この記事は著者の許可を得て、翻訳しています。翻訳元記事はこちらをご覧ください。
ブロックチェーンに造詣が深い方なら、リサーチ中にEigenLayrに出会ったことがあるのではないでしょうか。普段そこまでリサーチを行わない方はもしかしたらこの用語に初めて出会ったかもしれません。
いずれにせよ、本記事ではEigenLayrがどのようなものかを十分に理解することを目的としています。
追記:EigenLayrはEigenLayerと同じですが、この記事中では前者の表記を使用します。
この記事では、主に5つの側面について説明します。
- EigenLayrの技術的な側面
- EigenLayrが解決する問題
- 関係するさまざまな「アクター」
- 長所と短所
- EigenDA (Data Availability)
準備はいいですか?では、掘り下げていきましょう。
EigenLayrの技術的な側面
EigenLayrとは
EigenLayrとは、イーサリアムのブロックチェーン上に構築されたメカニズムで、他のプロトコル(ミドルウェア、サイドチェーン、ロールアップ、dApps、オラクル、ブリッジなど)がリステークによってイーサリアムのセキュリティに活用できるようにするものです。
あなたは、きっと混乱すると思います。
しかし、これからこれらの専門用語の意味を説明するので、その混乱した表情を拭い去ることができると思います。
この記事の内容を曖昧にしないために、ミドルウェア、サイドチェーン、ロールアップ、dApps、オラクル、ブリッジがどういうものかを説明する理解しやすい記事へのリンクをこの記事の下部に置いておきます。しかし、この記事に関しては、”プロトコル”、”他のプロトコル”、”これらのプロトコル “と呼ぶことにします。
さて、EigenLayrの話に戻ります。
EigenLayrはイーサリアムネットワーク上に構築されたメカニズム(一連のスマートコントラクト)で、他のプロトコルがリステーク(Restaking)でイーサリアムのセキュリティを利用できるようにするものです。
リサーチ中にEigenLayrを見たとき、最初に頭に浮かんだ疑問は、”HOW? (どうやって)”でした。もう一つの疑問は、“Why?(なぜ?)”です。
その両方について説明しますが、まず “WHY “から説明することをお許しください。
なぜ、EigenLayrはそうするのか?(WHY?)
通常、開発者はEthereum Virtual Machine (EVM)を使ってEthereumブロックチェーン上にプロトコル/アプリを無許可でデプロイしますが、これらのプロトコルは独自のトラストネットワーク(独自のセキュリティモデル)を構築する必要があります。
つまり、これらのプロトコルはEthereumのセキュリティを使用することができません。
新しいトラストネットワークを構築するには、次のような問題があります。
- 通常、コストがかかる。
- 多分、たくさんの時間がかかる。
- アップグレードが難しい。
Sreeram Kannanが率いるEigenLayrチームは、長年の研究の結果、これらの問題が発展を阻害している原因であることを発見し、EigenLayrという解決策を提案しました。
EigenLayrの解決策は、これらのプロトコルがリステークによってイーサリアムのセキュリティを利用できるようにするという内容です。
つまり、これらのプロトコルは独自の新しいトラストネットワークを構築する必要がなく、イーサリアムが彼らのトラストネットワークとなることを意味します。
整理すると、Sreeramと彼のチームが問題(新しいトラストネットワークの維持にかかる高いコスト)を発見し、解決策(プロトコルがトラストネットワークの構築にかかる高いコストを削減するためのメカニズム)を構築した、ということになります。
さて、次に説明するのは、“HOW(どうやって?)”です。
どうやって、EigenLayrはそうするのか?(HOW?)
EigenLayrはどうやって、他のプロトコルがEthereumのセキュリティを活用できるようにするのでしょうか?
もちろん、私たちはそれがリステーキングによるものだと知っていますが、実際に、EigenLayrはどのようにしてリステーキングを使ってこれを行うのでしょうか?
