Original article:【後編】ビットコインETFへの期待と課題

 

第3回目で連載最終回となる今回は、④ビットコインETF承認への課題を整理したうえでビットコイン価格の先行きについて解説します。

前編(①ETFの基礎知識、②ビットコインETFの基礎知識)と中編(③ビットコインETFの申請状況)に関しては以下のリンクをご覧ください。

第1回目「【前編】ビットコインETFへの期待と課題

第2回目「【中編】ビットコインETFへの期待と課題

ビットコインETF、上場判断の延期を巡り、下落基調に転じたビットコイン相場

ここ数か月市場の関心を一手に集めてきたビットコインETFを巡っては、(1) SECによるウィンクルボス兄弟のETF 「COIN」の2回目となる「否認」判断(7/26)、(2) VanEck SolidX のETF 「XBTC」に対する「延期」判断(8/7)、(3) Direxion、Proshares、GraniteSharesのETF上場申請「否認」(8/22)を受け、市場ではやや失望感が広がっています。

リスク回避姿勢を強めた投資家によるビットコイン売りによって、8/11には心理的節目となる6000ドルの大台を割り込む場面も見られました。

8/22には、ProsharesのETF上場判断への僅かな期待感から一時的な上昇が見られたものの、SECが予定よりも早く、Prosharesを含むビットコイン先物を裏付けとした9つのETF商品の上場を棄却したことから、再び相場は下落に転じ、足元は6500ドルを下回る水準で推移しています。

 

しかし、これら否認は大方の想定範囲内でもありました。最も有力視されている「XBTC」について承認の可能性が消えた訳ではないため、相場の下落は、短期的な承認目途がひとまず「遠のいた」ことに伴う「売り」であると考えられます。

決済手段としての実用性や利便性の向上が待たれる中、投機的な動きが主体とならざるを得ない環境であるため、今後もETFの判断タイミングの前後で、同様の動きに警戒する必要があるでしょう。

さて、「XBTC」について、承認の可能性が残されている理由には、「COIN」に対し賛成票を投じたピアース氏の存在が挙げられます。ピアース氏は、自身がビットコインを含む仮想通貨保有者で無いことを公言した上で、「イノベーション」の芽を摘むべきではないとの考えを示しています。また、ETFの承認に向けてSEC内で啓蒙を続けると発言しており、前向きな姿勢をにじませています。

④ビットコインETF承認への課題

ウィンクルボス兄弟のETF(「COIN」)1回目の否認理由

SECは、最終回答期限を迎えた2017年3月になってようやく「一度目」となる判断を下したものの、それは1934年証券取引所法第6条(b)(5)項の要件を満たしていないことを理由とする「上場否認」でした(8/22のDirexion、Proshares、GraniteShares に対する否認理由も同様です)。

SECが承認可否を判断する上で鍵となったのは、ETFや裏付資産が「価格操作」の影響を受けやすいか否かという点でした。これを既存のコモディティETFの規制に則り、適合要件として次の2点を挙げています。

⑴    ETFを上場する証券取引所(以下「CBOE」)は、裏付けとなるコモディティ又はデリバティブを取引する際に「大規模な市場」(Significant market)との間で「監視協定」(surveillance-sharing agreement/サーベイランス契約)を締結していること
⑵    当該「大規模な市場」が規制下にあること(以下の原文参照)。

SECが特に重要視するこの「監視協定」とは、相場の不正行為や価格操作に対処するため、取引所間で取引の「監視」と「調査」のもと情報を共有することを約束するものです。

これに対して、CBOE側の顧問弁護士であるKyle Murray氏は2016年11月25日付で提出した書簡(“Bats Letter”)で、CBOEはGeminiと監視協定を締結済みであることやブロックチェーンの透明性を掲げ反論しました。

また、既存のビットコイン取引市場の流動性の低さや、価格操作の可能性については認めつつも、コモディティ市場(例えばブレンド原油)においても多少の価格操作は観測されることを指摘しています。

加えて、ETFの設計上Geminiでの取引状況によって価格操作リスクは緩和できるとも主張しています。

しかし、同主張に対しSECは、世界的に見るとGeminiでのビットコイン取引の出来高は少なく、規制下におかれた国法証券取引所でもないため、Geminiとの「監視協定」は十分でないと指摘しました。

さらに、非中央集権であるビットコイン取引の大部分が規制管理下に無く、故にCBOEはこれまでの全ETP(ETFを含む包括的な呼称)で締結してきた「大規模な市場」との「監視協定」を、ビットコイン市場ではできないと指摘し、上場を否認しました。

COINに係るCBOEの請願書とSECの判断

2017年3月17日付のCBOEの請願書を受け、SECは再度上場審査を行ったものの、結果的にSECの結論は覆りませんでした。

請願書に置けるCBOEの論拠は、ビットコインの分散性や不正に掛かるコストの高さから、既存金融市場よりも価格操作を受けにくく、新しい市場固有のシステムが追加的な保護をもたらすという主張でした。

