- ◆2018年でビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のパフォーマンスを上回ったICOトークンは全体の3分の1
- ◆ICO調達額の5割近くを占めているのはEOSなど10プロジェクト
- ◆調達資金の使い道はインフラ重視である傾向は継続
ベンチャーキャピタルのファブリック・ベンチャーズは、今年1月から9月までのイニシャル・コイン・オファリング(ICO)について分析し、ビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)のパフォーマンスを上回ったのは3分の1に過ぎなかったというレポートを発表した。
2017年は「ICO熱狂」の年だったものの、今年は仮想通貨相場の下落とともにICO市場が低迷していることがデータとしても示された形だ。
ファブリックによると、今年9月までに発行されたICOトークン319のうち、ビットコイン(BTC)とイーサリアム (ETH)のリターンを上回ったのは3分の1だった。
下記のグラフが示すように、全体でみてもICOトークンのビットコインやイーサリアム に対する優位性は減少している。
(引用元:Token Data via Fabric Ventures 「ICOトークンにドル建てで投資したポートフォリオVS.イーサリアム (ETH)やビットコイン(BTC)のみ保有するポートフォリオ」)
また、今年これまでのICO調達額は、2017年の56億ドルをすでに大幅に上回っているものの、6月以降、急減速している。
(引用元:Token Data via Fabric Ventures 「月間ICO調達額」)
今年のICOのうち、資金調達に失敗したり、消えたり、投資家に払い戻ししたりしたICOは全体の58%に上るという。
さらに今年のICO調達額の47%をEOSやテレグラムなどたった10プロジェクトが占めていることも明らかになった。
(引用元:Token Data via Fabric Ventures 「巨額ICOプロジェクト10」)
ICOもインフラ重視
また、調達資金の使い道だが、40%以上がインフラプロジェクトに投資されていることがわかった。
(引用元:Token Data via Fabric Ventures 「ICO調達額の使い道」)
インフラ重視は2017年から変わらない傾向だ。ファブリックは、多くの投資家が開発者のためのツールやWeb3.0時代に向けた主要インフラの整備に注目していると解説している。
ただ既報の通り、仮想通貨の普及に向けてインフラが整備されているというニュースに対して相場の反応は鈍い。
例えば、16日に米大手投資会社フィデリティ(Fidelity)が機関投資家向けに仮想通貨取引サービスを開始すると報じられたが、仮想通貨相場の反応は限定的だった。
ウォール街の大手金融機関が仮想通貨のカストディ(資産管理)サービスをすることで機関投資家に安心感を与えるというのは、大きなニュースのはずだった。仮想通貨投資会社ギャラクシー・デジタルのマイク・ノボクラッツ氏の言葉を借りれば、「仮想通貨相場は弱気だが、インフラや労働市場は強気」な状態が今も続いている。
ICOからSTO?
ICO市場が低迷する一方、セキュリティー・トークン・オファリング(STO)に脚光が浴びている。
13日にはハイテク株の比率が多い米株式市場ナスダックが、セキュリティートークンのプラットフォーム立ち上げを検討していると報じられた。セキュリティー・トークン・オファリング(STO)は、ICOと同じくトークン発行で資金調達を目指すものの、初めからトークンは証券であることを認める点が異なる。
STOは米国証券法に準拠することを目指している。
The Blockによると、ナスダックはブロックチェーン企業のSymbiontをはじめ複数の企業と交渉中。新たなSTOプラットフォームではトークン化された証券の発行ができるほか、トレードも可能になると言う。このプラットフォームが立ち上がる時期は明らかになっていない。
ICOと規制
最近、不当なICOに対する米国証券取引委員会(SEC)の取り締まりが強化されている。11日にSECは緊急の裁判所命令を得て、「SECに認可された」と虚偽の主張をしながらICOのプレセールを行うプロジェクトを止めたと発表。同様に今月23日にSECが問題視したのは、Simex Incとして知られるAmerican Retail Groupが発表した8月のプレスリリース。
SECの基準を満たしたカストディアン(資産管理業者)と提携し、「正式にSECに登録した形で」資金調達をすると述べたという。
9月にはSECのディレクターであるステファニー・アバキアン氏が違法なイニシャル・コイン・オファリング(ICO)に対して「もっと本質的な」取り締まりを行なっていくと発言した。
一方、ICOに対して前向きに規制を始めた国もある。
フランスの経済・財務大臣が9月12日、「企業の成長・変革のための行動計画に関する法案」(PACTE)におけるICOに関する条項をフランス議会の委員会が承認したと発表。
詐欺行為が横行するなどリスクも大きいICOを規制することで、世界中の投資家をフランスに呼び込む狙いだ。
また台湾は、2019年6月までに、ICOの規制を発表する見込みだ。金融監督委員会(FSC)のトップであるウェリントン・クー氏は「われわれがより規制すればするほど、この新たな経済活動は鈍化する」と発言しており、消費者保護とビジネス保護のバランスを考えることが見込まれる。
【新着・関連記事】
・【動画あり】仮想通貨業界の自主規制始動:ルール順守のため検査や罰金も可能に 奥山会長「業界の健全な発展目指す」
・GMOフィナンシャルHD「仮想通貨事業、完全に収益出せる体制に」 レバレッジ規制「4倍なら大きなダメージない」
・リップル Q3の売上高が2倍以上に 183億円以上の仮想通貨XRPを売却
<本記事ご協力>
国内最大級の仮想通貨ニュースサイト|コインテレグラフ日本語版