これより先は難しい内容なので、心して読んでください。
EigenLayrが解決する問題
EigenLayrはバリデーターにETHのリステーキングを義務付けてはいません。
イーサリアムからのパーミッションを必要とせずに、彼らが望む場合にのみバリデータは、EigenLayrのリステーキングモデルにオプトインするかどうかを決定することができます。
また、オプトインしてサービスを提供する特定のプロトコルを決定するのはバリデータです。
つまり、バリデータはステークしたETHを検証するプロトコルを選択できるのです。
バリデータは、EigenLayrのスマートコントラクトに引き出しアドレスを設定することで、自動的にEigenLayrにステークされたETHのスラッシング実施権を与えることができます。
より広い意味では、バリデータとして、もしあなたがEigenLayrのリステークモデルにオプトインすると決めたら、あなたのバリデータの引き出しクレデンシャル(あなたのステークしたETHを扱える人の権利)をEigenLayrのスマートコントラクトに設定する必要があるのです。
これにより、自動的にEigenLayrはあなたのステークに対してスラッシング実施権を与えることになります。
スラッシング(Slashing)の意味は、以下の通りです。
- スラッシングとは、アセット(この場合はETH)をステークしているバリデータが、ブロックチェーンのルールを破る悪質な行為を行った場合に与えられる罰のこと。
スラッシングは、彼らがステークした資産の何割かを失うことを意味します。
こうしたスラッシングを受ける悪質な行動には、二重署名、長期間のオフラインなどが含まれますが、これらに限定されません。そのため、ステークを決める前に、ブロックチェーンのスラッシング条件を読むことが非常に重要です。
また、EigenLayrにオプトインする場合、2つの重要な事柄があります。
- EigenLayrにオプトインするバリデータは、ETHをステークすることでイーサリアムネットワークから得られる報酬の他に、サービスを提供することで他のプロトコルからも報酬を得られるため、さらなる報酬を得ることができます。
- EigenLayrを選択したバリデータは、Ethereumネットワークからのスラッシング条件の他に、EigenLayr独自のスラッシング条件を持ち、他のプロトコルの有害な行動とは別に規制するため、より多くのスラッシングリスクに曝されることになります。
EigenLayrとプロトコルは、自分たちの側からスラッシングにつながる可能性のある行動について合意する必要があります。これらのスラッシング条件は、イーサリアム自身のものと結びついているわけではなく、別個のものです。
つまり、バリデーターであるあなたがEigenLayrにオプトインすることを決め、それらのプロトコルとイーサリアムのブロックチェーンのルールと対照的なルール違反や悪意のある行動を取った場合、イーサリアムとEigenLayrの両方からスラッシングを受けることになります。これは、あなたがステークしたすべてのETHの全部または一部を失うことにつながる可能性があります。
複雑ですよね。。。
まぁ、イーサリアムやEigenLayrのルールを破るようなことをしなければ、ステーク期間が終了したときに追加報酬でETHを引き出すことができるので、安全です。
追加報酬を得る=追加リスクを負うということです。
以下は、このモデルを図式的に説明したものです。
関係するさまざまな「アクター」
上記の図を4つの役割に分けて解説していきます。(下記番号が上の図に該当しています。)
- Ethereum:これはEigenLayrが構築されているネットワークです。そのネイティブトークンは、ステイクとリステイクされています。これは基本的に、EigenLayrが意図していない他のことを行うために適応しているトラストされたネットワークです。これを “THE INNOCENT ACTOR” と呼ぶことにしましょう。
- EigenLayr: これは他のプロトコルにセキュリティを与えて「救おう」とする仲介役です。これを “THE SAVIOUR “と呼ぶことにしましょう。
- 追加プロトコル:イーサリアムのセキュリティに依存し、またステークしたETHを使用している他のネットワークです。これらを “THE PARASITES “と呼ぶことにしましょう(まあ、公平を期すために、彼らはバリデーターに報酬を与えることでその役割を果たしているのですが)。
- バリデータ:報酬を得ることを目的にブロックチェーンをサポートする人たちです。彼らはまた、EigenLayrのリステーキングモデルを選択した場合、複数のスラッシング条件を抱えるため、2xスラッシングの危険にさらされる人たちです。彼らを “THE RISK TAKERS OR OPPORTUNISTS” と呼ぶことにしましょう。
さて、彼らを分類したところで、各アクターに関連するこのモデルの長所と短所を概説してみましょう。
長所と短所
EigenLayrのメカニズムの長所
- バリデーター側:同じステークされたETHで、バリデーターはイーサリアムネットワークから、オプトインしたプロトコルから報酬を得ることができます。これらのバリデーターは、追加報酬を得るために追加サービスを提供します。バリデータに与えられる報酬は、プロトコルのネイティブトークンであったり、取引手数料のパーセンテージであったりと、様々です。
- プロトコル側:この提案モデルは、関係するプロトコルのセキュリティコストを削減することができます。
- イーサリアムネットワーク側:ETHのステーカーがこれらのプロトコルから受け取る追加利回りは、ETHトークン自体の価値を高めます。また、EigenDAの登場により、Ethereumブロックチェーンが取引を処理する容量が増加することが予想されます。(EigenDAについては追って説明します)。
EigenLayrのメカニズムの短所
- バリデータ側:EigenLayrが課すスラッシング条件の拡張により、バリデータはステークしたETHがスラッシングされるリスクにさらされることになる。これに加えて、EigenLayrが知らない、デフォルトで継承しているプロトコルからスラッシングの脆弱性(スマートコントラクトのエラーなど)がある場合、正直なノード(バリデータ)はスラッシングされる可能性があります。しかし、EigenLayrはこのような問題を持たない新しいプロトコルを構築することで、これを回避することを目指しています。
- プロトコル側:EigenLayrのバリデータ数の増大は、攻撃のリスクになります。それは、プロトコルにサービスを提供するバリデータが増えれば増えるほど、攻撃される可能性が高くなるからです。このため、EigenLayrは、関係するプロトコルが料金を上げることで、オプトインするバリデータの数を減らす(レバレッジする)ことを提案しています。
EigenDA (Data Availability)
EigenLayrDAとその必要性
今年、EigenLayrはEigenDAと呼ばれるEthereum用の独自のData Availability(DA)レイヤーをローンチする予定です。
さて、皆さんの頭の中には、「Data Availability レイヤーとは一体何なのか」「なぜEigenDAにこだわる必要があるのか」という疑問があるのではないでしょうか?
