「やっぱりザイフがやらかしたーー。」
国内の仮想通貨取引所関係がZaif(ザイフ)のハッキング事件について口を揃えて語った言葉だ。
仮想通貨取引所Zaifが推定67億円の巨額ハッキング被害にあったことについて、コインテレグラフ日本版は20日、国内外の仮想通貨取引所の関係者や仮想通貨アナリストに話しを聞いた。
参考:【速報】Zaifがハッキング被害でBTCなど67億円流出、フィスコが株式を過半数取得・50億円支援へ
『コミュ障』経営者がやらかした
ある国内の仮想通貨取引所幹部によると、「Zaifが買収されることは予想通りだった」。昨年以来金融庁が仮想通貨交換業社への規制を強める中、Zaifの朝山貴生社長は「取引所を経営するやる気をなくしていた」という。そもそも業界内では、朝山氏は「コミュ障」で経営者としての能力を疑問視する声が出ていたという。先見性はあるが「あの人に経営させてはいけない」という評価だったそうだ。
ただ、今回買収に向けて動き出したのが、ビッグネームではなく、フィスコであったことは驚きだったという。この幹部によると、年末年始の仮想通貨バブル前、楽天がZaifの買収に向けて動いていたが断念したという経緯を紹介。だから金融やIT業界のビッグネームが買収することを想定していたようだ。いずれにしても「このタイミングでのハッキングはない」と頭を抱える。
もともとスイスと大阪を往き来していたという朝山氏。落ち着いたらも「スイスにこもるのではないか」とこの幹部は予想している。
一方、事態を深刻に受け止める仮想通貨取引所の関係者もいる。
日本市場で活動する仮想通貨取引所の関係者は、「ビットフライヤーで新規口座の開設ができず、コインチェックが未だ取引再開できない中、さらにZaifでも仮想通貨取引ができなくなったのは、日本市場にとってかなりネガティブ」と指摘した上で、次のように語った。
「一般のユーザーは今回の事件を受け、仮想通貨市場に入ることにさらに恐怖心を持つだろう。同業の取引所としてはこれはチャンスでもあり、課題でもあると考えている。チャンスというのは、強固なセキュリティを確立できれば、競争で優位に立てるという意味であり、課題というのは日本のユーザーが仮想通貨に対して失った信用を取り戻すことができるかどうかだ」
仮想通貨相場の反応
仮想通貨相場の反応は限定的だ。ハッキングされたビットコイン(BTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)、モナコイン(MONA)価格は、過去24時間でモナコインが約8%下げているものの、ビットコインは約0.7%上昇し、ビットコインキャシュは2%の下落に留まっている。
マネックス仮想通貨研究所の所長である大槻奈那(おおつきなな)氏は、相場が落ち着いている理由について、17日にZaifがサーバー障害を発表した時点から価格が織り込まれていた可能性や、そもそもZaifが国際的にそこまで大きな取引所ではない点を指摘。執筆時点ではZaifは、取引高ベースで世界86位の取引所となっている。
また大槻氏は、最近のハッキング事件はその後に相場が戻る傾向があるので、逆張り投資家が若干動いた可能性もあるとみている。ビットコイン(BTC/JPY)価格は、テックビューロのハッキング発表後、一時100ドル以上マイナスになったがすぐに回復した。
さらに大槻氏は、ビットコインETF(上場投資信託)の存在もあるとみている。米国証券取引委員会(SEC)は9月30日までにCboe BZX取引所への上場を求めていたビットコインETFの可否判断を行う予定で、市場では機関投資家が参入するきっかけになるイベントとして注意を集めている。
海外のアナリストも落ち着いた反応を見せている。仮想通貨に詳しいeToroeのシニアアナリストであるマティ・グリーンスパン氏は、今回のハッキングの規模が、過去に起きたマウントゴックス(Mt.Gox)やコインチェックと比べて小規模であることから、相場への影響はわずかだと解説。ただ「日本企業はおそらくもっとサイバーセキュリティーに投資をしなければいけないことが明らかになった」と付け加えた。
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