仮想通貨(暗号資産)のマイニングでは大量の電力を消費することが、以前から問題視されています。このことについては当コラムでも何度か指摘しており、さまざまな影響についても述べてきているので、ここでは割愛します。
2023年現在、アメリカは世界最大のマイニング大国です。以前は中国が世界最大のシェアを誇っていましたが、中国が仮想通貨の取り扱いそのものを全面禁止にしたため、その中国に代わってアメリカが世界最大のマイニング大国となりました。
さて、そんなアメリカでマイナー(マイニングをしている人)が逃げ出したくなるような政治的措置が進行中です。その内容と、考えられる影響について考察します。
バイデン政権がマイニング電力に対する課税強化を提案
世界各国の政府が仮想通貨のことをよく思っていないことは、よく知られています。表向きは電力の大量消費や環境負荷などが挙げられていますが、本音はもう少し別のところにあります。
最も顕著な本音は、国による通貨発行権が脅かされる可能性があるからです。仮想通貨はデジタル通貨ですが、もしそうではなく個人が勝手に作った紙製の「お金」が流通し、日本円よりも広く用いられるようになったとしたら、日本政府はどう思うでしょうか。そんな紙切れになど価値を認めず、日本円を流通させようとすることでしょう。それ以前に日本円以外に通貨的価値があるものを排除するように動くことでしょう。
これが、各国政府の暗号資産に対する本音です。自国通貨が弱すぎてビットコインを法定通貨にするエルサルバドルのような国もありますが、これはかなりのレアケースです。かくして、大多数の国は何らかの理由をつけて仮想通貨を排除しようと圧力をかけることになります。2023年にアメリカのバイデン政権が課税強化を提案したのも、そんな考えが根底にあります。
マイニングの電気代に30%の重い税金
バイデン政権が2023年3月に打ち出した税制改正の提案では、マイニングで使用した電力に対して30%の重税をかけるとされています。まだ提案の段階なので、今後の国政選挙の行方や仮想通貨そのものの変遷によって変わる余地は大きいと思います。
ただ、もしこれが施行されたら、アメリカでマイニングビジネスを展開している企業や人は重税ゆえにアメリカから逃げ出すかもしれません。今やマイニングは立派なビジネスなので、潤沢な資金を活用して大規模なマイニング施設を設置し、そこで莫大な利益を上げているマイナーも少なくありません。しかし規模が大きくなればなるほど使用電力量も多くなるため、30%の税金が重くのしかかります。
オフグリッド電源でも課税対象
先ほどから解説しているこの課税強化提案には、本音と建前があります。建前としては環境負荷やエネルギー問題への手当として税金を徴収すると言っているわけですが、この課税対象にはオフグリッド電源も含まれています。
オフグリッド電源とは、電力会社からの供給を受けずに自給自足している電源のことです。太陽光発電で家庭の電力を100%まかなっている場合などが該当します。マイニング事業を行っている事業者のなかには、川の近くで水力発電をしながら、その電力でマイニングを行っているようなところもあります。電力会社の発電所ではエネルギーを消費しているかもしれませんが、オフグリッドの場合は再生可能エネルギーだけで自給自足が出来ているかもしれません。それなら環境負荷が少ないので課税を強化する理由がなくなってしまいます。
しかし、実際にはすべてのマイナーが対象になる見込みなので、本音が見え隠れしてしまいます。
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