仮想通貨業界において2018年は規制強化の年であった一方で、依然として大きな隔たりが存在している。
つい今週ウォールストリートジャーナルが「価格を釣り上げて売り飛ばす」オンラインのグループに関する研究を発表した。トレーダー達が一団となって価格を急騰させて売り抜けるという行為を行っていたのである。研究によれば、これらのグループは過去2年半の間だけで驚きの8億2500万米ドル相当の取引を取引所を通じて行ったと言う。
この種の市場操作は証券取引所では禁止されているが、仮想通貨の世界では明確な規制がないためにまん延している現状があります。一方でブロックチェーン業界における猛烈な発展の速度のため、規制当局は追いつくのがやっとである。
クリプト・コミュニティ内の企業が自主規制機関(SRO)を模索しているのには、そういった事情もある。SROとは、法案の起草、監督に携わり影響力を行使する非政府組織である。例えば、米国では金融取引業規制機構(FINRA)が、数千の証券仲買業者を規制、業界に向けてベストプラクティスを確立し、証券紛争を解決、またルールを破ったブローカーに対し罰金、業務の一時停止、営業停止処分を行う力を持っている。
昨日、3月のコインチェックのハッキングを受けて16の国内の仮想通貨取引所によって結成された日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は、「認定資金決済業務協会」となることを申請した。JVCEAが金融庁の承認を得られた場合、日本の仮想通貨取引所業界のための自主規制機関となることを望んでいる。
「(仮想通貨業界のための)SRO的な主体が、将来の行動のための青写真となるような業界の基準を策定することができると確信しています」と3月のDCブロックチェーンサミットで米国商品先物取引委員会(CFTC)理事のブライアン・クインテズは話した。
特に「SROによって公開されたルールやベストプラクティスは実践的な経験によってもたらされたもので、なぜなら業界の参加者からインプットを得ているからです」と述べている。
例えば、JVCEAはインサイダー取引と資金洗浄に標的を合わせた一連の方針を起草した。Moneroのような、過去の売り手に遡る事ができない新しいトークンは取引所で扱うことを禁止される。定期的な監査報告書の作成及びJVCEAへの送付もメンバー必須の義務となる。
もちろん、SROはいわゆる「銀の弾丸」ではない。有効なSRO、ルールを破ったメンバーに対して実際にペナルティを課すのに十分な影響力、または規制の後ろ盾を持つSROを運営するのは容易ではない。利害の衝突と透明性はもう一つの懸念である――特にFINRAにおいてそうであった。
仮想通貨業界では、重きを置かれるSROを結成するためさまざまな企業を横断して十分な支持を集めるのは容易ではない。3月にビットコイン億万長者のキャメロン・ウィンクルボスが電子アセット取引所Geminiに代わってSROの概要を提案したが、それを展開するための十分な気運も支持も集まらなかった。
「誰もが誰が統括すべきか独自の考えを持っていて、その観点から、複数の機関の競争がある場合、標準化の程度は低くなります」と、ワシントン州のクローウェル&モリングの弁護士ジェニー・シプラクはブルームバーグ・ローとのインタビューで述べている。「エコシステムの形成は最初の内ばらばらになると思います」
それでも仮想通貨商品の数が増え続け、より多くの小口投資家がトレードリスクにさらされるなか、SRO的な主体は、より進歩的な政策について政府の規制当局と協議する道となりうる。少なくとも、仮想通貨業界が説明責任を果たす試みを始めるひとつの方法である。
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