今週の市場動向
今週の仮想通貨市場時価総額は、大幅な下落を記録しました。6/9には3400億ドル台を維持していましたが、翌10日には急落し一時は4月以来となる2600億ドル水準まで下げ足を速めました。
現在は2800億ドル台で推移していますが、9日の週間高値からおよそ600億ドルの下落は、大きな打撃と言えるでしょう。
今週の注目ニュースとしては以下の3つとなります。
- ①韓国の仮想通貨取引所Coinrail(コインレール)がハッキングの被害に見舞われ、4000万ドル相当のオルトコインが不正に流出
- ②テザー社によるBTC相場操縦の可能性を指摘する論文の発表
- ③米証券取引委員会関係者がETHは証券ではないと発言
また、今週は米連邦公開市場委員会(FOMC)での政策金利発表など、既存金融市場でも注目のイベントが相次ぎました。
Coinrailハッキング事件
6/10には韓国の仮想通貨取引所Coinrailがハッキングを受け、NPXSトークンを中心に計9銘柄のオルトコインが不正流出したことが報道されました。今回の被害総額は4000万ドル相当と今年1月のコインチェック不正流出事件のおよそ10分の1となっていますが、市場には顕著な影響が出ているように見受けられます。
11日未明には、時価総額第1位のビットコイン(BTC)は365日移動平均線を下回るなど、明確な「弱気」相場への転換が10日〜11日の間で起きたと言えるでしょう。
一方で、Coinrailは比較的マイナーな取引所である上に、事件発覚から相場の急落まで数時間の時差があったことから、週前半の相場急落には別の原因があるとも言われていますが、現在それを支持する有力な情報はありません。
テザー社、BTC相場操作への関与疑惑強まる
6/14には、米テキサス大学よりテザー社がBitfinexを通じてBTCの価格を操作していた可能性を指摘する60ページ以上もの論文が発表されました。
テザー社は、運営者がBitfinexの関係者でもあることから、以前より2社間の関係が疑問視されていた上に、準備金不足状態でUSDT(テザー社が発行する米ドルの価格に基づいた仮想通貨)を発行した疑いなども持たれていて、昨年末には米商品先物取引委員会が召喚状を出したことでも話題になりました。
今回の論文は、テザー社による相場操作を徹底的に裏付けるものではありませんが、米司法省は仮想通貨市場における相場操作取り締まりを開始することを発表しているので、今後調査が更に進みテザー社に規制の圧力が及ぶ可能性もあると考えられるでしょう。
ETH、証券ではない
アメリカ時間6/14にYahoo Financeが主催するイベント「All Markets Summit: Crypto」にて、米証券取引委員会(SEC)企業金融局のウィリアム・ヒンマン局長が、SECはETH(イーサリアム上のネイティブ通貨)を証券として分類しない旨を発表しました。
ヒンマン氏は、ETHコミュニティの現在の構造は十分に分散化されていることを挙げ、「(ETHを)規制することに価値はみえない」と発言しました。
以前よりSECによる仮想通貨を巡る証券法の適用が注目されていましたが、今回のヒンマン氏の発言でETHに関しては証券法による規制を逃れる見通しとなったと言えるでしょう。
しかし、今回はETH以外の仮想通貨/トークンに関しての言及はなく、包括的な規制の方向性に関する発表とはなりませんでしたので、引き続きSECの規制動向には注目を要するでしょう。
主要国・地域中央銀行の動向に市場は停滞か
上記の他に、FOMC(6/12〜6/13)、ECB(6/14)、BOJ(6/15)など主要国の金融政策イベントが相次ぎました。
ドル、ユーロ、円の金利政策動向は世界的な資金フローを左右するとも言われているので、これらの重要なイベントを織り込んだ1週間に「様子見」的なムードが仮想通貨市場の重石となっていたことも指摘されます。
サマリー
今週の仮想通貨市場の動向は「想定外」と感じた方も多かったと思われます。
BTCのRSI(「売り」と「買い」の勢いを示す指数)は、「売られ過ぎ」サインとなる30%を13日に割り込み、一時25%まで下落しました。現在は30%の上を維持していますが、今週は悪材料が重なった上に好材料となるニュースが少なかったこともあり、引き続き上値が重いように見受けられます。11日未明にかけての急落分を取り戻すには時間がかかりそうです。
<本記事ご協力>
ビットコインなどの仮想通貨をまとめたメディア『FinAlt』が提供