心配しないでください、順を追って説明します。
通常、イーサリアムのブロックチェーン(および他のブロックチェーン全般)で発生する取引は、ブロックごとに処理されます。これらのブロックはチェーンを形成しているため、”ブロックチェーン “と呼ばれています。
それらの取引が実行され、検証(バリデート)され、ブロックチェーンに保存されるためには、ノードと呼ばれるネットワーク参加者が多数集まり、取引の正確さを検証しなければなりません。
あるノード(最初の参加者/ブロックプロバイダー)がイーサリアムのブロックチェーン上でブロックの取引を実行すると、他のすべての参加ノードがそれらの取引のデータを再実行し、検証しなければなりません。
これは、そのノード(そのブロックプロバイダー)がそのブロックのすべての取引を実行し、他の参加ノードがそれらの取引を検証したことを保証するものです。
ノードは、ブロックプロバイダーが仕事をしたことを信用する代わりに、これらのデータを検証して、何も欠けていないことを確認します。これは、これらのトランザクションに関するデータが他のノードに利用可能でアクセスできるようになったからこそ可能になったのです。
Data Availability(データ可用性)とは何ですか?
データ可用性とは、基本的にネットワークノードがブロックチェーンに保存されたデータにアクセスする能力のことです。
これらのデータは、取引の検証を確実に行い、悪意のある取引がブロックに入るのを防ぐために利用できるようになっています。
技術的には、これらのデータにアクセスするには、トランザクションを再実行および検証する前に、ノードがブロック全体をダウンロードする必要があります。これは、ブロックチェーンが取引を処理する能力を低下させるため、明らかに制限要因となります。
これに対する解決策として、データ可用性(DA)レイヤーがあります。
データ可用性(DA)レイヤーとは?
データ可用性レイヤーとは、取引データが確かに他のノードで確認できるようになったというコンセンサス/合意を提供するために構築された仕組み/システムです。
これは、EigenLayrがEigenDAで構築しているものについての説明です。ただし、EigenDAはコンセンサスがなくても稼働できます。
これは、DAS(Data Availability Sampling)方式によるものです。
DAS方式とは、データの可用性を保証するための暗号化方式です。これは、ノードがブロックの小さなランダムな部分を何度もサンプリングしてデータの可用性を確認するもので、ノードがブロック全体をダウンロードする必要はありません。
ノードはこれを同時に行うことで、動作を高速化し、ブロックチェーンによる取引の処理を高速化します。EigenLayrがEigenDAレイヤーに組み込んだのは、このDASの機能です。
EigenDASのアプローチは、Ethereumの容量を圧倒的に増やすことを目的としています。
要するに、EigenLayrがEigenDAで達成しようとしているのは、Ethereumを現在の80KB/sと比較してかなり高い容量である15MB/sにすることです。
本記事は以上となります。お疲れ様でした。
参考文献
EigenLayer: The Restaking Primitive
https://consensys.net/blog/cryptoeconomic-research/eigenlayer-a-restaking-primitive/
Sreeram Kannan’s presentations
https://www.eigenlayer.xyz/resources
What is Data Availability?
https://ethereum.org/en/developers/docs/data-availability/#:~:text=Data%20availability%20is%20the%20guarantee,transactions%20get%20processed%20in%20blocks.
What is Data Availability Layer?
https://www.alchemy.com/overviews/data-availability-layer
These are the earlier promised links to articles that explain what middlewares, sidechains, rollups, dApps, oracles and bridges are.
• Middlewares:
https://link.medium.com/pHsPRGkSswb
• An Introduction to Sidechains:
https://www.coindesk.com/learn/an-introduction-to-sidechains/
Sidechains:
https://ethereum.org/en/developers/docs/scaling/sidechains/
• What are blockchain rollups?
https://www.coindesk.com/learn/what-are-rollups-zk-rollups-and-optimistic-rollups-explained/
What are Ethereum rollups?
https://decrypt.co/resources/what-are-ethereum-rollups-scaling-solution-cut-transaction-costs
• What are DApps?
https://academy.binance.com/en/articles/what-are-decentralized-applications-dapps
Dapps:
https://www.investopedia.com/terms/d/decentralized-applications-dapps.asp
• Blockchain oracles explained:
https://academy.binance.com/en/articles/blockchain-oracles-explained
• Blockchain bridges:
https://link.medium.com/teJO60qTswb
What is a blockchain bridge?
https://academy.binance.com/en/articles/what-s-a-blockchain-bridge
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