最近、仮想通貨市場の下落が話題になっていますが、そのなかでもリップルは比較的底堅く推移しています。時価総額ランキングもイーサリアムを抜き去り、第2位の座を築いています(2018年11月28日時点)。
そんなリップルですが、なぜ根強い人気があるのか、リップルの話題でよく上がる実用性とはどういったものなのかを今回は改めてご紹介します。
リップル(XRP)を簡単にまとめる
リップルとは、分散型台帳技術を利用した決済システムです。要するに、リップルネットワークという簡単で速いネットワークにより、さまざまな銀行をはじめとした金融機関等の決済インフラを繋ぐソリューションとして生まれました。
このシステム内で使用される通貨がXRP(※1)となります。
従来の国際送金の課題である「送金の遅さ」や「送金コスト」を解決するために、また主に銀行や国際送金業者などの金融機関を対象とする決済を想定して開発されました。
リップルの開発は、2004年にカナダのウェブ開発者である Ryan Fuggerにより開始され、現在は、Ripple Inc. によって続けられています。Ripple Inc.は、「Internet of value:価値のインターネット」の実現を目標としています。
リップルの誕生について詳しくは「リップルコインとは? -誕生と歴史について徹底解説-」をご覧ください。
※1本稿では混同を避けるため「リップル」をプロジェクト名、「XRP」通貨単位として表現を統一しています。
リップルと(XRP)SWIFTとの違い
SWIFTとは
まず、リップルとよく比較されるSWIFTについてポイントをおさえておきましょう。
従来の国際送金システムはSWIFTと呼ばれ、複数の銀行を経由して行われる為、送金日数がかかり、手数料も高額になるという課題があります。
ここで注意したいのが、SWIFTは日本で中央銀行にあたる日本銀行の役割を担っているわけではありません。
つまり、SWIFTでは国際送金を行うにあたり、「コルレス銀行」という送金をやり取りする銀行を中継するための銀行が必要になります。
この銀行間の送金を円滑に行うためにSWIFTコードと呼ばれる識別コードが発行され、送金先と送金元の銀行を識別し、グローバルに送受金を実現しているのです。
ただ、ここで問題になるのが、「コルレス銀行」がさまざまな外貨を用意すること(※2)のできる大規模な銀行に限定され、その数は国際送金ニーズに比して決して多くはありません。
また、送金する銀行がコルレス銀行でない場合には、複数の銀行を介して送金を行う必要があります。
- 例:A国X銀行からB国のY銀行に送金する場合
- X銀行→A国コルレス銀行→B国コルレス銀行→Y銀行
上記のように、送金する銀行がコルレス銀行でない場合は、複数の銀行を経由しなければならないため、その分の事務コストや処理にかかる時間などが発生します。
そのため、SWIFTでは手数料が高く時間も掛かるという状況が生まれてしまうのです。
リップルは、このような国際送金の課題である「送金コスト」や「送金の遅さ」などの課題を解決するために開発がスタートしました。
※2 これに利用される決済口座をノストロ口座と呼びます。
リップルの用途
SWIFTに代わりリップルに期待される用途は主に2つです。
- ①ブリッジ通貨としての役割を担うこと
ブリッジ通貨とは、円やドルなどの法定通貨やビットコインなどを相互に交換する際の橋渡しとなる通貨のことです。
従来の送金時に銀行が担っていた作業がなくなるため、コストの削減が期待できます。
- ②システム手数料としての役割
XRPで送金や決済をする際には、少額のXRPが手数料として徴収されます。徴収されるXRPは、ネットワークへの負荷に比例して増加するように設定されています。
これにより、外部から悪意のある攻撃者がリップルのシステムに負荷をかけシステムダウンを引き起こそうとした場合、高額な手数料がかかり破産に追い込むことができます。
このように、XRPをシステム手数料として徴収することで、攻撃者からシステムを守る設計となっています。
こうしたリップルの機能により、従来SWIFTを利用することで発生していたコストがカットされ、よりスムーズに国際送金が可能になると期待されているのです。
より詳しい説明は「Vol3:リップル(XRP)の謎 -xCurrent, xRapid, xViaとXRPへの影響-」をご覧ください。
リップル(XRP)の知っておきたいポイント
ビットコインやイーサリアムなどの他の仮想通貨と比較した際の特徴として以下のものが上げられます。
処理速度が早い
リップルは他通貨に比べ、トランザクション(決済や送金などをした際の取引データのこと)の処理能力に長けています。
これは、ブロックチェーンとは異なり、1トランザクションごとに承認を行なっていくため、ブロックの生成される時間を待つ必要が無いからです。
スケーラビリティに問題を抱えるビットコインとの比較に意味があるかどうかは置いておいて、ビットコインの処理可能トランザクション数は最大で秒間7トランザクションとなっています。
ビットコインをベンチマークとすると、リップルは秒間1500以上を処理することができるため、約214倍の処理速度となります(※3)。
決済機能に特化したリップルは、機能面では他の主要通貨と比較して実用性にアドバンテージを有していると言えます。また、処理可能トランザクション数はこれからも増やしていく方針を掲げています。
※3 単一台帳で管理しているクレジットカードのVISAは秒間2000ほど。
新規発行が行われない
リップルは、ビットコインやイーサリアムなどとは異なり、仮想通貨の新規発行が行われません。リップルでは発行上限の1000億枚が全て発行されている為、“マイニングしてコインを得る”ということはできません。
また、リップル社がリップル自体の発行上限を増やし、新規発行を行うことはないと推測できます。
中央集権的
リップルは、他の仮想通貨に比べ、下記2点において中央集権的と言えます。
- ①リップル社という中央管理者が存在する
XRPの発行上限1000億のうち、630億XRPをリップル社が管理しています。
さらに、その一定数にロックアップ(一定期間における売買や移動の制限)を行っており、XRPに流動性を供給する機関投資家やマーケットメーカー(例えば、取引所など)にインセンティブとして徐々に分配されます。
- ②取引を検証できるユーザーが限定されている
リップルではValidatorというリップル社が選定した特定の参加者のみ、取引の承認作業をすることが可能です。
これには、リップル社が管理するUNL(Unique Node List)より、信頼できる企業などが選定されます。
承認を信頼性の高いValidatorに任せることで、改ざんなどのリスクに備えています。
他企業との繋がり
リップル社は、Googleより多額の出資を受けていることをはじめ、さまざまな機関と繋がりをもっています。
Googleはリップル社に対し2013年5月に行われたエンジェル投資で140万ドル、そして2016年9月に行われたシリーズBで5500万ドルと、出資を2度行なっています。
金融機関では、イングランド銀行との提携を発表した他、タイ銀行などの各国中央銀行やクレディ・スイスなどのグローバル金融とも話し合いが進められています。
日本でも、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行などが、リップル社と提携し、実用化へ向け実証実験を行なっています。
また、日本の金融機関であるSBIホールディングスはリップル社と提携しており、外国為替・内国為替を一元的に扱える決済プラットフォーム構築に尽力しています。
アジア圏でのリップルの普及に向け、SBI Ripple Asiaという法人も設立しています。
その他、アクセンチュア、デロイト・トウシュ・トーマツ、IBMなどがリップル社とパトナーシップを結んでいます。
<本記事ご協力>
ビットコインなどの仮想通貨をまとめたメディア『FinAlt』が提供
※本記事の意見や予測は、筆者の個人的な見解であり、金融商品の売買を推奨を行うものではありません。
投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。