オプション取引所のDeribitは、直接3ACの名前を出し、対応の実施や事業への支障がないことをそれぞれアピール。
IMPORTANT UPDATE FROM FINBLOX! pic.twitter.com/VjclRMMiSe
— Finblox (@finblox) June 16, 2022
Due to market developments, Deribit has a small number of accounts that have a net debt to us that we consider as potentially distressed.
— Deribit (@DeribitExchange) June 16, 2022
3ACが暗号通貨で保有している資産の規模は大きいため、今後経営難を逃れるために保有分の通貨を売った場合の影響について一部ユーザーの間で様々な憶測が飛び交い、不安が高まっているというのが今の現状となります。
現在、BTCは24時間で約6%下落しており、直近の市場の動きと比較すると3ACの清算による直接的な影響は現時点では少ないと考えられます。
考察:今後の動向について
現在、市場に出回っている3ACに関する情報は「一部情報筋によると」「匿名からの垂れ込みによると」といった表現で記されているものがほとんどです。
これから記すことは、上記のような情報を元にしての考察も含まれていますのでご留意ください。
A verified source has confirmed that 3AC borrowed money from multiple funds and counterparties and put it into Anchor to generate yield without telling them. Their UST position was confirmed to be at least nine figures before the Terra depegging event.
— FatMan (@FatManTerra) June 16, 2022
上記ツイートによると3ACは借り入れた資金を、貸し手に報告せずにTerra上のレンディングプロトコルAnchorに入れて運用を実施。
先日のLUNAの暴落により3ACは大きな損失を被ったと報告されており、借り入れた資金にも影響が及んでいることが推察できます。
ステーブルコインのAPRを8%で補償していた3ACですが、上記の運用方法が事実である場合、表向きの宣伝文句とは異なる方法で借り入れた資産を運用した可能性が考えられます。
先日のCelciusの件なども含め、今後、ファンドやレンディングサービスの透明性に関するユーザーのニーズは二極化していくでしょう。
ブロックチェーン/暗号通貨領域で透明性が高いか否かは、データがどれだけオンチェーン上で可視化されているかで基本的に判断されます。つまり、自分達が預けた資産がどういう場所でどのように運用されているかをデータでいつでも確認できる状態であれば”透明性が高い運用”と表現できます。
しかし、上記の内容を確認するためには、一定以上の知識やスキル、時間が必須です。
クリプトユーザーの中には「大手だから安心」といった感情で、細かい精査をせずに資金を預ける人がいるのは周知の事実。
こういったユーザーにとって、オンチェーン上のデータを自分達で分析できる状態は「自分が運用に関与できるパーセンテージが高い = 面倒な作業が増える」であることを意味し、デメリットに感じる可能性が高いでしょう。
そのため、今回のCelsiusや3ACの件をきっかけに、一定以上のスキルや時間を持ったユーザーと他者に丸投げしたいユーザーの間の溝がさらに深まることが予想されます。
今後、暗号通貨市場をより低リスクで乗り切っていくためには「オンチェーン情報を自分で分析できるスキル」が必須になると考えています。
まとめ
今回は話題のThree Arroes Capitalや、今後必要なスキルに対する考察などについて紹介してきました。
私たちが普段当たり前のように接している”情報”は、ほんの少し伝え方や状況を変えれば人を誘導して不幸にすることも出来てしまう強力なものです。
CRYPTO TIMESでは、可能なかぎり既存メディアにありがちな事実と主張を混同する伝え方をせずに最先端の情報をお届けしていきます。
今後も是非クリプト情報のキャッチアップにご利用ください。
最後までありがとうございました。
記事ソース:The Block、Financial Times、
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