さらにCBOEは、1回目の判断ではCBOEが自主規制に基づく不正取引防止策を講じることを勘案していないと指摘しました。

しかしSECは、2017年3月10日までに寄せられた66件のコメントレターと7月13日までに受領した請願書に対する8件の意見書を集約し検証し直した結果、仮想通貨取引の大半が規制の及ばないオフショア(米国外)で行われていることから、詐欺や価格操作等の不正取引防止策が不十分で、投資家保護の観点に懸念が残るため、1934年証券取引所法第6条(b)(5)項の要件を満たしていないとして2018年7月26日付で同請願書を棄却しました。

もっとも、今回のSECの判断はビットコインやブロックチェーン全般がユーティリティ、イノベーション、投資としての価値を持つかどうかについて評価したのではないと言い添えられています。

ビットコインETFへの懸念表明

時系列に並べると、上記CBOEの請願書に対する判断を下す前に、ビットコイン先物の上場が承認され、これを受けたウィンクルボス兄弟のシンプルな現物拠出型ETFとは異なる「株価指数先物型」ETFの上場申請が活発化しました。

しかし、この動きに牽制をかけたのが、2018年1月にSECのInvestment Management部署のディレクターであるDalia Blass氏の公式な書簡でした。

Dalia氏は、革新的な仮想通貨関連のファンドについて、その発展を妨げることなく、柔軟にスポンサーとの議論を深めたいと前置きしつつも、個人投資家への商品提供以前に、投資家保護の問題を検証しなければならないと述べました。

また、1940年投資会社法(”The 1940 Act”)に焦点を置いた、現物保有型(ビットコイン等の仮想通貨や関連商品)のETFに関する懸念点として、大きく以下の5点を挙げました。

  • ・Valuation(公正な価格評価)
  • ・Liquidity(流動性の担保)
  • ・Custody(カストディ機能(財産の管理・保管を行う信託銀行等)の確保)
  • ・Arbitrage for ETFs(ETFのアービトラージ)
  • ・Potential Manipulation and Other Risks(価格操作等のリスク)

上記の点に対し満足の行く回答を得られるまでは、仮想通貨や関連商品に大量に投資するようなファンドの上場申請は適当でないことから、申請中のスポンサーに対し申請の取り下げを要求し統制をとりました。(Prosharesの申請するETFもこの時申請取り下げを余儀なくされたものの、先物を裏付けとするビットコインETFに関して、SECが審査を再開するとしたため、今回の判断に至っています。)

VanEck SolidX Bitcoin ETF(「XBTC」)が模索する”初”のETF上場

上記Dalia氏とのやり取り以降初となるETFの上場申請は、CBOEによる2018年6月26日付のVanEck SolidXのBitcoin ETF(「XBTC」)であったため、非常に注目されることとなりました。

もっとも、当該申請への判断が下される前に、前述の通りウィンクルボス兄弟のETFが二度目の否認を受けたことで、「XBTC」の承認に対しても市場の期待感が薄まったことは否めません。

しかし、XBTCとCOINとではその商品設計に違いがあり、COINへの判断理由がXBTCに必ずしも適用されるものではないことには留意が必要です。

XBTCの特徴として以下が挙げられます:

⑴    1取引所の価格指数ではなく、複数のOTC市場における取引価格を参照することで、価格操作リスクを軽減していること

⑵    機関投資家や富裕層のような比較的リスク許容度の高い投資家に限定していること

⑶    保険制度により裏付資産のハッキングリスクなどを保全していること

⑷    取引所を介して購入する場合には、米ドル建ての取引所であり、AML(アンチマネーロンダリング)とKYCの規制に準拠している取引所(※)を利用すること

これらの手当てによって、SECが重要視する「詐欺や価格操作等の不正防止策と投資家保護」の突破口を見いだしたい公算が大きいようです。

とは言え、SECが「COIN」に指摘した、「監視協定」の問題やOTC市場が流動性を吸収できるかどうかデータが不十分である点などには引き続き懸念も残ります。

しかし、コモディティETFにおいても同様の問題がないとは言い切れないともCBOEの返信で言及されています。

本質的に言えば、コモディティとは性質の異なる非中央集権型通貨の流通を後押しすることは、政府の支配の及ばない取引を助長するリスクもあるため、承認判断は慎重にならざるを得ません。

承認への道筋には様々な関係者への「根回し」も必要であると思われ、この点先に述べた、「COIN」に対し唯一賛成票を投じたピアース氏の存在が大きいと見られます。

ピアース氏は、「COIN」が1934年証券取引所法に準拠しているとの立場から、SECのウィンクルボス兄弟のETFの上場申請棄却に対して7月26日付で反対意見を公表しています。

※Bitstamp(Slovenia), GDAX(旧Coinbase,California), Gemini(NY), itBit(NY), Bitflyer(NY), Kraken(San Francisco)の7つ

 

▼続けて、ビットコインETFの状況を受けてビットコイン価格の先行きがどのようになるのかを解説します。

ビットコイン承認に係る課題やFATFやG20などが与えうる価格への影響についての考察は下記リンクからご覧になれます。

【後編】ビットコインETFへの期待と課題

 

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