価格のボラティリティ(変動幅)が大きいことから、乱高下する価格差による利益が大きく注目されがちな仮想通貨(暗号資産) です。しかし、本来仮想通貨には大きな役割があります。それは、これまでになかった決済手段の提供です。
投機的な資産と見なされてきたフシがあることから本来のメリットが注目されにくくなっていた仮想通貨ですが、実はしっかりとその役割を拡大させています。
今回から前編と後編にわたって、仮想通貨の将来性を感じることができる「活躍ぶり」を紹介したいと思います。
アンバンクトの人たちにとっては「日常の通貨」
私たち日本人にはあまりピンとこない話ですが、世界にはアンバンクトといって伝統的な銀行との取引ができない人が数えきれないほどいます。預け入れる資産がない、そもそも身近に銀行がない、銀行があっても機能していないといったように、その理由はさまざまです。私たちが日常的に利用しているような感覚で銀行を利用できない、アンバンクトの人数は数十億人にのぼります。
その中でも注目したいのが、軍事的な紛争地や危険地帯です。例えば、イスラム原理主義組織であるタリバンが政権を掌握しているアフガニスタンには、「アシール」というオンライン商取引システムがあります。このシステム上では、手作りの工芸品などの売買に使用されています。
しかし今ではこの「アシール」がタリバンに資金を送るためのプラットフォームとして機能しています。アフガニスタンはタリバンが政権を掌握する前からアンバンクトの人たちが無数にいるため、日本で行っているような経済活動は困難です。そのため貧困が広がり、国際的な支援を必要としています。
その支援を送るために最も手軽かつ低コストなのが、仮想通貨です。アンバンクトの人たちであっても仮想通貨の取引はできるという人は多いので、直接的な援助を送るのに仮想通貨が活躍しています。
エルサルバドルで法定通貨となったビットコイン
中米の小さな国、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にしたことをご存じの方も多いと思います。世界で初めての事例なので世界を驚かせました。
そして、このニュースが流れた時期はビットコインが史上最高値近辺で推移していたこともあって、「これからは仮想通貨」という機運も高まりました。
しかしこのエルサルバドルの決断には、単にビットコインへの期待だけがあったわけではありませんでした。どちらかというと、自国通貨への信頼があまりにもないので、それならビットコインのほうがマシと考えたようにも見えます。
法定通貨になったということは、ビットコインで税金を納めることができますし、国内での買い物に使うこともできます。あれだけ乱高下している通貨を買い物に使うとなると国内の混乱は想像に難くないですが、それでもビットコインのほうが安定していると考えたのでしょう。
ここでもやはり、脆弱な金融システムに仮想通貨が取って代わっている構図が見えます。エルサルバドル以外にも中南米やアフリカにはビットコインにも関心を寄せている国がたくさんあります。
考えてみると、自国通貨の大暴落とハイパーインフレによって紙幣が紙切れになったベネズエラやジンバブエのことを考えると、そんな通貨よりもビットコインのほうが人々の信頼も得られそうに思えてきます。
なぜ、アンバンクトと仮想通貨は相性がいいのか
ここで紹介した動きは、いずれも発展途上国での話です。日本をはじめとする主要先進国で同様の動きが起きたという話は聞きません。むしろ、先進国や主要国では仮想通貨を毛嫌いする傾向すらあります。
このような国々でビットコインなどの仮想通貨が法定通貨になったりと「活躍」しているのは、やはり従来型の金融システムにはないメリットがあるからです。後編ではそのことについて解説したいと思います。