日本銀行の黒田東彦総裁が、改めてデジタル通貨を発行する可能性を否定的する見解を示したことがわかった。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後に記者会見が行われた。
リブラの台頭でグローバルステーブルコインに対する声明が発表されたG20。声明文では「金融技術革新による潜在的な便益を認識しつつも、グローバル・ステーブルコイン及びその他のシステム上大きな影響を与えうる類似の取組が政策及び規制上の一連の深刻なリスクを生じさせることになるということに同意する」などと記載され、民間ベースのステーブルコインが懸念される問題として議題にあがった。
合わせて注目されたのが、中央銀行が発行するデジタル通貨発行の可能性だ。会見で、リブラのような暗号資産(仮想通貨)の発行を問われた黒田日銀総裁は、G20内で具体的に議論になってないとした上で、日銀主体の発行も具体的な検討はないと否定した。
一方、民間の国際決済・送金領域の効率化は国際決済銀行(BIS)を中心に検討していく意向を示したという。
BISは、今年10月にも中央銀行業務に影響する技術の主要トレンドについて検証するBISイノベーションハブセンターを設立。中央銀行デジタル通貨(CBDC)の分散型台帳技術インフラへの統合の検証も目的のひとつに挙げており、動向次第でG20でもデジタル通貨に前向きな動きが出るのではないかと注目されていた。
CBDC領域では、ノルウェーやスウェーデンの中銀が、既存の通貨と異なるデジタル通貨の発行を検討しているほか、カナダの中銀が「中央銀行マネー:次世代」と題されたプレゼン資料を公開、カナダ国内でCBDC発行の検討を行なっている。
日本銀行でCBDC発行が否定されたのは数回目。日銀雨宮副総裁は昨年5月、日本銀行のデジタル通貨発行には否定的な見解を示した上で、以下のように述べている。
「コスト対比で考えた時、デジタル通貨の下での決済システムの運営では、セキュリティ確保の為に莫大なコストが必要になるかもしれない。しかも、そのコストの原資は国民の税金になる可能性が高い。そこまでして、日本銀行発行のデジタル通貨は必要なのか。それを慎重に考えるべきであるが、今はまだその段階にない」
中央銀行がデジタル通貨を発行することで、銀行の内側(マネタリーベース)と外側(マネーストック)の関係性であるニ層構造を大きく変革させる可能性があるとして、現状の民間銀行が仲介する金融システムに混乱を招く可能性が指摘されている。
(記事提供:コインポスト)
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