2018年は日本でもトークンエコノミーを用いたサービスが増えてきました。そしてトークンを使った新規事業といえばICOを思い浮かべると思います。現に「ICOを目指してプロジェクト進行中」と目標を掲げている国内のプロジェクトもあります。
でもちょっと待ってください。コインチェック事件以降金融庁の規制は強まり、利用者保護または公益上問題のある仮想通貨は取り扱いを禁止されているはずです。それでもトークンを発行したりICOを実施したりしていいのでしょうか。
実際、規制が強化されてから国内でICO実施を検討するプロジェクトは激減しています。それだけハードルが高くなったことは確かです。
では、現在トークンエコノミーサービスやICO実施を計画している国内のプロジェクトはどのような建てつけで規制をクリアしているのでしょうか。具体的なケースを見ていきましょう。
ホワイトリスト入りした仮想通貨以外は国内取引所上場禁止
まず、国内の仮想通貨における大前提をおさえておきましょう。見出しの通り金融庁は「国内の仮想通貨取引所で上場して良いのはホワイトリスト入りした仮想通貨のみ」と定めています。金融庁が墨付きを与えている仮想通貨以外は国内の事業者では扱えないのです。
bitFlyerやZaif、DMMビットコイン、GMOコインなどの仮想通貨交換業者登録されている取引所で扱われている仮想通貨はホワイトリスト入りしたものだけです。
つまり、国内の取引所で新規に仮想通貨を上場させたい場合は金融庁の審査を経てホワイトリスト入りしなくてはいけません。
ではコインチェック事件以降、ホワイトリスト入りした仮想通貨はあるのでしょうか。残念なことに2018年1月にリスク(LSK)がbitFlyerに上場して以降、新たなホワイトリスト入りはありません。
実質的にコインチェック事件以降、ホワイトリスト入りの審査は停止状態だと推測されます。
国内プロジェクトの対応策
国内のプロジェクトはこの厳しい規制にどのように対応しているのでしょうか。すでに動き出しているプロジェクトの対応策を見ていきましょう。
【LINE】国内は『LINK Point』、国外は『LINK』
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LINEトークンエコノミー
国内の大手ITとしては先駆け的にトークンエコノミー構想をスタートさせたLINEの仮想通貨『LINK(リンク)』。dappsプラットフォームとして、コミュニケーションに対する報酬をユーザーに付与する『LINKエコシステム』の構築を目指しています。
LINKは国内と国外で戦略を分けています。日米を除くグローバルを対象に、LINEは仮想通貨取引所の『BITBOX(ビットボックス)』を運営しており、そこで10月16日よりLINKを上場させる予定です。
一方、国内ではLINKの代わりに『LINK Point』を発行します。LINK PointはLINEプラットフォームのみで利用できるポイントです。国内ではLINKはホワイトリスト入りしていないので、このような措置を取っています。
【A Cos!】【Cure WorldCosplay】ICO実施するが未上場の予定
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A Cos!
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Cure WorldCosplay
コスプレプラットフォームの『A Cos!(旧サービス名『AMPLE』)』と『Cure World Cosplay』は両サービスともICO実施を予定しています。
発行されたトークンを通じて、コスプレイヤー、ファンによるエコシステムを構築します。このトークンはA CosとCureそれぞれのプラットフォーム内でのみ利用できます。あくまでもトークンを販売する「購入型クラウドファンディング」という立ち位置と考えるとわかりやすいです。
規制のため国内取引所には上場しないはずなので、投機目的でトークンを購入して損失を出してしまうリスクは低減されています。
コスプレのように、資金が欲しいクリエイター(コスプレイヤー)と、トークンを消費して作品が見たいファンが一定数存在しているマーケットではこのような方法が効果的と判断したのでしょう。
ただ、コスプレはもはやグローバルな文化なので、LINEのLINKのように日本を除くグローバル向けの戦略を打ち出す可能性もあるでしょう。
【オタクコイン】エアドロップで初期のトークン流通を狙う
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オタクコイン
ゲームやアニメ、漫画といったいわゆるオタク文化のトークンエコノミー構想を打ち出している『オタクコイン』。オタクコインはICOを実施せず、エアドロップ(無償配布)で初期のトークンを流通させる戦略を打ち出しています。
トークンエコノミーを成功させるためにはトークンが十分に流通している必要があります。いくらトークンとプロダクトがあったとしても、トークンが活発に流通しなければプラットフォームとしての価値が出せないので、国内外問わずエアドロップは有効な手段となっています。
オタクコインも国内取引所では上場させないでしょうが、前述のプロジェクトと同じくグローバル展開は検討しているはずです。
ゲーム、アニメ、漫画といったジャンルは、これまで資金の潤沢な企業がリードしてきた分野でもあります。オタクコインはインディーズや個人で成功するのが難しかったマーケットに風穴を開ける挑戦と言えます。新しい挑戦の認知を上げて協力者を増やすための戦略として、ICOではなくエアドロップという手段を選択したのかもしれません。
【SPOTSALE】円ペッグのコインセールによる調達
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SPOTSALE
イジゲンの運営する中小の店舗のためのオリジナルコイン取引所『SPOTSALE(スポットセール)』のトークンエコノミーはユニークです。
SPOTSALEでは中小店舗がオリジナルコインを発行して、ファンがオリジナルコインを消費してサービスや商品を購入することができます。
オリジナルコインを購入するためには、SPOTSALEの基軸コイン『SPT』を購入する必要がありますが、SPTは「1SPT=1円」で価格が固定されています。イーサリアムで購入するような一般的なICOとは異なる点です。仮想通貨リテラシーがなくても購入できますし、価格の変動が小さいこともメリットとなります。
特徴的なのは、SPOTSALEで流通するコインには6ヶ月の利用期限がついていることです。通常、有効期限が6ヶ月以上ある仮想通貨や電子マネーは資金決済法という規制の対象となっていて、多額の供託金を収めたり、サービス終了時にユーザーの資産を補填する義務が生じます。SPOTSALEは資金決済法の規制対象外となるため、このような対応をしています。規制の対応で長い開発期間をかけるよりも、まずはユースケースを量産したいというイジゲンの方針がうかがえる施策です。
まずは国内の成功事例を期待
金融庁の規制強化を悲観する声もあがっていますが、規制のもとで成功する国内のプロジェクトが出てくれば潮流も変わってくるでしょう。
規制強化以前にICOを済ませているCOMSAやALISといったプロジェクトは、派手な動きはないものの着実にプロダクトを磨いていますし、何より規制強化前に立ち上がったプロジェクトが成功する意味は大きいです。
国内の大手IT企業が参入してきたのも良い兆候です。先陣を切って構想を発表したLINEは、すでにポイントの流通や決済といった領域で十分な実績があります。規制のためプラットフォーム内でしか流通できないポイントだとしても、ユーザーにとっては価値のあるものになるでしょう。
一方で規制に苦しんでいるのはベンチャーです。ブロックチェーンという新しい領域にチャンスを見出して参入したとしても、ホワイトリスト入りは実質不可能で通貨を上場できません。大手のようにすでにユーザーに価値を提供できている訳でもないので、ベンチャーの強みである大胆な意思決定やアクションの早さが活かせません。
まだ規制は道半ばなので、今後どのように規制が整備されていくのか注目が集まります。
The post 金融庁規制でどう変わった?各社のトークンエコノミー戦略を解説 appeared first on Coin7 仮想通貨ニュースメディア.