2023年2月に、仮想通貨(暗号資産)のマイニングに関連する詐欺まがいの事案が報道されました。
ファイルの保管スペースを提供することで報酬が得られるファイルコインに関連する投資を勧誘したものの、その業者が法律で義務付けられている登録をしていなかったモグリの業者だった、というものです。「またぞろ」の印象を拭えないこの事件ですが、なぜこのように幾度となく繰り返されるのでしょうか。
今回の事件の経緯を交えつつ、改めて注意喚起したいと思います。
「損はさせない」として数100万円を出させる
今回の事件は、沖縄で起きました。沖縄と仮想通貨、まして投資というと関連性が薄いように感じるかもしれませんが、沖縄は昔から投資詐欺などの話でしばしば俎上にあがる土地柄です。県内の所得水準が全国の中でも低いことから、投資に活路を見出す人が多くて騙されやすいのではないかとの指摘もあるほどです。
日本IPFSという業者が日本全国で14億円もの出資金を集め、それが金融商品取引法違反に当たるとして経営者や役員が逮捕されました。まだ被害届は出ていないので詐欺事件ではありませんが、出資者の中には刑事告訴を予定している人がいるそうなので、これが受理されると詐欺事件に発展するでしょう。
この事件の「舞台」になった仮想通貨は、ファイルコインです。DropboxやGoogle Driveのようにクラウド上に大切なファイルを保管したり共有するサービスが人気を集めていますが、ファイルコインはそれをブロックチェーンで実現している仕組みです。ファイルの保管スペースを提供することでファイルコインを報酬として得られるため、いわばファイルの保管スペースを活用したマイニングです。
このファイルコインに投資をすれば必ず儲かるとしてお金を集めていた業者が摘発されたのが、事の顛末です。
ファイルコイン自体は問題のない仮想通貨
こうした事件が起きると、「また仮想通貨か」と思う人が多いと思います。ただでさえ怪しげなものと見なしている人が多い中で、こうした詐欺まがいの事案が出てくると「やっぱり仮想通貨は怪しい」となるわけです。
しかし、名誉のために申し上げておくと、ここで投資話の対象となったファイルコイン自体は立派に運営されている暗号資産であり、今も保管スペースを提供するサービスとして機能しています。むしろ分散型ネットワークに大切なファイルを保管できるので、中央集権型のクラウドサービスよりも安心感は大きいと筆者は感じています。
そのスペースを提供している人がデータを読み取れないように高度に暗号化されていますし、分割してそれぞれのサーバーに保管されているので、第三者に盗み見される心配もありません。この仕組み自体は素晴らしいものだと思います。
今後も出てくる仮想通貨関連の儲け話にご用心
問題は、仮想通貨をネタに儲け話を持ち掛けてくる怪しい輩です。仮想通貨の名前を出すと今も「儲かりそうだ」と感じる人が多く、しかも先進性を感じさせる部分もあるので、騙される人が出てしまうのです。
「まだ誰も知らない話」と言われて、それが仮想通貨だともっともらしく聞こえるかもしれませんが、そんなにうまい話はありません。しかし仮想通貨でなくても、どんな投資話でも同じです。人にわざわざ儲け話を持ってくる人はいないことを改めて認識して、怪しげな話に騙されないようにしましょう。