この度はイーサリアム企業連合の日本代表を務める、株式会社クーガーの石黒一明氏にインタビューを行わせて頂きました。
イーサリアム企業連合とはどんな団体なのか、加入するメリットとは、他国のブロックチェーン事情など、様々なお話を伺いました。
―コイン東京
よろしくお願い致します。
イーサリアム企業連合(以下:EEA)という団体について、名前を知っている人は多いと思います。改めてEEAはどういった活動をしているのか教えて頂けますか。
―石黒さん
EEAの目標の一つは「ブロックチェーンのスタンダードをつくる」です。というのも、一般の人や会社は、ビジネスにどのブロックチェーンを使えば良いのか分からないですよね。私たちは「イーサリアム企業連合」という名前なので、イーサリアムの普及活動をしていると思われがちです。しかし私たちはイーサリアムだけでなく、Hyperledger FabricやR3 Cordaなど沢山のブロックチェーンを世の中に浸透させて、どのブロックチェーンを使っても孤立しない、つまり相互運用性を損なわないように、異なるブロックチェーン間の共通のプロトコルを作ろうという活動もしています。
また、EEAは「メンバー同士が議論をする場」も提供しています。EEAは年会費を取っているのですが、会費を払っていないメンバーに対しても、会議の場へプレゼンターとして参加する場合もあります。特に活発なのはFinancialとTelecommunicationの分野で、他にもLegalの分野や、つい最近ローンチした、将来的に企業がメインネット運用するにはどうしたら良いかを話し合う、Mainnetワーキンググループも大変注目されています。
―コイン東京
EEAに参加するためには何か審査などがあるのでしょうか。
―石黒さん
いえ、EEAはオープンな団体となっていますので、申込と年会費のみで自由に参加することができます。ただしEEAのGithubのリポジトリなどは、しっかりとしたコミットやマージのコンセンサスを取る為に現在はプライベードで運用しています。
―コイン東京
石黒さんが実際にEEAに参加してみて良かったと思えた点はどこでしょうか。
―石黒さん
コミュニケーションが英語であるという、日本人にとって大きな壁はあるのですが、EEA内部の各会議には著名なゲストスピーカーを呼んでいることが多く、クオリティの高いカンファレンスのようになっています。会議で使われたスライドを見ることは勿論のこと、会議が終わった後、その様子を収めた動画も見ることもできます。
メンバーであれば他のワーキンググループにも自由に参加も出来ますので、毎日新たな知見を得ることが可能です。
例えば受諾開発を行っているような会社さんであれば、一度も経験のないジャンルの開発依頼が来た際、それを専門としている人達の意見を得ることも可能です。
現に私もHyperledger Besuを先日リリースしたPegaSysというチームの人と連絡を取って、ビデオ会議等を通じて仕様を細かく伺った事があります。
日本から海外の企業・団体にメールを送ると返ってこないことが多いと思うのですが、EEAの内部ですと、お互いがメンバーということもあり比較的連絡が取りやすいです。この部分も大きなメリットではないかなと思います。
―コイン東京
海外企業との連絡が取りやすいというのはかなり大きな魅力ですね。ちなみにEEAの会費はどれぐらいなのでしょうか。
―石黒さん
人数によっての従量課金となっています。例えば20人程度のスタートアップであれば年間30万円ぐらいですね。大企業となると年間数百万円になることもあるそうなのですが、小規模なスタートアップであれば非常に有用な選択肢なのではないかなと感じています。
―コイン東京
EEAに参加することでスタートアップの信用性も上がりそうですよね。
ちなみにですが、石黒さんはどのような経緯でEEAの日本代表となったのでしょうか。
―石黒さん
イーサリアム財団の宮口さんにご紹介いただいたことがキッカケです。宮口さんは弊社が催しているBlockchain EXEというイベントに出演して頂いたことがありまして、「日本のアンバサダーを探している」と伺ったので立候補し、後は数名のEEAメンバーやConsenSysのメンバーから推薦してもらいました。
―コイン東京
Blockchain EXEがキッカケだったのですね。Blockchain EXEは今も定期的に行われていて、多数の著名スピーカーが登壇するイベントですね。
―石黒さん
はい。当時横行していた怪しいICOや投資スキームを避け、優良なお客さんを獲得するということを目的に開催しています。嬉しいことに、当時は毎回100人程度のお客さんがいらっしゃって盛況でした。今も定期的に行っています。
―コイン東京
ちなみにですが、石黒さんは世界中の様々なイベントで登壇されているかと思うのですが、その中で面白いと感じた国や地域はありますか。
―石黒さん
自分が見てきた中では「ベルリン」が一番良かったかなと思います。
