コインチェック社の仮想通貨流出事件。巨額流出にもかかわらず短時間で補填の発表が行われましたが、同社ユーザーの資金は拘束されたままとなっていたり、金融庁による業務改善命令が出され立ち入り検査が入るなど、収束していない状況です。
そんななか、安心・安全の仮想通貨交換業者としてセキュリティー、投資家サポートに評判の高いビットポイントジャパンの小田社長に、今回の事件に関することやセキュリティ状況などをお伺いしました。
株式会社ビットポイントジャパン 代表取締役社長 小田玄紀氏
撮影:菅原健太
聞き手:みんなの仮想通貨 児山 将
―コインチェック社のハッキングに関して、同じ交換業者としてどう感じていますか。
小田社長(以下、小田):フィンテック企業とも呼ばれる仮想通貨交換業者ですが、同社はテック(技術)の部分は強くてもフィン(金融)の部分に弱い点があったのでしょう。
金融システムのバックグラウンドのある方が少なかったことで、金融業界では常識であるセキュリティやシステムインフラ面が疎かになる、ネットベンチャー特有の管理体制の甘さが浮き彫りになってしまったといえます。
―具体的には、記者会見でも指摘されていたマルチシグ化をしていなかったり、全てのネム(NEM)をホットウォレットで管理していたという部分でしょうか。
小田:ホットウォレットは危険でコールドウォレットは安全というような考え方は少し違います。コールドウォレットで保管していたとしても、物理的に盗難され易い場所で保管していたり、場所が分かり易いような管理体制であればあまり意味がありません。
一方ホットウォレットでも、セキュリティレベルを上げる方法はあります。当社では、たとえ秘密鍵が漏洩したとしても第三者が秘密鍵を解読することが不可能な対策を講じています。マルチシグに関しても同様のことが言えますが、内部・外部対策を適切に行うことが重要です。
―その他、実施しているセキュリティ対策はどのようなものがありますでしょうか。
小田:まずはサーバーインフラですね。交換業者ではクラウドサーバを導入しているケースが多々ありますが、本来金融での導入は非常に厳しいですね。クラウドサーバーはコストが安く運用面でも便利ですが、セキュリティについてはこれからの部分がまだまだあります。
当社はオンプレミス環境を利用しており、金融での利用実績が多くあること、また、証券・FX会社のシステム開発経験者が指揮を執り管理を行っていることから、システムインフラ、セキュリティ面では仮想通貨交換業者ではトップレベルではないでしょうか。
そして、社内で組織、人、技術面での「情報セキュリティーポリシー」を策定し、管理部署を設けることで内部管理を行っております。また外部からの監視も入れることで、より強固な管理体制を敷いています。
―今回の事件で仮想通貨に対するイメージが低下してしまったと思いますが、業界全体としてできることはどのようなことだと思いますか。
小田:まずはマウントゴックスの時と同じようにネム(NEM)や仮想通貨の問題ではないですよね。前回同様、今回も交換業者の問題であったことから、この部分で誤解されないように発信することが大切です。
また、仮想通貨が注目される時は価格に焦点が当たり、投機的なものとして見られがちですが、送金や決済などの実生活における便利さにもっと注目されないといけないですね。
―店舗決済サービスをされていますが、いかがでしょうか。不安に思う利用者も多くいたのではないかと思います。
小田:実は全く逆の反応でした。問題ないことを前提とした確認はいただきましたが、不安の声はなかったですね。また、当社サービスへの乗り換えの検討も多くいただいております。
―利用者も以前とは違って理解されている方が多いようですね。仮想通貨が世の中に浸透している証拠でしょう。直ぐに補填を発表できるほどのコインチェックの収益力により2017年の仮想通貨業界の盛り上がりの様子が鮮明になりました。御社はいかがでしょうか。
小田:口座数の伸び率は前年同月比で20倍というところです。また、アクティブユーザー比率も証券・FX会社よりかなり高い数値となっています。
―20倍とは凄いですね!私もイーサリアム(ETH/JPY)の板注文できる交換業者が少ないので利用しています。重宝している点としてBITPointは仮想通貨の送金手数料が無料かつ他の交換業者よりも早いことに魅力を感じています。送金手数料無料ということは、マイナーに自社で負担しているということになるとおもうのですが、これはずっと継続されるのでしょうか。
小田:送金手数料無料は今のところ継続予定です。おっしゃる通り、当社でマイナーに送金手数料を負担しており、それは日々かなりの額に上ります。しかしながら、お客様数、取引高も順調に伸びており、十分にカバーできております。
セキュリティは終わりがないので、日々改善しておりますが、サービスも拡大しております。
昨年末に即時入金サービスも開始しており、「ジャパンネット銀行」と「イオン銀行」にて振込手数料無料で入金ができ対応銀行も増やしていく予定です。
また、取扱い通貨も増やしており、1/13にライトコイン(LTC)の取引をスタート。 2/18にリップル(XRP)の取扱いを予定しております。
引き続き仮想通貨が「使う・送る・投資する」手段としてより普及するように、サービスを強化して参ります。
―ありがとうございました。