金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)はこのほど,今年上半期(1-6月)にランサムウエア(身代金)として支払われた可能性のあるビットコイン(BTC)など仮想通貨(暗号資産)の総額が過去最高の52億ドル(約5,930億円)に上ると発表しました。これはFinCENが犯罪絡みと思われる仮想通貨ウォレットを調査した結果判明したものです。
177のウォレットを解析して過去最高の52億ドルに
FinCENが公表した「金融動向分析:2021年1月から6月の期間、銀行秘密法のデータにおけるランサムウエア動向」と題する報告書は、暗号資産(仮想通貨)とランサムウエア関連の金融犯罪との間の関係について深く洞察した結果が含まれています。その結果FinCENは、「外部に流出したビットコイン取引とランサムウエア支払いと間の潜在的に関連する約52億ドルを特定した」と述べています。
報告された取引でランサムウエア支払いに関係する最も一般的な仮想通貨はビットコインであり、モネロ(XMR)がそれに続いたとされています。FinCENはまた、177のウォレットアドレスで行われた識別可能な取引のブロックチェーン解析に基づいて、ランサムウエア支払いに関係した可能性のある約52億ドル相当の取引を特定したとしています。
不審な活動報告(SAR)が爆発的に増加
リポートによると、ランサムウエアに関連して金融機関から政府に送付された「不審な活動報告(SAR)」の数は、今年になって爆発的に増加していることが分かりました。リポートは「レビュー期間中に提出されたSARで報告されたランサムウエア関連取引の米ドル総額は、2011年以降のすべての年度のそれを上回っている」と報告しています。またこの傾向が続けば、2021年のランサムウエア関連SARは、過去10年合わせたものより多くなる見通しです。
今年Q1、FinCENが特定したランサムウエア関連の金融機関から報告されたSAR関連取引は458件、5億9000万ドルであり、前年の総額4億1600万ドルより42%も増加しています。リポートによると、ランサムウエア攻撃は製造業、エネルギー、教育、食糧供給チェーンなどさまざまな部門にわたります。
「ランサムウエアとサイバー攻撃は米経済に直接脅威」とイエレン財務長官
ジャネット・イエレン財務長官は最近、「ランサムウエアとサイバー攻撃は、米国全土の大小の企業を犠牲にし、米国経済の直接的な脅威となっている」とコメントしています。
犯罪者の手口はますます巧妙になり、自前のランサムウエアが増えてバリアント(変異したさまざまな手口)と呼ばれるほど。FinCENは今年Q3に68種のランサムウエアバリアントを特定しました。中でも著名なバリアントは、世界で最も活発なロシア系のハッカーであるRevilはじめConti、DarkSide、Avaddon、Phobosなどがあります。
参考
・Ransomware Trends in Bank Secrecy Act Data Between January 2021 and June 2021
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