2024年9月、ロシアではプーチン大統領が仮想通貨(暗号資産)のマイニングビジネスを許可する法案への署名をしました。仮想通貨については中国でマイニングどころか所持、取引すら禁止したことを考えるとロシアはその逆をいっていることになります。
世界的に仮想通貨が政府や通貨当局から白い目で見られがちな昨今、ロシアの動きにはある思惑が見え隠れします。それ以外にも仮想通貨暗号資産はマフィアのマネーロンダリングにも悪用される事例が後を絶たず、「黒いマネー」に成り下がってしまうのでしょうか。
ロシアの本音は、苦しい経済制裁逃れ
ロシアのプーチン大統領はマイニングビジネスの合法化法案に署名したことに先立ち、すでに仮想通貨を国際決済に使用することを許可する法案にも署名しています。
こうした流れから透けて見えるのは、欧米諸国による経済制裁のダメージです。SWIFTという国際決済システムから排除され、世界の基軸通貨であるドル決済の枠組みからも排除されました。ロシアは特に産業がなく、あるのはエネルギー資源の輸出くらいです。これが国の経済を支えてきたわけですが、ドル決済の枠組みから排除されたことにより、欧米など「まともな国」に輸出するのが困難になりました。その枠組みの外側にある国と例外的に貿易をして、それで食いつないでいるのが現状です。
そんな懐事情があるだけに、それならドル決済システムに依存しない国際決済システムを構築しようということで目を付けたのが暗号資産です。中国やインドなどとは今も貿易が続いていますが、ドル決済ができないために人民元やインドルピーによる支払いを受けている状態です。いずれもハードカレンシー(国際的に流通している通貨)ではないため使い勝手が悪く、ロシアはそれに代わる基軸通貨を求めていました。
それが仮想通貨であり、ビットコインというわけです。
ビットコインはマネーロンダリングに最適?
悪名高いロシアが基軸通貨にしようとしている仮想通貨、ビットコインにはもうひとつ、黒いイメージが付きまとっています。それは、犯罪組織によるマネーロンダリングです。
仮想通貨の大きな特徴に、匿名性があります。持ち主は英数字の羅列で管理され、そこからリアル世界の持ち主を割り出すのは簡単ではありません。過去の摘発事例を見ても、仮想通貨によるマネーロンダリングが摘発されたのは、犯罪取引で使用された仮想通貨を米ドルなどの現金に換金するところから「足」がついたケースがほとんどです。仮想通貨だけで完結する取引だと、摘発数はかなり少なく成るでしょう。
現在では取引所のシステムなどが匿名性を排除する流れになっていますが、それも100%ではありません。一部の新興国の取引所などでは依然として匿名性が確保されている事例もあります。
仮想通貨のメリットがこのように悪用されてしまうのは残念なことですが、それも仮想通貨の先進性でありメリットでもあります。米ドルなどの主要通貨と連動するステーブルコインは、実質的に米ドルとして使える仮想通貨です。これまでドル決済の枠組みになかなか入れなかった国や人が参入できるようになるのは良いことですが、どうしてもそれを悪用する勢力が出てきてしまうのは仕方ないのかもしれません。
だからといって仮想通貨の優位性が損なわれたわけではなく、仮想通貨が通貨としての地位を高めていくには、メリットを維持しつつマネーロンダリングなどの悪用をいかに排除するかにかかっていると思います。
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