中国人民銀行(PBOC)のデジタル通貨研究所の責任者を務める穆長春(ムー・チャンチュン)氏は、デジタル人民元発行の準備が進んでいることを明らかにした。発行が計画されているデジタル人民元は、ビットコインのような投機に利用される資産ではなく、ステーブルコインのような通貨バスケットも必要としないと語った。12月22日、各紙が報じている。
上海証券ニュースによると、20日に北京で開催された金融会議で長春氏は、デジタル人民元がビットコインのような投機的性質を持たないと発言した。長春氏は、「(デジタル)通貨は投機に使用されるものではない。デジタル人民元は消費に使用され、投機には使用されない。投機に使用され、価値をサポートする通貨バスケットを要すステーブルコインやビットコインとは特性が異なる」としている。
また、長春氏は中国人民銀行のデジタル通貨DCEP(デジタル・カレンシー・エレクトリック・ペイメント)の試験準備が整っていることも明らかにしている。既にトップレベルの設計、標準化、機能的なR&D、共同デバッグとテストが完了しており、実証実験を控えているという。その一方、具体的なスケジュールについては言及しなかった。
DECPの投機的性質を否定した長春氏の発言に対して、デジタル人民元をチャンスと見ていた中国投機家の中には「興味が薄れた」とのコメントが見られた。また、「デジタル通貨は人民元の別の形式の一つにすぎないが、実際のブロックチェーン技術を使用する仮想通貨は金や銀のように扱える」とする投資家もいたという。同様のコメントはソーシャルメディアのウェイボーでも確認されている。あるユーザーは「デジタル人民元で投機出来ないならば、外国為替など他の方法で投機する」と述べている。
中国政府はこれまで、ビットコインや仮想通貨の投機的側面を取り締まり続けてきたため、投資家にとっては長春氏の発言はそれほど驚くことではないだろう。習近平国家主席がブロックチェーンを国家戦略と明言する一方、中国政府はICO(イニシャル・コイン・オファリング)を含む仮想通貨の投機的慣行について明確に否定している。中国では銀行がビットコインなど仮想通貨を取引することは禁止されており、主要な仮想通貨取引所も人民元を直接サポート出来ていない状況だ。中国がどのようにブロックチェーンと向き合っていくかは仮想通貨にも大きな影響を与える。引き続き注目していきたい。
(記事提供元:HEDGE GUIDE)
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