Original 仮想通貨市場
今週の仮想通貨市場の時価総額は、7日1370億ドルまで上昇したのち、9日までは 1344億ドルから1387億ドルのレンジ内で推移していました。
しかし10日になると、ビットコイン始め主要アルトコインが急落し市況は一転。時価総額は11日までに1380億ドル台から1220億ドル台まで勢いよく下押しました(第1図)。
【第1図:仮想通貨市場時価総額】
出所:coinmarketcapより作成
今週の注目ニュース
金融庁の仮想通貨ETFをめぐる報道に市場はなぜ反応しなかったのか
ブルームバーグは7日、情報源は匿名の関係者としながらも、本邦金融庁が仮想通貨上場投資信託(ETF)を承認する可能性があると報道しました。
一方、9日のコインテレグラフ日本版の記事によると、金融庁は仮想通貨ETFの承認は現時点で検討していないと報道を否定したようです。
ETFは株や債券などの指数に連動した投資信託となっており、日本のみならず世界中の機関投資家が投資する金融商品で、仮想通貨に連動するETFはそんな機関投資家のマネーを市場に呼び込む材料になると考えられています。
米国では、2017年からビットコインETF上場申請が複数出されていますが、未だ米証券取引委員会(SEC)の承認を受けたものはありません。
2月27日には、VanEck社とSolidX社がシカゴオプション取引所への上場を申請している、現物拠出型ビットコインETFの承認判断が迫っています。SECで仮想通貨推進派のへスター・ピアース氏は、先月ワシントンD.C.で開かれたカンファレンスでビットコインETF承認には相応の時間がかかると発言しています。
今までは、こうしたビットコインETFを巡る報道には市場が敏感に反応しており、前述のピアース氏の発言の後には仮想通貨の相場が下落するといった現象が確認されてきました(逆に、判断期日が迫ると期待感から相場が上昇することもありました)。
しかし、今回のブルームバーグの報道に対しては、日本で初めての仮想通貨ETF上場の可能性が浮上したということにも関わらず、市場はほとんど反応を示しませんでした。
背景には2つの要因が考えられます。
1つ目は、近いうちに仮想通貨ETFが承認されることに対し市場が懐疑的になっている可能性があることです。今まで米国で複数のビットコインETFに対して否決や延期の判断が出されるなか、仮想通貨市場に厳格な規制を敷く日本において仮想通貨ETFが検討されているということは、あまり現実的ではないと市場では捉えられた可能性があります。
2つ目は、日本のETF市場の規模が米国と比較して小さいことです。
米国におけるETFの純資産残高は3兆7000億ドルであるのに対し、日本は3350億ドル程度となっており、しかもその75%(およそ2500億ドル)は日銀が保有していると言われています。
このことから、米国でのビットコインETF上場の方が、より多くのマネーが動くと注目されることが指摘されます。
イーサリアムクラシックに51%攻撃
イーサリアムクラシックチームは6日、ネットワークがチェーンリオーガニゼーション(再編成)が51%攻撃を受けた可能性があるとツイッターで発表しました。
There have been rumors of a possible chain reorganization or double spend attack.
— Ethereum Classic (@eth_classic) 2019年1月6日
From what we can tell the ETC network is operating normally.
BlockScout's "Reorg" section shows nothing of the sort.https://t.co/Yi2cXusCz9 pic.twitter.com/HdUtS0DJZK
2日後の8日には、米大手仮想通貨取引所のCoinbaseが、5日にチェーンリオーガニゼーションに伴うダブルスペンディングが起きていたことを探知したと発表しました。
On 1/5/2019, Coinbase detected a deep chain reorganization of the Ethereum Classic blockchain that included a double spend. In order to protect customer funds, we immediately paused movements of these funds on the ETC blockchain. Read more here: https://t.co/vCx89dz44m
— Coinbase (@coinbase) 2019年1月7日
今回の被害はCoinbaseのみならず複数の取引所にて起き、CCNによると被害総額はおよそ54,000ETC(20万ドル)だったようです。
今回被害にあった取引所のGate.ioは、イーサリアムクラシックチームに対し、現在のコンセンサスアルゴリズムPoWからPoSに移行することを助言しているようです。
仮想通貨市場突然の急落、背景に何が?
週明け7日から9日の仮想通貨市場の時価総額は、1350億ドル周辺を推移していました。しかし、10日午後3時ごろから急落に転じ、11日未明までに時価総額の15%ほど吐き出しました。
10日には、先月中旬から急騰し続けていたトロン(TRX)の相場が午後2時過ぎごろから急反落に転じました(第2図)。
TRXの対ドル相場は10日、一時0.0358ドルの高値(12月15日から182%高)を記録しましたが、終値は0.0263ドルで引けました。本日の相場は上昇に戻していますが、10日は一時的な利益確定の売りが優勢になったことが指摘されます。
BTCや主要なアルトコインでも、ここのところは突発的な急騰や堅調に短期的な上昇トレンドを維持していた銘柄が散見されていたため、TRXの利益確定売りが波及したことが指摘されます。
【第2図:TRX対ドルチャート・1時間足】
出所:Trading ViewのTRX/USDチャートより作成
サマリー
昨年11月のビットコインキャッシュのハッシュ戦争を巡る混乱が2018年末にはひと段落し、主要銘柄には回復の兆しを見る銘柄も散見されますが、より中長期的にチャートを見れば各銘柄とも依然下降トレンドから明確に脱していないことがわかります。
よって、年末年始の相場上昇は、中長期的下降トレンドの中の短期上昇トレンドであったと整理でき、この先は、各銘柄が短期上昇トレンドに復帰し中期上昇トレンドに突入できるかが注目となります。
テクニカル分析
ビットコイン(BTC)の対ドル相場は、6日に55日移動平均線をおよそ2ヶ月ぶりに上抜けしたものの、週明け7日から9日は同水準に沿って緩やかに下落し、10日には一気に4本の移動平均線を割り込みました(第3図)。
13日、21日移動平均線は本日11日に55日移動平均線を上抜けていますが、10日からは下向きに転じており、短期的な相場上昇の勢いが後退していることがわかります。
10日時点において、12月28日安値(3714.1ドル)を起点とするサポートライン(第3図内ピンク線)周辺で下げ止まり本日は同水準周辺で推移しています。
【第3図:BTC対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのBTC/USDチャートより作成
イーサリアム(ETH)の対ドル相場は、7日より下落に転じており、10日には一気に13日移動平均線と21日移動平均線を割り込みました(第4図)。
一方、10日には34日移動平均線が55日移動平均線の上抜けに成功しており、4本すべての移動平均線が昨年5月ぶりにゴールデンクロスとなっています。
【第4図:ETH対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのETH/USDチャートより作成
リップル(XRP)の対ドル相場は、今週9日まで0.375ドル周辺で鈍い値動きで推移して末、10日に急落。先月17日ぶりに4本の移動平均線全てを割り込みました(第5図)。
13日移動平均線は21日移動平均線を7日に割り込み、両移動平均線は下向きになっています。
移動平均線からの乖離率は、-6%となっており、この先は34日移動平均線(0.355ドル)まで戻せるか注目されます。
【第5図:XRP対ドルチャート(13、21、34、55日移動平均線&RSI)】
出所:Trading ViewのXRP/USDチャートより作成
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