電気代の上昇が始まっています。ただでさえエネルギー価格の上昇によって電気代の上昇が始まっていたところに起きたのが、ウクライナ戦争です。戦争など地政学リスクが高まると原油などエネルギー価格が上昇するのはよくあることですが、そもそもこの戦争があまりにも質の悪いものであることに加えてタイミングや戦争当事国など、歓迎できないことだらけです。
今後さらに進むと思われる電気代の高騰と、自宅マイニング派の人たちへの影響について考察します。
ウクライナ戦争が電気代高騰に拍車をかけるメカニズム
発電にはさまざまな方法がありますが、世界のシェアを見ると火力と原子力が今もなお主力です。水力資源に恵まれている国では水力発電のシェアが高いこともありますが(日本や中国など)、コストが安く安定的に電力を供給するためには火力と原子力が最適との答えを出している国が大半です。
火力発電の燃料に用いられるのが、石油、石炭、天然ガスです。いずれも天然資源でどこの国にもあるものではなく、日本はこれだけの人口や経済規模がありながらこれらをほとんど国産していません。そして原子力発電にはウラン燃料が必要になります。これも日本は国産をしておらず海外からの輸入に依存しています。
戦争がもたらした強烈なインパクト
2022年3月に起きたウクライナ戦争では、侵略行為をしたロシアと侵略されたウクライナが戦争当事国です。ロシアは世界有数のエネルギー輸出国で、日本も天然ガスをロシアから輸入しています。ヨーロッパ諸国はもっとロシアへの依存度が高く、ロシアからパイプラインで直接供給を受けている国もあります。
戦争が起きて原油や天然ガスの価格が高騰、そこに加えてエネルギー輸出国であるロシアが経済制裁によってエネルギーの大部分を輸出できなくなり世界のエネルギー調達システムが大きく揺らぎました。この思惑によって投資マネーがエネルギー関連の先物を買いあさる動きも見られ、これも価格高騰に拍車をかけています。そこに来て世界的に進んでいるインフレ圧力は、貨幣の価値を下げてしまうため相対的にエネルギー価格も上昇しやすくなります。
これらの状況を見ると、エネルギー価格が安くなる要因が見当たりません。むしろ上昇していく要因ばかりが目につきます。日本は火力発電への依存度が高いので、原油や天然ガスの価格高騰は、当然ながら電気代の高騰につながります。
今後電気代はどうなっていくのか?
今後の電気代は、もっと上昇していくと見るのが妥当です。再びコロナショックのように世界中の経済活動が止まってしまうようなことがあれば話は別ですが、むしろアフターコロナで消費が拡大している中ではエネルギー需要が増大するのは必至で、日本もその影響を受けるのは間違いないでしょう。
暗号資産のマイニングを自宅や自社などでやっている場合、マイニング機器を稼働させる電気代が毎月かかるので、それを考慮する必要があります。マイニング機器の購入に投資が必要なのは最初だけですが、その後は電気代がランニングコストとなります。
電気代が高騰するとマイニングはどうなる?
電気代の高騰によって最も懸念されるのは、マイニングビジネスの採算割れです。もとより日本は電気代のコストが高いのでマイニングにはあまり適していないとの指摘がありますが、それがさらに電気代高騰となるとマイニングをする旨味がなくなってしまいます。
マイニングのコストを今すぐ抑えたいのであれば、話は簡単です。稼働しているマイニング機器の電源を切るだけです。採掘は止まってしまいますが、電力消費もありません。採算割れをしてしまっていることが不満なのであれば、機器を止めてしまえば「出血」は今すぐ止めることができます。
ここで難しいのが、ビットコインなど時価の高い暗号資産のマイニングをしている場合です。電気代の高騰が起きてもビットコインも高騰すれば採算を取れる可能性があります。また、電気代の高騰によって競争相手がマイニングが手を引くような流れが起きればハッシュレートが低下し、採掘できる暗号資産の量が増えるかもしれません。
「採算が取れないから今すぐ撤退」と考えるのは早計で、あくまでも採掘をしている暗号資産の価格や、ハッシュレートとのにらめっこになるでしょう。あくまでもビジネスなので、内的要因と外的要因の両方をしっかり見極める必要があります。
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