ベルリンではハッカソンやカンファレンスが高頻度で開催されています。それは何故か考えていたのですが、EUはそれ自体がコンソーシアムブロックチェーンのようになっているからだと思いました。というのも、EUは様々な文化、言語、主張を持った人々が陸続きで繋がっていて、その中でコンセンサスを取っていかなければなりません。これは正にEEAの活動やその先にあるパブリックブロックチェーンと同じような在り方だと思います。
―コイン東京
なるほど、EUそのものがブロックチェーンの仕組みと似ているのですね。
―石黒さん
そうですね。
日本で開催されるミートアップやカンファレンスは、実はガバナンスに関する話題のウェイトがあまりありません。逆に海外ですと、時間を多くとってでもカバナンスの話をしっかりと行います。
多くの人種が一か所で暮らしているような場所では、特に一極集中に対する恐怖や不安というものを強く持っている印象がありますね。一人一人がガバナンスに携わるという気持ちが根強くあり、そういった意味でもブロックチェーンとの相性がいいのではないかと思います。
―コイン東京
ありがとうございます。
注目しているプロジェクトなどはございますか。
―石黒さん
個人的に注目しているのはUniswap(https://uniswap.io/)ですかね。私はシンプルな構造のアプリケーションが好きなのですが、Uniswapは驚くほど簡単にERC20トークンのスワップを行うことができます。他にはロンドンのMakotoさんという方が携わっているKickback(https://kickback.events/)というプラットフォームです。
Kickbackは、ミートアップなどに参加することを表明し、イーサリアムやDAIなどをステーク、行ったらお金は返ってきますが、行かなかったら参加者に配分されるというものです。前回のDEVCONでも使用されていましたね。
無料のミートアップですと、参加の表明はするけど実際に行くのは3割ぐらいということもありますよね。このプラットフォームを使えば、本当に参加したい人だけに絞ることができるので、個人的に面白い試みだと思っています。
去年ぐらいに日本でも試してみたのですが、まだコントラクト上にお金を預けるという経験が根付いていないのか、余り盛り上がりませんでしたが、海外ではポピュラーになりつつありますね。
―コイン東京
面白そうな試みですね。
クーガーはAI×ブロックチェーンにも取り組んでいると思うのですが、その話もよければ聞かせて下さい。
―石黒さん
現在、人の姿をした、会話のできる「AI」に取り組んでいます。人員が足りていない分野での「効率化」を目的としているのですが、それだけでなく、AIが一般層に浸透していくと、AI彼女やAI同士のバトルゲームなどエンターテイメント系にも進出していくと思います。一番賢いAIを見極めるクイズ大会とか、一度実用化されてしまえば転用の幅は非常に広いですね。
ブレードランナーという映画に出てきたレプリカントのように、人間なのか人造人間なのか区別がつかないというレベルのものを、ブロックチェーンを活用しつつ開発していきたいというのが今後のビジョンですね。
「Siriで十分」「アレクサでいい」と言われることがあるのですが、実は人の見た目をしていると、人間は話しやすいという研究結果が出ています。
手持ちのアレクサが壊れたら、新しいものに買い替えますよね?修理をしようと考える人はそこまでいないかと思います。これは見た目がただのスピーカーだからという点が大きく影響していると思います。
人の見た目をしていた場合「修理してほしい」となりやすいと思います。ソニーのアイボットをおじいちゃんが泣きながら修理に持って行ったというニュースがあったように、見た目が変わるだけで「ただの機械」から「その人の家族」になる可能性があります。
秘密…とまではいきませんが、話しにくいことまで話せるようになるかもしれません。そういう意味で実際の人のような見た目も重要になってくると思います。
―コイン東京
ありがとうございます。
それでは最後の質問になるのですが、人間と区別がつかないAIを作るという先ほどのお話を含めて、石黒さん個人やクーガー、EEAの今後のビジョンを改めて教えて頂けますでしょうか。
―石黒さん
思うのは「ビットコインが一番」「イーサリアムが一番」のような宗教論争的な話ではなく、まずはブロックチェーンを広め、一般層にも浸透させていき、ブロックチェーンが使われていて当たり前の世界にする事がまずは重要なのではないのかなということ。
また、AIの進歩に対して、支配されるのでは?淘汰されてしまうのでは?と言われている昨今ですが、だからこそブロックチェーンのような信頼を価値とともに担保できる技術が必要になってくると考えています。
誰しもが使っているインターネットも、使い方は知っているけどTCP/IPの仕組みまで知っている人はあまりいませんよね。ブロックチェーンもそれだけ当たり前の存在になってもらう必要があると考えています。5年10年先の話になるかもしれませんが、そうした世界の実現へと向けて頑張っていきたいと思います。
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