O
今週の市場動向
今週の仮想通貨市場は先週から引き続き相場の激しい上下がありましたが、比較的底堅い動きとなりました。今週の高値は現時点で6/3の3540億ドルで、安値は6/5の3300億ドルでした。相場は足元3400億ドル付近を推移していて、週始めよりおよそ130億ドル上昇しています。
今週の注目ニュースとしては、以下の4つがあります。
- ①ZenCashが51%攻撃の被害に見舞われる
- ②イタリアのジュセッペ・コンテ新首相による国会での所信表明演説後のユーロ急落
- ③米証券取引委員会委員長によるICO規制に関するインタビュー
- ④国内外における仮想通貨取引所の様々な動向
51%攻撃再び
6/2〜6/3にかけて時価総額134位で匿名性の高いZenCashが51%攻撃の被害に見舞われました。5月から確認されているだけで今回の事案は4件目の51%攻撃となります。週末は相場が上昇傾向にありましたが、週明けに情報が拡散され、週前半はハッキングからくる不安感を織り込んだ売り圧力が市場に働いたと見受けられます。
ZenCashによると、ハッカーは今回3回に分けて「ダブルスペンド」という手法で資産を不正に増やしたとされています。
ダブルスペンドとは、「同じコインを2度使う」ことを指します。
取引所に対する送金が承認された時点で、ハッカーはその取引で利用されたコインをキャッシュアウト、別のウォレットに送金、又は別の銘柄と取引のいずれかを行います(これで元のコインのネットワーク上からハッカーの資産は完全に移動されたことになります)。
その上で、ハッカーは元のコインのネットワーク上で51%以上のハッシュパワーを掌握し、自分のウォレットに送金した取引が入った(ソフトフォークした方の)ブロックをマイニングし、取引所にデポジットした取引が記録されたブロックを含むチェーンを追い抜き無効化します。
これにより、ネットワーク上でコインを残したまま、そのコインを使いそのネットワーク外に資産を増やすことが可能になります。
ZenCashは6/6の時点で複数のプロトコル改善案をブログで提示して対応を検討しています。
ユーロ下落を狙った仮想通貨買いか
6/6未明には、仮想通貨市場時価総額が全体的に上昇しました。要因としては、再びイタリア政治混迷からくるユーロの下落があると考えられます。「ビットコイン・イーサリアム価格分析:ユーロ下落が再び好材料か」でも紹介した通り、6/5の夜にかけてユーロが下落をはじめ、相場が下げ止まった6/6未明のタイミングで仮想通貨市場時価総額が上昇し始めました。先月末にも起きたユーロ下落でも直後に仮想通貨市場では同様の動きが確認されていて、今回はジュセッペ・コンテ首相の所信表明演説を見張っていた投資家がいたことも指摘されます。
米証券取引員会がICOに手をさしのべる方向にシフトか
6/7未明にはICO規制に関する大きな動きがありました。アメリカの証券取引委員会(SEC)のジェイ・クレイトン委員長が、CNBCとのインタビューでこれまでと変わらず「ICOは証券」という姿勢を再度強調し、ICO/仮想通貨に関する新たな法は作らず既存の証券法でICOを規制していくことを表明しました。
一方で、証券法に則ったトークンセールであれば、プライベートセールには私募のルールが適用され、パブリックセールの場合は「(SECに相談しに)会いに来て欲しい」、「(SECは)喜んでパブリックセールの助けになる」と、ICOに対して「手をさしのべている」とも取れるスタンスを表明しました。
予てから、SECの規制動向は注目されていましたが、「法に則った支援」とも取れるICOに対する姿勢は、アメリカのICO市場拡大の起爆剤になることも考えられます。しかし、証券法適用によるトークン発行体が直面する可能性があるハードルも考慮する必要があり、引き続きSECによる規制動向には注目です。
仮想通貨取引所をめぐる様々な動き
今週は、以上のニュースの他に、仮想通貨取引所に関する重要なニュースが複数ありました。
まずは、6/4に大手SBIグループの子会社、SBIバーチャル・カレンシーズが仮想通貨取引所をローンチしました。
さらに今週は、HitBTCとCoinbaseが日本市場に進出するために動いているとの報道もありました。Coinbaseに関しては、今年中に日本での仮想通貨交換業登録を完了させる見通しと報道されて、2019年は日本市場での仮想通貨取引所の熾烈な競争が加速することが考えられます。
また、ポジティブなニュースとしては、コインチェックがNEMの取引を再開したことが一時的な相場の上昇に繋がっていることが指摘されます。
海外では、世界取引量第2位のバイナンスがマルタ共和国で銀行口座開設を完了させ、法定通貨と仮想通貨のペア導入に一歩前進しました。
また、Coinbaseがアメリカで「ブローカー・ディーラーとしての登録審査」が順調に進んでいることを自社のブログで公表しました。登録審査に通れば、アメリカ市場でブロックチェーンに基づく証券の取引が可能となるので、Coinbaseが運営する取引所GDAXに注目が集まっています。
サマリー
頻発する51%攻撃に不安感は残るものの、いずれの事案でも個人のウォレットや取引所の口座に直接的な被害は生じておりません。
しかし、51%攻撃に対する対策が前進しない場合、もし今後仮想通貨およびICO市場が拡大しても、ネットワークの比較的小さく、パブリックブロックチェーンを採用するプロジェクトはセキュリティの観点から信用度が落ちていくことも考えられます。よって、ブロックチェーン技術に対する不信感の払拭は、業界発展のための急務と言えます。
また、業界の規制が着々と進む中で、「ブロックチェーンの持つ可能性が試されている」という局面に入ったとも言えるでしょう。
<本記事ご協力>
ビットコインなどの仮想通貨をまとめたメディア『FinAlt』が提供
・Fintech、仮想通貨総合メディアFinalt