中国がマイニングはおろか仮想通貨(暗号資産)の取り扱いを全面禁止したことを受けて、それまで世界的に高いシェアを保ってきた中国のマイニング業者はこぞって国外脱出をしました。
その行先として名前が挙がったのが、カザフスタンです。なぜマイニング業者がこぞってカザフスタンを目指したのかは後述するとして、あまりにもマイニングの需要が高まりすぎたことを受けて、ついに電力不足の問題が起きました。そこでカザフスタンではマイニングへの規制が強化されることとなり、業界に衝撃を与えています。
なぜカザフスタンがマイニング大国になったのか、今後のカザフスタンの情勢によってどんな影響が考えられるのかを考察します。
中国が仮想通貨を全面禁止にした理由
中国が仮想通貨を全面禁止を打ち出したことについては、ご存じの方も多いでしょう。中国では仮想通貨の発展が通貨・人民元への信頼を損ねたり資金の国外流出を招くとして、取り扱いを全面禁止にしました。それまでにもマイニングを禁止したり部分的な規制はしていましたが、仮想通貨を持つことも、流通させることも禁止というのは、かなり過激な規制です。それだけ中国共産党は仮想通貨を警戒しているということなのでしょう。
それまで中国は世界有数のマイニング大国でした。水力発電などの豊富な電力資源に恵まれた地域に大規模な発電所とデータセンターを作り、主にビットコインなど主要な仮想通貨のマイニングで莫大な利益を上げていました。
それが全面禁止になったのですから、さぁ大変です。そこで多くのマイニング業者が目をつけたのが、中央アジアのカザフスタンです。
中国のマイニング業者はカザフスタンに向かった
カザフスタンには、豊富な電力があります。カザフスタンは石炭が豊富に採掘される資源大国で、国内の電力はほとんどが国産の石炭火力によるものです。安価な資源から生み出される電力だけにコストが安く、大量の電力を消費するマイニング業者にとっては好都合です。
しかも、カザフスタンは中国の仮想通貨規制をチャンスと捉え、マイニング業者を誘致する政策をとりました。マイニング業者にとって有利な税制を整備し、国営電力会社から安定的かつ安価な電力を供給する態勢も用意したのです。
これだけ優遇されたら、中国からこぞってマイニング業者がカザフスタンを目指したのは当然のことです。かくしてカザフスタンは国の思惑どおり、マイニング大国となりました。しかし、話はそれだけでは終わりませんでした。
いきすぎたマイニングビジネスの隆盛が招いた結末
豊富な電力資源を武器にマイニング大国となったカザフスタンですが、もしかするとマイニング市場の大きさを甘く見ていたのかもしれません。主に中国から大量のマイニング業者がカザフスタンに移転し、そこで大規模なマイニング施設を乱立させました。さすがに膨大な資源量を誇るカザフスタンであっても、電力不足が表面化しました。
それを受けて、2023年4月から新たにマイニング施設を設置する際の規制が強化されることになりました。この規制が実施されると、新たなマイニング採掘事業はカザフスタン国内の業者のみとなります。国外の業者がカザフスタンの電力を使ってマイニングはできなくなるということです。
確かに「一般家庭18万軒分の電力を消費するマイニング施設が完成」といったニュースが流れるたびに、筆者は「そんなにどんどん電力を消費して大丈夫?」と思ったものです。資源は無限ではないのですから。
今回の規制は、その嫌な予感が的中した形となりました。莫大な投資をしてカザフスタンに移転したマイニング業者にとっては冷や水を浴びせられるような規制です。カザフスタン側もこんな事態になることを予想できなかったのか?と思ってしまいます。
いずれにしてもお粗末としか言いようがない今回のマイニング規制。これからもマイニングの電力消費が世界各地で問題になる構図はなかなか改善されそうにありません。
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